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顧客紹介手数料契約書は「紹介成立のタイミング」と「手数料の明確化」が重要

こんにちは。弁護士・ビジネスコーチの波戸岡光太です。
 
中小企業や個人事業主のひとつのビジネスとして、見込み客を探して紹介してくれたら紹介手数料を支払う、ということは多いのではないでしょうか。
 
今回は、顧客を紹介してもらった時の紹介手数料契約について、契約書のリーガルチェックポイントをお伝えします。リーガルチェックポイントをおさえて、トラブルを回避する契約書にしましょう。事例も紹介しているので、参考にしてみてください。  


チェックポイントは大きく2つ

「紹介してくれたら5%の紹介料をお支払いします」「わかりました」などと、曖昧なかたちでスタートすることが多い、顧客の紹介。
 
けれど、いざ紹介が発生して手数料を支払う段階になると、お互いの認識のずれが浮き彫りになり、もめてしまったり関係がぎくしゃくしてしまったりすることが多いのも事実です。
 
でうから、認識のずれが生じやすいポイントやリスクになりそうなポイントは、きちんと契約書で取り決めておく必要があります。トラブルを防ぐためのリーガルチェックポイントは大きく2つです。そのポイントを以下に整理しました。 

Point1 「紹介の成立」がいつなのか、明確になっているか

見込み客を連れてきた場合、以下の流れで進むことが多いのではないでしょうか。
 
1.相談や面談が行われる
2.契約が結ばれる
3.入金が行われる
4.契約が遂行される
 
順調に4の契約遂行までたどり着ければよいですが、時には途中段階で終わってしまうこともあります。ですから、これら1~4のどの段階で「紹介が成立」し紹介料が発生するのか、明確に契約書盛り込んでおく必要があります。
 
紹介料を受け取る側としては、早い段階で紹介成立としたいでしょうし、紹介料を支払う側としては、遅い段階で紹介成立としたいと思うでしょう。
また、めでたく契約が成立し、入金が完了しても、後日、契約解除になったり解約になったりすることもあります。そのような場合、紹介料の支払いに影響が及ぶのかも決めておく必要があるでしょう。 

Point2 紹介手数料は「何に対するパーセンテージ」なのか、明確になっているか

紹介手数料を固定金額ではなく、パーセンテージ制にするケースはよくあることですが、その際は何に対して何パーセントなのかを明確にする必要があります
 
売上代金や契約代金に対してなのか、そこから一定の経費を引いた利益金額に対してなのか、税込なのか税別なのかといった具合です。
口頭では、「もうけの何%にしましょう」とか「単価の何%にしますね」などとやりとりされることが多いですが、それらの算出式まではっきりさせておかないと、後にもめたり関係がぎくしゃくしたりする原因となります。
 
以上、2つの柱が、紹介手数料契約書でのリーガルチェックポイントです。紹介手数料契約を結ぶときは、ぜひ参考にしていただき、お互いの取り決めをクリアにしてください。

リーガルチェック、Before&After

前述したリーガルチェックポイントを踏まえて、実際にどこをチェックすればよいのか、何を明確にすればよいのか、ケーススタディで見ていきましょう。

Case1 手数料発生のタイミング

修正前:「乙の紹介顧客一人当たり5万円」
修正後:「乙が紹介し、契約締結に至った顧客一人当り5万円」
 
▶修正前の契約文言の問題点
何をもって「紹介」とするのか定義がなされていないので、紹介元は“両者をつないで面談を実施しただけでも紹介にあたる”と考えているかもしれません。それを“契約締結に至った顧客”と修正したことで、紹介の定義が明確になりました。これにより、「面談につながったのだから紹介にあたる」というような言い分を未然に防ぐことができます。
 
もちろん紹介の定義はそれぞれですので、面談が実施できたら1件3千円であったり、成約に向けての段階ごとに手数料額を設定したりすることも可能です。契約書を締結するタイミングで、お互いがいつの時点を「紹介」と考えているのか、擦り合せることが重要です。

CASE2 入金のタイミング

修正前:「売上金額の5%を紹介手数料として支払う」
修正後:「売上金額の入金が確認された後、売上金額の5%を紹介手数料として支払う」
 
▶修正前の契約文言の問題点
紹介手数料を支払う時期が、売上が計上された時点で到来すると読みとれるため、顧客からの入金がなくても、持ち出しで紹介手数料を払う必要が出てくる可能性があります。それでも構わないのでしたらよいですが、紹介顧客から支払われたお金から紹介手数料を工面しようと考えている場合は、修正後のような対応が必要です。

CASE3 紹介手数料の返金(減額)ルール

修正前:紹介手数料の返金(減額)についての記載がない
修正後:「顧客に返金を行った場合、返金額に応じた紹介手数料の減額を行う
 
▶修正前の契約文言の問題点
契約後、顧客から即時解約や返金を求められてしまった場合、紹介手数料の返金を求めても、紹介手数料の発生条件は満たしているので拒否される可能性があります。そのような場合に備えて、紹介手数料の減額(返金)規定を定めておくことも選択肢の一つとして検討しておくとよいでしょう。

紹介手数料契約にまつわるトラブル事例

最後に、紹介手数料にまつわるトラブル事例をご紹介します。

CASE1 手数料発生タイミングの取り決めがない

建設業者からのご相談です。建設業では業者間で案件を紹介し合うことが多く、紹介手数料契約書のリーガルチェック依頼やトラブルのご相談はよくいただきます。
 
建設業でトラブルになりやすいことのひとつとして、紹介手数料の「発生のタイミング」があります。
 
建設業関連のお仕事をされているAさんは、Bさんに顧客を紹介したのですが、想定していたタイミングで支払いがされなかったということで相談にいらっしゃいました。
 
AさんとBさんとの間には、はっきりとした紹介手数料の発生タイミングが定められていませんでした。そのため、Aさんは契約締結時に紹介手数料が発生すると考えており、一方のBさんは契約遂行時、つまり完工時に発生すると考えていたため、「認識のズレ」が起きてしまったのです。
 
紹介手数料契約の基本ですが、発生のタイミングは必ず明記しないと人間関係にまでヒビが入りかねません。

CASE2 紹介先からの新たな仕事についての取り決めがない

 HP制作においても、他業種の方が制作会社に紹介するというケースはよくありますが、こちらも紹介の線引きをはっきりしておかないとトラブルに発展することが多くあります。
 
相談があったケースでは、以前紹介された会社から別の仕事を依頼された際に、紹介してくれた会社から紹介手数料を支払うよう要求された、というものがあります。
 
制作会社Aは広告会社BからクライアントCを紹介され、HP制作を受注しました。Bに紹介手数料を支払い、HPも納品し、その時は無事に終了しました。
 
半年後、仕事を気に入ってくれたのでしょう、Cから新たにHP制作の話をいただきました。すると、この件をどこからか聞きつけたBから、「このクライアントの案件は全て紹介手数料を払え」という要求が来たというのです。
 
Aは2件目の仕事ということもありディスカウントをしていたため、紹介手数料を支払うと利益がかなり少なくなってしまうことや、そもそも2件目は自社の信頼によってもたらされたものなので紹介手数料を払うのはおかしいと考えていました。
 
訴訟にまで発展することはありませんでしたが、お互い話は平行線で、最終的には関係が断ち切れてしまいました。
 
このようなトラブルを防ぐためには、契約締結時に、2件目以降も手数料が発生するのか、発生するとしたら手数料の比率は変えるのかなどを検討しておくことが必要です。

まとめ

紹介手数料の金額は数万円~数十万円と少額なため、訴訟は起こしづらいものです。また、トラブルになった場合に話が進みにくく、解決しづらいことが多々あります。紹介手数料で揉めることのないように、事前にトラブルになりやすいポイントを押さえ、リスクは回避しておかないといけません。
 
後々のトラブルを予防するためにも、紹介手数料契約書リーガルチェックをお勧めしています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

https://hatooka.jp/index.html

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