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訳者さんに感謝

ほんの軽い気持ちだった。
本当に、そんなつもりなかった。

書棚の部屋の窓から外が見たいと猫様にせがまれて、窓を開けて網戸にして、窓枠に座る猫様の気が済むまで待ってた。
猫様の気が済んだら窓を閉めて、部屋から出る予定だった。

執筆もしたかったし、色々やることもあった。
だから、現在進行形で読んでる本はなかった。

書棚がいっぱいになってるから、その前に平積みになってる本の一番上が『アンネの日記』だったのよ。
最後に読んだの大分前だなあと思って手に取ったのが運の尽き。
結局最後まで読んだよね。
あとがき含めて598ページ。

「今ここまでにしとこう」と思っても、気付くと読んでるんだよ。
何かの力が働いていたとしか思えない。

『アンネの日記』はユダヤ人であるアンネフランクが、迫害を免れるために隠れ家生活を余儀なくされている二年ほどの間、架空の親友キティーに向けた手紙という形で書き残していた日記のこと。

十三歳から十五歳の間の心中を、すごいストレートに描写してるのね。
父母との関係、姉との関係、同居人との関係、自分の内心の葛藤。
アンネは独立心が強くて、大人たちの意見を素直に受け入れようとはしない。
一度自分で考えて、納得がいかなければ反発する。
大人しくて優等生な姉との対比に苦しむけれど、決して自分を曲げようとはしない。
反省はするけど後悔はしない、まっすぐな生き方を貫く感じ。

隠れ家で暮らしている都合上、登場人物は変えられず、選択肢は少ない。
そんな中で希望を忘れず、前向きな日記を残したかと思うと、不安で眠れない夜の心中を残していたりもする。

その正直さをつい追ってしまうのよね。
読んでると、キティーの気持ちになってくる。
親友として日記のこっちがわからアンネを応援したい気持ち。

アンネはもう亡くなってることは承知してる。
時代は第二次世界大戦中だからね。
私は生まれてもないんだけどさ。

でも、全然古びた感じはしないんだよね。
アンネの言っていることは今の時代にも通じることが多々あるし、隠れ家の人たちの長所や短所を持ち合わせた人、いるいるって感じ。

結果、読んでよかったんだけどね。
改めて感動したから。

以前は何も思わなかったんだけど、今回は訳者さんすごいなと思いながら読んだ。
だってアンネの日記、オランダ語、ドイツ語、英語が入り混じってるんだよ。
しかも日記だから、アンネには常識だけど、外から読む人は分からない単語があったりもする。
そこにはきちんと注釈つけてくれてて、ひっかかることなく読み切れた。

これ、本当ありがたいことだよね。

アンネが書いた原文のままだったら、私は読めなかったんだよ。
アンネの言葉を知ることは出来なかった。

だけど、色んな人が尽力した結果、私はこうして海外の、違う時代を生きる人のお話を読むことが出来る。
訳者さん、本当にありがとうございますって感じ。

私の大好きなムーミンだって、訳してもらえなかったら読めないんだもん。
日本語しか分からないからね私。
日本語すら怪しいときあるから。
お恥ずかしい話だけども。

今回私が読んだのは文春文庫の増補新訂版なので、訳者は深町眞理子さん。
心の底から感謝します。

色んな人の色んな努力に折に触れて感謝しないとね。

ということで今日は「珍しく謙虚な気持ちになったよ」なお話。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。

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