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揺らめく光と影に眩惑される【2021/09/20】

【眩惑】目がくらみまどうこと(広辞苑より)。

久しぶりにこの言葉を使いたくなった。

KAAT神奈川芸術劇場の観劇の後、引き込まれるように館内で開催されていた現代美術展「志村信裕展 游動」へ。重い扉を開けて、会場に入る。真っ暗な部屋の向こうから、かそけき光が差し込んでいた。

最初に目に入ったのが、カーテンに木漏れ日を投影した作品。揺れ動く影を見ていると、わずかな警戒心と安心感を同時に感じた。

木漏れ日のライトが当たった本。志村信裕《光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)》。会場内はサイレントなのに、木々のざわめき、そよぐ風の音が聴こえてくるようだ。

水、光、月をテーマに、劇場として使われるスタジオの空間に合わせて作られた新作たち。

「地球」にも見えるガラス玉や、水中を漂うクラゲを投影した作品。見ているうちに不思議な感覚に陥った。鑑賞者が歩いてできる影や気配、佇まいにも、敏感になったような気がした。日常では閉じられている感覚が研ぎ澄まされたのだろうか?

再び、重い扉を開けて、外の世界へ出た。劇場を後にすると、9月の太陽が少し透明度を増した青空に照りつけていた。露出過多な世界に、クラっとした。

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