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噛ませ犬ごはん

私はバレー部に所属している。スタメンでポジションはライト。ここまで見るとそれなりにいい思いをしていそうな肩書だが、実の所そうではない。

現代バレーにおいてライトの重要性は高まっているとは言え、府大会3回戦止まりの女バレではライトの仕事はあまりない。
スパイクを打つことは殆どなく、レシーブとブロックがメインの仕事。たまにセッターの代わりにトスを上げるくらいしか見せ場のない器用貧乏のポジションだ。

スパイクを打つ機会があっても器用貧乏程度のスパイクでは上手く点を決められない。相手のブロックに阻まれるし、かわしても拾われる。

そんな不甲斐ないライトを助けるようにレフトがスパイクを決め続ける。
盛り上がるベンチと客席。レフトへのマークを強める相手チーム。会場の目はいつもエースに釘付けだ。
私はエースの引き立て役。噛ませ犬としてコートに立っている。

試合の帰りは決まって贔屓の定食屋に行くことにしている。飛び切り豪華な定食を食べて心を癒すために。
そんなことをしている内は噛ませ犬から脱却できないだろう。でも、わかっていてもやめられない。私はずっとこのままなのだろう。(478字)



田原にかさん主催の「毎週ショートショートnote」に参加させていただきました!

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