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文系主婦によるひとり自然観察【最終回】

私は東京都在住の主婦で、植物や虫が好きです。専門知識はありませんが、散歩や子供との外遊びの中で身近な自然に触れて楽しんでいます。でも実は、近所の遊び場でも、少し足を伸ばして大きめの公園へ行っても、同じような生き物にしか出会えないのを寂しく思ってもいました。しかしある日、家族で狭山公園を訪れて衝撃を受けました。入った瞬間から、ここには色んな生き物がいるのだということがひしひしと伝わってきたのです。その上、いつもそれなりに賑わっていて電車の音も聞こえるので、一人で森や山に入るときのような不安感もありません。しばらく歩き回って私は思いました。『ここに通って自然観察をしたい。とりあえず一年は誰の手も借りず一人で。』
(第1回冒頭より)

狭山公園で自然観察 第6回 2022年10月

2ヶ月に1回ほどのペースでレポートしてきて1年が経ちました。6月に足を運べなかったのが心残りですが「とりあえず一年」が過ぎたのでこのタイトルの記事は今回で最終回とします。自然観察は続けるのでまた別のタイトルで連載を始めるかも知れませんし、来年の梅雨時に狭山公園のレポートを掲載するかも知れません。その時はまたお付き合い下されば幸いです。

この日も電車は空いていました。透明な秋の光が窓から入ってきて、照らされた手の甲がじんわりと熱を感じます。派手な髪色の大学生が乗ってきて降りてゆき、杖をついたお年寄りがゆっくりとした動作で乗ってきて降りてゆきました。空は薄い青色で、木々は紅葉を始めています。ふと、この記事を書き始めて一年が経ったのだなと実感しました。思えば去年の今頃はずいぶん不安定な心持ちでした。社会情勢も人間関係も子供のことも自分自身のことも不安で、閉塞感を感じていました。そんな心を癒してくれたのが静かな電車と狭山公園の自然でした。

日差しはさんさん、木々がさわさわ、明るくて気持ちの良い場所です。ひとりで来ても不安にならない場所というのは、私にとってとても貴重です。

ススキ原っぱが金色の波を立てています。急に寒くなったからかバッタたちが見当たらず残念でした。

早速足にくっついてきたヌスビトハギの実。剝がすのは面倒ですが、なんだか枝豆のようで可愛いらしいです。

街灯のような形のなにか。花が散ったあとの花芯でしょうか。去年見つけた時はどうしてもピントが合わず撮ることができませんでした。でも今はマクロレンズを持っているのでピントが合います!

小さなキノコを見つけました。

その近くには大きなキノコも。キノコはよほど特徴的な種類でない限り、傘の裏などを見ないと同定できないので、私は今のところ諦めています。

シダの階段です。シダが好きなので、両側から歓迎されているような気分になります。

落ちていた枝にキノコが生えていました。固くなるタイプのキノコの幼菌でしょうか。まだ水気が感じられます。

ヤツデの大きな葉が照らされています。美しいですね。

今年も会えましたオオハナワラビ!胞子葉が立派です。

切り株を覆うモフモフした苔から伸びる朔。撮影が難しいです。

いい感じに穴があいた落ち葉を拾いました。下生えの緑とのコントラスト。

オニグルミの実が落ちていました。3つ、くっついています。

小さなクモの巣が虹色に光っていました。なんとかその光を写せないかと試行錯誤しましたが目で見るほどの鮮やかさは写せず、こんなものかと諦めて振り向いた途端ガサガサッと何かが動きました。藪の中に素早く隠れてゆくのはヘビでした。その腹の赤みに目を奪われじっと見ていましたが、調べてみると毒蛇のヤマカガシだとわかりました。そんなに強い毒の持ち主ではないようですが、驚きました。

ヤマカガシの消えた先に妙なものが生えていました。カニノツメです。いえ、そういう名前のキノコです。見たままですね。ツメに挟まれた黒い部分はハエの好む臭いにおいを放ちます。

本日初バッタ!擬木の上で休んでいました。

藪の中に赤くて少し透明感のあるつやつやした実を見つけました。つる性であることと葉の形から、ヒヨドリジョウゴかと思います。名前しか知らなったので出会えて嬉しいです。

これは…むかごですね?ヤマイモの茎にできる養分のかたまりらしいです。栄養豊富そうですね。いつか食べてみたいです。

もこもこしたホットケーキのようなキノコです。見た目に反して固いです。

きれいな花を見つけたのでマクロレンズで撮ってみました。モモイロタンポポに似ている気もしますが咲き方が違います。なんという名前の花なのでしょう。

(2022.12.13追記)コウヤボウキという花だそうです!コメントで教えて頂きました。

おなじみのカワラタケの隙間に白いトゲトゲが可愛らしいキノコを見つけました。ヌメリスギタケの幼菌でしょうか。触ってはみませんでしたがヌメっているらしいです。丸っこくて色みも可愛く、興奮しました。

カワラタケの模様はいつ見ても芸術的ですね。浮世絵のようできれいです。

湿り気のある場所にコケがびっしり生えていました。これはゼニゴケでしょうか。特徴的な器官は見当たりませんが枯れている部分がそうかな?

狭山公園の秋の花といったらこれですよね。ツリフネソウが美しく咲いていました。今年も会えてよかったです。

林の中の、多摩湖が見えるベンチでお昼にします。この日はコンビニのおにぎりと干し梅を食べました。

いつの間にか足が種だらけに…おそらくチヂミザサの果実です。いわゆるひっつき虫のように「かえし」でひっつくのではなく、ベタベタする粘液でひっついているのでタチが悪いです。細かいし指に刺さるし困りました。最終的にウェットティッシュでふき取りました。

食後は多摩湖を眺めながらのんびりと駅へ向かいます。途中で小さな木の花をみつけました。葉に対してあまりに小さくて控えめで愛らしいです。

立派なセイタカアワダチソウの鮮やかな黄色に見惚れていて、せっせと蜜を吸うセセリチョウに気付きませんでした。写真を撮ってからばっちり写っていることを知って笑ってしまいました。

道沿いの柵に絡みついたマルバルコウが丸い果実をたくさんつけていました。アサガオの果実にそっくりな形をしていると思ったら、ヒルガオの仲間なんですね。

マサキの木に鳥たちが集まっていました。熟した実を食べにきたのでしょうか。キジバトがきれいだったのでできるだけ近付いて撮ってみたら、ウィリアム・モリスのパターンのような雰囲気になりました。
(2022.12.12追記)マサキではなくモッコクぽいです!ヤブコウジとか、似ている実の木って色々あるんですね。

トンボともそろそろお別れですね。一年前、このレポートを始めた頃、自然観察や家庭菜園や保存食作りこそが私を活かすと思っていました。もちろん糧にはなっているのですが、今年の春頃から朗読や文学関係のイベントに出るようになりそこで出会った人たちと関わるうちに「文芸をもっと頑張りたい」という気持ちに変わってきました。落ち着くのはまだ早い、というか。物を作って人前に出て他者と関わって、その刺激でまた作って、というのが私の望む創作のサイクルです。去年に比べたら段違いに子供も自立してきました。一人の時間、自然と関わる時間も大切にしながら、動いていきたいです。ここまでお付き合い下さりありがとうございました。noteを見守って下さる方々のおかげでここまで元気になれたと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

また来ます。お世話になりました。


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