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コンプライアス違反はなぜ起きる?その理由を社会心理学から考える

こんにちは。弁護士・ビジネスコーチの波戸岡光太です。
 
今や当たり前のように耳にする「コンプライアンス」。企業のホームページでは、必ずと言ってよいほどコンプライアンスについて記載されたページを見ることができます。
 
コンプライアンスを遵守することは企業の存続を左右する大きなポイントのひとつです。なぜなら、コンプライアンス違反は顧客離れ、従業員離れ、経営悪化につながる恐れがあるからです。
 
その様な重要なことにも関わらず、コンプライアンス違反をしてしま原因を、今回は社会心理学の観点から解説してみます。

コンプライアンスとは

 コンプライアンスとは、狭義では企業が法律や条例等を守る法令遵守を指します。例えば、粉飾決済や脱税、談合などの会社ぐるみのものや、パワハラ・セクハラ、業務上横領、インサイダー取引など、従業員個人によるものがこれに当たります。
 
また、広義では法令以外の社会的な良識、規範、倫理を守ることを指します。例えば、最低限の安全基準を定めた建築基準法を守っていたとしても、周辺住民への配慮を欠いた建築を強行すれば、社会的非難を浴びることなどがこれに当たります。
 
このようなコンプライアンス違反は、不祥事として報道されれば企業の信用を著しく傷つけることになります。また、例え法令違反を犯していなくても、良識や倫理に違反する企業活動は社会的に許されなくなってきています
 
ですから、コンプライアンスを広義にとらえ、これを遵守していく必要があります。

 コンプライアンス違反が起こってしまう理由

コンプライアンスが重視されていることは、誰もが認識していることでしょう。にもかかわらず、社会単位あるいは従業員単位のコンプライアンス違反は後を絶ちません。なぜ、人はコンプライアンス違反を犯してしまうのでしょうか。その理由を社会的心理学の観点からアプローチしてみます。
 
社会心理学とは、個人が集団や社会からどのような影響を受けるのかを検討したり、集団や社会といった複数の人間の心理を研究したりする学問です。
 
社会心理学からコンプライアンス違反の原因を検証してみると、人間の面白い心理が見えてきます。

“身内に甘い”という「集団バイアス」

人は自分が所属する集団(内集団)には愛着を持ち、それ以外の集団(外集団)には敵対心をもつという傾向があります。そのような心理状態が間違った認識を生み出し、気づかぬうちにコンプライアンス違反を引き起こしてしまうのです。
 
内集団に愛着を持つあまり、「うちの会社は問題ないはず」とか「わかっていない部外者がとやかく言うな」と、物事を自分にとって都合の良いように考えてしまいます。これは会社に限ったことではなく、学校、クラス、地域、国など、さまざまなレベルで発生します。

“空気”が「同調圧力」を生み出す

よく「空気を読め」とか「発言してはいけない空気を感じた」ということがあります。空気そのものは良くも悪くもないし、何かを発しているわけでもないのですが、無味無臭の空気に何かを感じ取ることがあります。
 
例えば、上司がにらみを利かせていたり、優秀と言われている人が発言したりすると、なんとなく、逆らえない感じがしませんか?また、会議などで誰も何も発言しなかったりすると、意見があっても言いづらい、なんてこともありますよね。
 
その様な空気が同調圧力・集団圧力につながり、間違いを指摘したり、意見したりすることができず、大きな問題を生じることとなってしまうのです。

“赤信号みんなで渡れば怖くない”という「集団的浅慮」が起きる

人は個人だと正しい判断ができるのに、集団になると間違った判断をすることがあり、これがコンプライアンス違反につながることがあります。
 
「赤信号みんなで渡れば怖くない」。誰もが聞いたことがある言葉かと思います。この言葉に象徴されるのは「集団的浅慮」です。一人なら渡らない赤信号も、“みんな”なら渡ってしまうんですね。つまり、集団になったことで間違った判断をしてしまっているのです。
 
ある企業の不祥事をニュースを見て「なんであんな馬鹿なことをしたんだろう」とか「ひどい不正を働く会社だ」と言えることでも、自分が組織の中にいると「やむを得ない」という力が働いてしまうことがしばしばあります。

“追いつめられると何でもする”心理が働く

人は追いつめられるとなりふり構わず、何としてでもその窮地をしのごうとする行動に出がちです。この「何としてでも」がコンプライアンス違反につながります。噓をついても、人を傷つけても、周りに迷惑をかけても、法を犯しても…。これはもう、立派なコンプライアンス違反です。
 
しかし、そこまで追いつめられるまでにはいくつかの段階があり、途中で修正できるチャンスは何回もあると言われています。そのチャンスを見逃さず、適切に対処することが重要です。
 
具体的には、「状況が悪化しうるサイン」を見逃さずすぐに対応したり、「問題の発生が明らかになってきた」ときに更なるリスクを冒して取り返そうとしないなどです。
 
これらの徴候を見逃したり、対処方法を間違えたりすることで問題が深刻化してしまい、「解決のためなら何でもやる」と冷静さを失って倫理に反することをしてしまいがちです。

コンプライアンス問題は弁護士の視点を入れて解決を!

以上、コンプライアンス違反が起きてしまう原因を社会心理学の観点から紹介してきました。紹介したような点を心に停めていただき、コンプライアンス違反が起きないように気を付けていただけたらと思います。
 
万一、コンプライアンス問題が発生してしまった場合には、ぜひ、弁護士に相談することをおススメします。
 
コンプライアンス問題を解決する際、つい、自分たちの視点だけで物を見がちになってしまいますが、それでは最適な解決法を導き出すことができません。外部の視点を取り入れることで組織の異常性や改善点に気づかされることが多くあります。その点でも組織のコンプライアンス意識の定着に長けた専門知識を持つ第三者、つまり弁護士の視点を取り入れることが大切だと私は思います。

まとめ

コンプライアンス問題は明確な線引きがしづらかったり、行動を起こしたりすることが難しい問題でもあります。ここに紹介した原因以外にも、さまざまな要素が絡み合って、問題化することがあります。今一度、なぜ、コンプライアンスを遵守することが大切なのか、どのようなことがコンプライアンス違反に当たるのか、企業のトップの方はもちろん、社員にも十分に理解してもらえるように心がけていただきたいと思います。
 
そして、問題の芽は小さい段階で摘み取り、大事にならないよう適切に対処することが重要です。万一、問題が発生してしまった場合には、弁護士など第三者の視点を入れて解決を図りましょう。
 
私、波戸岡は企業へ向けたコンプライアンスセミナーを実施しています。企業のコンプライアンス問題に関して、実践的な知見を日々蓄積していますので、自社のコンプライアンス問題でお悩みの経営者様は、いつでもお気軽にご相談ください。

https://hatooka.jp/index.html

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