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寅さんの新作を見て号泣した話【和樂web取材こぼれ話・その2】

国民的人気映画シリーズ22年ぶりとなる第50作目の新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』が、2019年12月27日から全国公開されています。既にご覧になった方も多いのではないでしょうか。

新作公開にちなみ、『男はつらいよ』が現代に伝えるメッセージとは?にわかファンが送る寅さん入門ガイド
を書いてみました。

取材の一環で新作を見たとき、亡き渥美清さん演じる寅さんがスクリーンに登場するたびに胸が熱くなりました。過去のシリーズ作品で登場した、寅さんのせりふ「困ったことがあったらな、風に向かって俺の名前を呼べ。おじさん、どっからでも飛んできてやるから」が出てきた時には涙腺崩壊。何がなんだか分からないまま、滂沱(ぼうだ)の涙。映画館を出る時には、恥ずかしいぐらい、ぐちょぐちょの顔になっておりました。

誤解を招かないように申し上げますが、映画は笑いあり涙ありの面白さ。コミカルなところもたっぷりあります。私自身、どうしてこんなに号泣したのか、今でもよく分かりません。

ただ思うに、この映画は失われたものを思い返させる一面があります。新作の軸となる寅さんの甥、満男を演じた吉岡秀隆の存在が多かったです。印象的だったのは、何かもの言いたげなまなざしです。眉間にしわがちょっと寄り気味で、失った何かを遠く見つめるような視線。普段は忘れている何かを、想起させられました。

私はちょうど、満男、イズミ世代。満男の老いた両親の姿は、自然と自分の親ともダブって見えたのかもしれません。

「追憶」とは甘美で、苦いもの。ただ、過去を懐かしむだけでは、意味がありません。寅さんの生きた時代と今は社会状況が違います。昔の通りにすれば済む話ではありません。

和樂webの記事でも書きましたが、「寅さんサミット」では、山田洋次監督が次のように語っていました。「新たなコミュニティーを作って、仲良く助け合って暮らす努力をなさってください」。「男はつらいよ」の新作が投げかけたメッセージに、何ができるのか。これからも考え続けていこうと思います。

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