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謎のスーツ4人組、ご乱心。

先日、バーで知り合ったスーツ4人組との会話があまりにも酷くて、ふと思い返した時にちょっと笑えるのでここに残しておくことにした。

知り合ったと言っても、すでに名前も顔も覚えていない。ただただ下品で不快な話を繰り返すしょうもない人たちで、全員がスーツを着ていたことしか思い出せない。


ところで、自分は初対面の人との会話が好きだ。会話はキャッチボールである。求められたボールを投げ返して、それが相手のミットにスパーンと収まった時の快感はなかなかに昇天モノである。

つまり自分は、相手が求める"いいヤツ"にその日限りでなるのが好きらしい。あれ?私が女性だったら都合のいいオンナってやつになっちゃう?

書いていて若干変わってるかもと不安になってきたが、そういう人は大抵お酒を奢ってくれるので、それが目当てだということにしておこう。


さて話を戻そう。
私が一人でとあるバーに行った時の話である。入店すると、後ろ姿が全く同じ4人組が座っていた。

こんな感じではなかったのは確か。

とんでもない声量で会話をしている。だいぶお酒が回っているらしい。居酒屋じゃないんだから…とも思ったが、その発言をすることで一気に彼らにとっては"嫌なヤツ"になってしまうのでグッと堪える。

そのうち1人と目が合ったので、軽く会釈。「初めまして。ちょっとお邪魔しますね。」と声をかけると、とんでもない大声で「おう!」との返答。
ジャイアンかよ…と思ったが私は冷静に席に座り、まずは彼らを横目にバーテンダーとの会話をスタートした。

見た目もこんな感じの人でした。

数分後、札幌に行った話をしていたら、4人組がものすごい勢いで食い付いてきた。まるでコーラスグループかのように「すすきの行った?」とほぼ同時に聞いてきたのである。

「行きましたよ。」と回答すると、食い気味に「どうだった?」と連呼する4人組。怖いよ。

彼らにとって、すすきの=夜のお店、風俗店らしかった。

怒涛のように自身の経験談をそれぞれ語り始める4人組。そんな一気に風俗の話をされても聖徳太子じゃないから聞き取れないし、逆に聞き取れたらもっと嫌だわ。


ちなみに私はピンクなお店というのは生来行ったことがない。理由は特にないし、性欲がないわけでも潔癖というわけでもない。性に対して嫌悪感があり、軽蔑しているんだと誤解されることが多いのが不思議。そもそもそういった職業に対してだけでなく、どんな仕事に対しても順位づけや差別意識はない。

コックさん、俳優さん、商社マン、風俗嬢、教師、AV女優、政治家、バンドマン。全部ただの職業であり、まったく貴賎はない。(あ、でも今の政治家たちだけはちょっと嫌悪感あるかも)

結局やりたいことやるのが一番だし、やりたくないならやめればいい。やめられないのに努力して続けているのならそれはそれで美しい。


また飛んでしまった。再度そのサイテーな夜にワープ。

「風俗やキャバクラ*などには行ってませんし、そもそも生まれてこのかた行ったこともないんですよね。」そう言ったら、4人が4人ともほぼ同時に

こんな顔になりました。怖いよw

長い沈黙が訪れる。おそらく、その日初めての静寂。
そのうち、一人がようやく口を開いた。


「ど、童貞ってこと?」
その後、4人は一斉に「童貞か!」「童貞だ!」「頑張れ!

と僕の応援をなぜか始めてくれた。あまりにも飛躍したその会話の流れにムッとすることもなく、ただひたすら流れに身を任せる。延々と続く風俗体験談、そして女性の落し方など。ニコニコ聞いていたけど、参考にならなすぎて全然覚えていない。


驚いたのだけど、4人とも既婚者だった。
家に帰らず、深夜に猥談で盛り上がるなんて自分が妻や子どもだったら嫌だな、なんて思いつつあえて家族について深掘りしてみた。

すると…。
愛想を尽かされている、そもそもセックスレス、もう奥さんを愛していない、彼女がいる(話聞く限り飲み屋のお姉ちゃんぽかったけど)…想像を超えた深刻な妻帯者の悩みがドッと溢れ出てきた。

ここは社会の縮図だ。

私は彼ら一人一人の悩みを真摯に聞くことにした。
時に彼らの意見に同意し大きく頷き、時に叱責し間違いを正す。出張先で風俗でお金を使いすぎてしまうことや、ただのパパ活っぽい"彼女"との恋愛について、本当にそれで正しいのか?実は無理していないか?と優しく問いかけ続ける。

徐々にあったまるオーディエンス。優しい空気が流れ始めた。ついに彼らの本音が漏れ始める…支配権を握ったと感じた私。

ここだ!意を決して、決め台詞のような言葉を吐いた。
「でもやっぱり奥さんのこと、愛してますよね?」
…再び訪れた沈黙。だがそれは長くは続かなかった。


「まあたぶん愛してるけどさ、それより俺は風俗が好き!」「だよな!」「彼女にあいてー!(多分パパ活)」

負けた。まあ価値観を押し付けるつもりはないんだけどさ、美談をつまみに酒を飲みたい気分だったのに…私は負けたんだ。



その後も延々と続く風俗談義、昭和感たっぷりの「恋愛は強引に」論などなど、私の哲学に反する話。それをニコニコと聞いている私、ひたすら受け身でなんかもうこれ私がキャバクラ体験入店してるみたいになってない…?


まあそんなこんなで私はプロ童貞なる謎の称号をいただき、途中から「お前、いいヤツだな!」的な空気になり、当初の目的通りお酒も奢ってもらえたのだけが救いだった。

彼らは去り際に「頑張れよ!童貞!」「お前ならいけるぜ!」「あばよ!(これは多分言ってない)」など昭和感満載のノリの応援を残してくれた。

ふと疑問に思ったので、「ところで精力満点な紳士方、あなたたちお年はおいくつなんですか?」




聞いて損した。なんと年下だった。見た目にすっかり騙されていた。馬鹿野郎!時間を返せ!

*キャバクラに行ったことがない

※これはちょっと嘘で、キャバクラは連れられて行ったことがある。
キャバ嬢に、受け答えがキャバ嬢みたいと言われました。

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