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さようなら、跳べるパンプス

ちょうど1年前、私はこの記事で、購入したばかりの跳べるパンプスへの愛を綴った。

私の幅広甲高な足にもフィットしてくれて、適度な高さのヒールもあって、ほどよく上品なデザインで、クッション性も抜群。まさに完璧なパンプス。私は数々の坂をこのパンプスとともに駆け上がってきた。
ただ、通常のパンプスでは考えられないほど走らされている上に、1年の半分くらいずっと履いていたせいで、かなりへたれてきていた。
騙し騙し履いていたものの、ふと気づけば無視できないほどヒールが削れてきて、ついに新調しようと先日オリエンタルトラフィックに向かった、その矢先。

(見当たらない…)

跳べるパンプス自体のコーナーはある。ただ、いくら探してもあの5.5cmの絶妙なヒールのパンプスがない。オンラインショップにはこないだまであった気がするのに。

もしや、と思いつつも、「ここに確かにあったはずなんです!」とタイムスリップしてきて自分の家が見つからない人くらい動揺しながら店員さんに聞くと、「すみません〜あれは販売終了して、もうお店に並んでなくて、オンラインにも多分ないですね…」と言われた。

販売終了…?

販売終了?!

がーん…がーん…がーん…。

頭で販売終了の4文字がぐるぐる回る。
ショックすぎる。すべてが遅かった。買うには遅すぎたし、ヒールを修理してもらうにはボロボロになりすぎてしまっていた。まだ履ける、まだ履けると彼女に甘えてしまっていた。

俺が悪かった。戻ってきてくれないか。念には念をと思い、自分でもオンラインショップを調べてみても、一縷の望みをかけてメルカリを見てみてもなかった。
戻ってきてくれないらしい。もう限界です、実家に帰らせていただきます。うわーーー!

推しは推せる時に推せ、という言葉を初めて実感するのが、まさか靴相手だとは思わなかった。

目的を見失い、店内を意味もなく徘徊する。あまりにしょげていたからか、店員さんは「他にも似たデザインはたくさんありますよ!」といいながら、いろんなヒールつきのパンプスを勧めてくれた。

でもダメだった。どれを履いても、あの理想のパンプスの履き心地がチラつく。幅が狭い、生地が硬い、デザインがシンプルすぎる…。悪いところばかり目についてしまう。長年付き合った恋人と別れた気分ってこんな感じなのかも。

それならいっそ、と、あのパンプスと同じ跳べるパンプスでビット付きで、ただしヒールが2.3cmしかないタイプを履いてみた。
ああ、これだ…。身長は盛れないけど、確かに履き心地はまったく同じ。面影を感じて涙ぐむ。死別した恋人の妹に会った時のように。だんだん例えが重くなってきた。

スニーカーを除いて、ヒールがある靴しか基本履きたくない私のポリシーには反する。それでも、彼女はもう二度と戻ってこないかもしれないと思うと、名残惜しくて買ってしまった。

そして2足で10,000円フェアが開催中だったので、ついでにサンダルを買った。サンダルは家に既に5足以上ある。10足近くあったのを断捨離してもなお、このセールのせいでサンダルはまた増殖していく。夏は有限なのに。

お店には申し訳ないが、私はこの2足セットセールの時しかオリエンタルトラフィックで買い物をしない。オリエンタルトラフィックのことは好きだけど、常に金欠なせいで、いずれほぼ半額になると思うと躊躇ってしまう。かなり定期的に開催されるし…。
しかし今回はこのセールを待っていたがために、すべてが間に合わなかった。愛する人を金のために失った。私は愚かだ…。

後悔〜Love is money?〜

購入する時に、担当してくれていた店員さんが「秋冬のアイテムなので、また復活するかもしれませんよ!」と励ましてくれた。私の足の形が気難しいせいでいちいち試着するばかりに、たくさん働かせてしまったのにこんなにも優しい。
ありがとう、オリエンタルトラフィック川崎店の店員さん。家からは遠いから多分もう行かないかもしれないけど、あなたのことは忘れません。

オリエンタルトラフィックは踵修理サービスの他に、下取り500円クーポンサービスもやっているので、踵が限界のそのパンプスを下取りしてもらって、新しく買ったパンプスで帰ることにした。

クーポンの有効期限は半年間。それまでに、あのパンプスが店舗に帰ってくるといいのだけれど。少しの未練を引きずると同時に、同じ履き心地なのに少し低い目線に新鮮な気持ちになりながら、お店を後にした。

さようなら、私の愛した跳べるパンプス。
よろしくね、新しい跳べるパンプス。

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