詩　『魔術師』 (タロットⅠ)

突如虚空に現れた 始まりの一点
無限の可能性の海から生まれた　ひとつの意志よ

いよいよお前はこの地上に降り立ち
その創造の一歩を踏み出した

お前はその片足を宇宙に残したまま
もう片方の足で　濃密な大地を踏みしめる

それゆえ　この宇宙にちらばる
万物のエッセンスを自在に操り、束ね　
この地上に　あらゆるものを生ぜしめるのだ

お前の心に描かれる世界は
すぐさま魔法のように　姿を現すだろう

ただ一つだけ　覚えておくがいい

お前はまるで神のように
愛、喜び、豊かさ、光を創造するだろうが

それと同時に　
怒り、憎しみ、飢え、闇をもまた　
創造できるのだということを

目に見えるものに　惑わされてはいけない

すでに創造されたものはもはや
枯渇した過去の遺物なのだから

お前が一つの世界を選ぶ時

それは同時に　選ばれぬ無数の世界を
生み出すこととなる

その意味において　
お前はもはや　自由ではなくなるだろう

さればこそ　賢明に選び
喜びとともに創造するがいい

不可視の次元に耳をすまし
持てる力を駆使して　望むものを作りだすのだ

お前にはすでに
望むものすべてを創造する力が備わっているのだから

そうして作り出した一つひとつのものが
色鮮やかに　お前の世界を躍動させてゆくだろう

さぁ、人生に飛び込め！
お前の周りにはつねに　刺激的な風が付き従うだろう

《 タロットシリーズ　Ⅰ 魔術師　 ー橋を架ける者ー 》