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文系主婦によるひとり自然観察【8月】

私は東京都在住の主婦で、植物や虫が好きです。専門知識はありませんが、散歩や子供との外遊びの中で身近な自然に触れて楽しんでいます。でも実は、近所の遊び場でも、少し足を伸ばして大きめの公園へ行っても、同じような生き物にしか出会えないのを寂しく思ってもいました。しかしある日、家族で狭山公園を訪れて衝撃を受けました。入った瞬間から、ここには色んな生き物がいるのだということがひしひしと伝わってきたのです。その上、いつもそれなりに賑わっていて電車の音も聞こえるので、一人で森や山に入るときのような不安感もありません。しばらく歩き回って私は思いました。『ここに通って自然観察をしたい。とりあえず一年は誰の手も借りず一人で。』

(第1回冒頭より)

昨年の10月から二ヶ月に一度レポートをしてきました。本来であれば6月にレポートを上げるべきところでしたが6月は雨と飼い猫の介護、7月は感染症の爆発的な流行、8月は子供の夏休み、と一人で自由に動ける日を見つけられないまま時間が過ぎてしまいました。誰に指図されているわけでもないのですが、このままではいけないと8月後半のある日、子供を連れて観察に行くことにしました。いつもより写真も少なく、「ひとり」ではないので趣旨とずれるところもありますが番外編のような感覚でご覧頂ければ幸いです。

狭山公園で自然観察 第5回 2022年8月

「虫取りに行こう」と夏休み中の娘を誘い、虫かごと虫取り網を持って電車に乗りました。前日までの天気予報では曇りだったのに窓の向こうは晴天で、色濃くなった木々の緑が真夏の光を反射していました。駅までの道で汗だくになった娘はタオルで顔を拭いています。車内はエアコンが効いていて、背中の汗を冷やしていきます。あまり暑くない日を選んだつもりだったのですが、思惑通りにはいかないようです。

公園は、街中より少し涼しい風が吹いている感じがしました。それでも、虫取りをする原っぱでは直射日光に容赦なく晒されます。時々日陰に避難して水分を摂りながら網を振ります。

のんびりとムラサキツメクサの蜜を吸うモンキチョウは捕まえるのが簡単です。虫取りに不慣れな娘もたくさん取っていました。カゴの中でバタバタ暴れるので花と草を入れてやると大人しくなりました。ほかにベニシジミ、ヤマトシジミ、セセリチョウの仲間、ツマグロヒョウモン、小さなバッタなどを捕まえました。

下ばかり見ていて気付かなかったのですが、ふと立ち止まって視線を上げるとトンボがたくさん飛んでいました。画像は、掴まれて怒りの形相のアキアカネ。まだオレンジ色の未成熟体でした。これから真っ赤に色づいていくんですね。

こちらは娘が取ったミンミンゼミ。ミントグリーンの模様がかっこいいですね。羽も透き通っていてとってもきれいです。目も大きくて可愛いし、飛ぶのが下手だったり落ちて暴れたりしなければ怖がられないのでは…と思ったりします。幼虫は動きがゆっくりでキュートですよね。

これはなんでしょう。お昼ごはんのおにぎりを食べようと座ったベンチにいたとても小さな虫です。虫かごの中のセミを眺めながら昼食をとったところまでは良かったのですがこの後事件が起きました。私が近くのトイレに行く間、娘はベンチで待っていると言うので、周りに人もそれなりにいるし、と、その通りにしてみました。(娘が外のトイレに行くときは一人では行かせません。)トイレから出てみると、数メートル先のベンチに座る娘の様子が変です。近づくにつれ、娘が泣き出しそうな顔で足を上げた変なポーズをしているのがわかりました。慌てて駆け寄ると娘のズボンにスズメバチが!それもじわじわとよじ登っているのです。全く飛び立つ気配がないので、私は虫取り網をそっと近づけてスズメバチを誘導し、大人しく乗ってきたところを木の幹に放しました。もしかしたら、ケガをして飛べなくなっていたのかもしれません。娘は「暴れたり払いのけたりしてはいけない」という教えを守っていたので刺されませんでしたが、肝が冷える出来事でした。年齢的にもだいぶしっかりしてきたとはいえ、慣れない場所でひとりにするのは良くないな、と反省しました。

娘が落ち着いてから、林の方へ向かいました。よく見かけるものの名前を知らなかった虫を見つけたので手にのせてみました。クロウリハムシというらしいです。つやつやボディにつぶらな瞳がかわいいですね。

最近よく見るようになって気になっていた大型の草、というか特徴的なその果実です。魚のような形でしゃらしゃらと連なっています。それをどう調べれば良いのかわからず途方に暮れていましたが、たまたま読んでいた本に「タケニグサ」という植物が登場して、画像検索してみたところこの草だとわかりました。嬉しい偶然です。

ヌスビトハギの小さな花がきれいだったのでマクロレンズで撮ってみました。名前の由来は、花の形から、足袋を履いた盗人の忍び足を連想したからだそうです。
※花ではなく、実の形から連想したようです!コメントでご指摘頂きました。訂正いたします。(2022.9.23)

今回一番の出会いはこれです。マルバウツギの枝に体長1センチほどの、セミを小さくしたような虫がたくさんついていました。初めて見る虫で、なんだか気になる存在感です。

羽が美しく透けています。木の汁を吸うのに夢中なのか、つついてもほとんど動きません。その不気味さも良い!と興奮してその場で調べるとスケバハゴロモという虫だとわかりました。カメムシ目に含まれるという意味ではセミの仲間だそうです。

同じ木に一匹だけ違う模様のハゴロモがいました。こちらはベッコウハゴロモというそうです。珍しい虫ではないのでしょうが、ビワハゴロモ(日本にはいない)に憧れているのでハゴロモというだけで嬉しくなってしまいます。

こちらは近所でもよく見かけるアオバハゴロモ。可愛くて大好きです。小さな虫たちにピントを合わせようと必死になっている間、興味のない娘はぼうっと池を見ていました。

一休みしたベンチの上の方になっていたカラスウリ。色づいたものはありませんでしたが模様がスイカのようで面白いですね。しぼんだものばかりでしたが、あの特徴的な白い花(縮れた糸のような)もたくさんありました。

林を離れて湖へ向かうため、途中で捕まえていたキボシカミキリを放します。カゴから出すとすぐに飛んで行ってしまったのでボケた写真しか撮れませんでした。カミキリムシってかっこいいですよね。キボシ・ルリボシ・ゴマダラを並べてみたいね、と娘と盛り上がりました。

様々な草がマンホールをそっと取り囲むように生えています。マンホールが埋もれてしまわないように定期的に刈られているのでしょうが、夏の間は特にいたちごっこでしょうね。植物の勢力にはいつも感心させられます。

「暑い・足が痛い・帰る」を連発する娘になんとか階段を上らせ、今日も美しい多摩湖と取水塔を眺めながら駅へ向かいます。秋になれば虫の種類も変わるし過ごしやすくなるはずです。帰りの電車で「涼しくなったらまた来ようね」と言うと、娘は元気に頷いていました。二人でも、一人でも、また来ます。お世話になりました。

前回のレポートはこちら↓


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