艦これの栄光と迷走

艦隊これくしょん─艦これ─。いわゆる「オタク」という人々ならば一度は耳にしたことがあるゲームであろう。日本における艦船擬人化ゲームの土台を築いたとも言えるこのゲームは、今岐路に立っている。

艦これは2013年の4月に配信を開始し、2018年にFlash版からHTML5版へと移行、現在まで続いている。ブラウザゲームとしてはかなり息が長い方ではなかろうか。ここからは艦これの栄光期(配信開始〜2018年)と迷走期(二期開始〜現在)に分け、大まかな流れを説明する。

栄光期(配信開始と有明の女王誕生)

前述の通り、艦これは艦船擬人化ゲームの走りとして産声をあげた。(尤も、艦船擬人化ゲーム自体は鋼鉄少女が存在し、艦船擬人化自体もMCあくしずなどが存在している。)

当初、そこまでの人気を想定してはいなかったが、有名な声優陣を採用したことや、ゲームシステムの目新しさなどからプレイヤー数が増加、一大ブームを巻き起こした。このブームの中で誕生したのが「有明の女王」である。

「有明の女王」とは、2015年の秋イベントである、『突入!海上輸送作戦』の第3海域突破報酬として実装された、香取型練習巡洋艦の「鹿島」のことを指す。この言葉は当時の冬コミにおいて、鹿島の同人誌が大量に発行されたことにより、「鹿島を描いとけば売れる」とまで言われていた。また、ローソンとのコラボにおいて配布された「ローソン鹿島」は、各地で争奪戦となり話題を呼んだ。

この頃が艦これ最盛期であり、おそらく最も艦これの同人誌やイラストが描かれていた時期であろう。

以降は落ち着きを見せたものの、それでも十分人気を博していた。

迷走期(黒船襲来とリアイベ乱発)

ちょうど鹿島祭りとも言える異常な状況が治まりつつあった2016年10月、中国から艦船擬人化ゲームがやってきた。『戦艦少女R』である。

この頃、艦船擬人化ゲームといえば『艦これ』が主流であり、『戦艦少女R』に対しては「パクリゲー」「劣悪中華ゲー」と言った容赦ない批判が浴びせられた。そのため、艦これ一強を切り崩すとまでは行かず、現在でもコアなファンが続けていると言った様相を呈している。(かくいう自分もその一人である)

そして2017年9月、真の黒船とも言える艦船擬人化ゲーム、『アズールレーン』が中国からやってくる。当初、プレイヤーである「提督」達も上述の『戦艦少女R』のようなものだろう、と高を括っていた。しかし、蓋を開けてみると艦これとは異なり、シューティングゲームのようなゲームシステムを採用し、キャラクターもこれまでの中華ゲームとは一線を画した日本向けのものが多く、一部の提督はアズレンの「指揮官」を兼任、あるいは異動することとなった。

その頃艦これはというと、富士急ハイランドを使って「瑞雲祭り」なるものを行い、実寸大の瑞雲の模型の周りで「瑞雲音頭」を繰り広げるというなかなか奇怪なリアルイベントを行なっていた。また、ゲーム内においてはHTML5版への移行を控え、レイテ沖海戦を前編・後編に分けて実施し、2018年に完全移行、『艦これ第二期』がスタートした。

第二期への移行に伴い、全海域がリセットされ、UIのデザインの変更が可能になった。しかし、肝心のゲームシステムが特に改善されることはなかった(このゲームシステムこそがいいとする方々も多いが)。

ゲームが第二期へと移行してからというものの、艦これのリアイベの回数は増加の一途を辿っていった。それもかつての「観艦式」のようなものではなく、遊園地での瑞雲祭りやサーカス、ライブなどの一瞬「艦これと関係があるのか……?」と思うようなものばかりである。また、ゲストもかなり豪華ではあるものの、正直艦これをプレイしてくれているとは思えないような面々ばかりである。

艦これがそのようなイベントを開いている中で、アズレンはかつての中華ゲーのイメージを覆すが如く発展し、コミケにもいわゆる「アズレン島」が設けられ、公式の絵師が中国から来日して同人誌を頒布するなど盛り上がりを見せていた。

そして現在。艦これは衰退と発展の岐路に立たされている。

ゲーム内でのイベントは2019年度の秋イベが11/30から始まり、2020年度の冬イベが実質的に消滅するというかなり変則的な状況が続いている。また、前回の秋イベでは、大方の予想に反し大型艦(戦艦・正規空母等)が一人も実装されないという事態も発生し、私の周りの提督も疑問視している。

このままテコ入れをしなければ、間違いなく衰退していくであろう。リアイベに参加している提督だけが提督ではない。せめて日本海軍の大型艦最後の切り札として残してある「信濃」の実装や、建造イベントの実施など、目新しいものをリアイベだけでなくゲーム内にも取り入れてほしい。艦これがこのまま文字通り「沈んでいく」姿は見たくない。


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