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NAIST合格体験記2021(2022春学期第一回)

タイトルの通り,NAIST(情報科学区分)に無事合格することが出来たので学習方法やスケジュールについて書きます.自身の受験においても先人達の合格体験記が参考となったため,本記事も将来受験する方の助けになれば幸いです!

注記:今年同様にNAISTに合格した友人も受験記を書いています.参考になる内容なのでそちらもどうぞ!

追記:優先入寮権がもらえたので,そんなに悪い点数ではなかったみたいです.

https://note.com/yama1009/n/nd926f184572f

NAISTって?何が魅力?

まず,この記事に興味を持ってくださる方にとっては自明かと思いますが,奈良先端科学技術大学院大学(NAIST/先端大/奈良先/etc)について簡単にその魅力を書こうと思います.概ねオープンキャンパスやオンライン説明会で得られる情報ですので,参加済みの方は読み飛ばしてください.

情報分野における高い実力と教育

NAISTは大きく分けて3つの学術領域を専門とする大学院大学です.バイオ,物質,情報の各分野においてNAISTは高い評価を受けています.就職実績も良好です.

大学院大学という特性上,日本中から「最先端の研究をしたい」という志を持った学生が集まり,高い研究意欲を奮っています.NAISTでは情報系の基礎的内容から最先端技術まで様々な講義が開講されています.さらに,それらの講義は映像として記録され,NAISTの学生であればそのすべてを自由に閲覧することが可能です.

授業アーカイブ | 先端科学技術研究科

これらの講義が基本的に7週で構成されているという点も個人的には魅力的です.

充実した研究設備・予算

集中して研究に取り組むために,研究設備や予算,環境は重要です.NAISTでは日本最高レベルの環境が構築されています.NAISTとの比較候補として挙がるのは東大や京大といった最高学府です.連携研究機関も豊富であり,産総研,理研,脳科学研などといった研究所に所属することも可能です.

入試時における成績が上位4割程度であれば学内の格安寮で生活することもできます.

入試対策

情報科学区分では,学部時の成績50点,小論文と面接90点,数学30点,英語30点の合計200点が評価対象となります.学部時の成績についてはどうしようもないので,他の科目について自分の対策と指針を述べます.(強いていえば,学部時の成績はおそらくGPAではなくGPを参照されている.大学毎に講義の難易度が異なるためどういった換算がされているかは不明.)

小論文と面接

私は3月頃から着手しました.受験希望の研究室や研究テーマと関連したトップカンファレンスの論文を一通り読み込み,研究動向を把握するのに2週間程度かかりました.その中で自分が興味を持つ内容は何か,解決できそうな課題はあるかといったアイデア出しを行い,新規性があると主張可能な研究テーマを決定しました.

他の受験記では志望研究室の先輩に添削を依頼して小論文を煮詰める例が多いようですが,私はNAISTを受験する友人と議論を交わしながら書き上げていき,ほぼ完成した状態で教授に添削していただきました.論文の構成や長文の執筆に不慣れな方は積極的に先輩を利用したほうが書きやすいとは思います.私の小論文を見てみたい人はTwitterでDMなどください.

小論文を執筆するにあたって『数学文章作法』(結城浩著)を一読することをおすすめします.論理的な文章の展開方法について必要な情報を一通り学ぶことができる名著です.多分2時間ぐらいで読み切ることが出来ます.

小論文の詳細な執筆方法

勿論これが最適な方法であるとは言えませんが,自分が執筆に取り組んだ手順について述べます.私は学部の成績に自信が無かった(GPA2.44/4.00程度)ので,小論文については力を入れて取り組みました.成績が良ければもっとざっくりした内容でも合格できるとは思います.

1. 研究室インターンに参加する(春休みなど,申し込みは冬に始まる)
2. ざっくりとした研究分野を決める
3. 当該分野についてトップカンファレンスの論文を読む
4. 気になった論文についてはさらに引用文献を読み込む
5. 2週間程度インプット出来たらアイデア出しをする
6. 思いついたアイデアに先例がないか調べる
7. 先例がほぼ必ず見つかるので落ち込みつつ,頭を捻って新規性を考える
8. これまでに読んだ論文の構成を参考に小論文の骨子(盛り込みたい内容の箇条書き)を書く
9. 骨子を適切な情報構造(概要→背景→目的→手法→評価方法→課題)に並べ替えつつ見出しを決定する
10. OverleafやWordなどで見出しをもとにレイアウトを構成する
11. 詳細な内容を記述する
12. 研究をわかりやすく説明する適切な図(ベクターイラスト推奨)をFigmaやイラレなどで作成する
13. A4で2枚に収まるように内容を添削する,もしくはレイアウトを調整する
14. 出来たものを先輩や教授に見てもらい意見をもらう
15. 意見を取捨選択して反映する

まず,研究室インターンについては可能であれば参加しておくといいと思います.2週間程度かけて研究室の雰囲気を知ることができるため,先輩に頼み事などもしやすくなります.

小論文の内容については論文の要録を意識すると書きやすいかと思います.研究室紹介ページでは,小論文の書き方についてかなり掘り下げて示してくださっている先生もいらっしゃるので,何が評価されるか質問してみるのも良いと思います.通常の研究と同様に,具体性,論理性,新規性,汎用性,検証可能性などを意識することが大事です.

私の場合は,インプットやアイデア出し,骨子の作成にNotionを利用しました.様々な情報を高い一覧性,操作性でまとめることが出来るのでおすすめです.実際に使っていたNotionページを参考にリンクしておきます.

院試関連

執筆にはOverleafを用いました.環境構築が不要で,豊富なテンプレートを利用することが出来るので便利です.画像の挿入などもWordと比較して素直な挙動で素敵です.また,引用文献も利用しやすくなります.LaTeXに触れたことがなくても大体なんとかなると思います.参考までにOverleafのテンプレートをリンクしておきます.各々調整して利用してください.

Overleafテンプレ

作図にはFigmaを用いました.Adobe CCの契約をしているならIllustratorを利用したほうが良いと思います.高品質なベクター画像が思うままに作成出来るならPowerPointやその他の作図ソフトを利用してもいいとは思いますが,将来的に利用する機会があると思うのでベクター画像を作成できるようになると良いと思います.アルゴリズム系の内容であればUMLで書くのも良いと思います.

小論文の内容については,きちんとした参考文献を参照しつつ練り上げればそんなに悪いものは出来ないと思います.

面接対策

例年よく聞かれる質問が先達の合格体験記において見つかると思います.ハキハキと聞かれたことについて答えればいいだけなので,小論文をしっかり練っていれば大きく失敗することは無さそうです.基本的に志望研究室の先生が面接官を担当されているので,ここでもインターンが生きてくると思います.

自分の場合は次のような質問がありました.

- 小論文の内容について1分程度で説明してください
- なんでNAIST,該当研究室志望?
- 装置に関するいくつかの質問
- プログラミング経験は?
- 得意な言語は?
- どれぐらい書いたことある?
- 研究のどこに時間がかかる?
- その手法にはこういった問題が考えられるけどどう解決する?

大体想定していた質問だったので,落ち着いて答えることが出来たと思います.個人的な想定質問の一覧をリンクしておきます.(私の出身が機械工学科であるため,それに関連した質問をいくつか想定しています)

想定質問

数学

数学の問題は線形代数1問,解析学1問の計2問を10分で解答する形式です.問題の難易度は結構バラついているので,当たり外れはあります.私の場合は線形代数がLU分解に関する証明問題,解析学が三角関数における接線の方程式を求める問題となっていました.線形代数は完全に対策から漏れた問題だったため何も答えられず,解析学は2分ほどで解けました.面接官によってヒントの量などに差があるかもしれません.

全般において,GitHubにアップロードされている過去問が役に立ちました.

https://github.com/tubutubucorn/naist-exam

線形代数対策

線形代数の対策としては,以下を実施しました.

- マセマを一周程度
- 指定教科書(MIT ストラング)の読了
- ネット上の過去問演習を三周程度
- 友人と問題の出し合い
- その他参考書を2,3冊一周

おすすめの参考書は特にありませんが,最初は演習書から入り,概観を掴んでから細部を理解すると効率が良いかと思います.

NAISTの数学は問題ごとに難易度が大きく異なるので,これといった対策の要点はありませんが,二次形式やべき乗,ケイリーハミルトンの定理とその応用(べき乗計算),ジョルダン標準形,LU分解,線形空間,写像,核と像などなど線形代数で頻出のテーマを抑えておくことが重要だと思います.

線形代数のイメージが掴みづらい方は,「プログラミングのための線形代数」が図説も多くカバーしている内容も十分広いためおすすめです.

線形代数ってなんだっけ?って方は基礎的な演習書(なるべく薄いもの)を一周することをおすすめします.

解析学対策

解析学の対策としては,以下を実施しました.

- マセマ(基礎微分積分)を一周
- 指定教科書をざっくり読了(出題範囲の把握)
- ネット上の過去問演習を三周程度
- 友人と問題の出し合い
- ヨビノリなどで積分問題の対策
- ネット上の積分演習
- https://www.maebashi-it.ac.jp/~niikuni/DE/1000.pdf

過去問を見る限り,解析学は線形代数に比べて比較的簡単な問題が多いように感じました.高校レベルの微分積分演習が解ければ対策は十分かもしれません.

大学レベルの問題としては,微分方程式や極値問題(未定乗数法),ロピタルの定理あたりが出題されていますが,いずれも易問です.

英語

英語はTOEIC IP Onlineスコア(835点)を利用しました.正直TOEIC IPよりも簡単なので点数は出やすいと思います.試験時間も半分なので余裕があります.とはいえ今年は利用出来ましたが,来年は利用出来ない可能性が大きいのでTOEIC IPを定期的に受験した方が安全だと思います.私の場合,TOEIC公式試験のスコアとオンラインスコアには150点程開きがあります.(公式試験は適当に受けたという要因もあります)

金のフレーズをしっかり暗記して,普段からリスニングの練習をしていれば700点ぐらいにはなります.小論文対策として英語論文を読み込んでいればリーディングの時間が足りないということもないでしょう.Read meなどのChrome拡張を導入して英語論文を読み上げさせれば,ReadingとListeningの対策を両立させることが出来ます.Read meのリンクはこちらです.

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