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1台の月極駐車場探しが私の人生を180度変えた!②

株式会社ハッチ・ワークの代表取締役社長、増田です。

前回は、私自身が月極駐車場探しで困った経験をしたことから、

「きっとホテル探しのように便利にできるはず!」
「私が月極駐車場探しを楽にする仕組みを作ろう。」

と決意し、月極駐車場のポータルサイトづくりを始めたものの、とんでもない高い壁にぶつかったところまでをお伝えしました。

続きを書いていきたいと思います。



信じて続けたことで実る

ポータルサイトという性質上、掲載している情報量が少なければ駐車場利用者は検索しませんし、当然問い合わせは来ません。とはいえ、どの程度の掲載があれば反響が出るのか見当がつかず、ひたすらに駐車場情報を集める日々。何とか一定数情報が集まったところで、ついに月極駐車場検索サイト「アットパーキング」(当時はat PARKING)をスタートしました。

不安と期待を胸に問い合わせを待ち構えるも、蓋を開ければ月に10件問い合わせがくれば良いほうという結果…。「情報量が増えれば変わるはず」と信じて、調査と掲載を続けていましたが、同じような状況であっという間に半年が経過しました。

正直、「もうだめかも…」と諦めかけていたときです。ちょうど掲載が1万カ所、台数にして10万台を超えたぐらいから、突然転機が訪れました。利用者からの問い合わせが急増したのです。

情報量の増加に伴い、自然検索順位で上位に出るようになったことも影響が大きかったと思います。月50件、100件と問い合わせが増えていき、1年後には毎月300件を超える問い合わせが来るようになっていました。これが、2012年のころです。

10年後の現在はというと、おかげさまで2023年3月時点の月間問い合わせ件数が26,000件を突破、掲載数5万カ所以上となり、業界屈指のポータルサイトに成長してくれました。

業界有数の月極駐車場検索サイト「アットパーキング」(2023年6月29日時点)

過去の事例をベンチマークする

戻ります。

問い合わせが増えたことで、さらに嬉しいことが。管理会社の方から「うちの月極駐車場も掲載してくれませんか?」というご依頼をいただくようになったのです。

それまで、歩いて調査した駐車場情報は管理会社に問い合わせて掲載許可をいただいていたのですが、実はネガティブな反応をいただくこともしばしばありました。今すぐ借りたいという具体的なお客様がいない状況では、手間だったのだと思います。ですから、「アットパーキング」が認知されてきた実感が湧き、とても嬉しかったことを覚えています。

さて、反響が増えて管理会社からの信用も得られ、「さあここから!」と思ったのも束の間、管理会社からクレームをいただいてしまいました。

「不動産仲介なのに店舗がなくて、契約に立ち会わず、非対面ですべて終わりにするのは、いかがなものでしょうか?」

今でこそ非対面は当たり前になりましたが、当時の社員たちも困惑していました。

頑張ってくれた当時のメンバーたち

「増田さん、訪問させてください!」

社員たちの訴えに対して、私はここだけは譲れないと首を縦に振りませんでした。「会わずとも対面以上のメリットを提供できれば、きっと喜んでいただける」と思っていたからです。

というのも、昔はホテルを探すのも店舗に行って、申込手続きをすることが当たり前でしたが、ある時から非対面で手続きができる仕組みが爆発的に普及し、結果的に世の中に浸透したという事実をベンチマークしていたためです。

「いつか必ず管理会社の方々も駐車場の利用者も、わかっていただけるはずだから」と説得し、クレームは真摯に受け止めつつも、非対面の手法は変えませんでした。

ならば、非対面でも安心していただく方法は?

これについては何度も話し合い、改善を続けました。その結果、非対面取引でも、対面以上に月極駐車場の契約を増やし、管理会社や利用者に喜んでいただくノウハウを手に入れることができたと思っています。

本質的なニーズを把握する

一方で、このままでは「ホテルのように便利に」は実現できません。わかりやすいところで言えば、契約完了までの時間。ホテルの予約なら検索から予約の手続き、決済完了まで、せいぜい15分程度です。しかし、この時点での私たちが提供するサービスは、非対面ではあるものの、サイトの情報を見て問い合わせてくれた方と、管理会社の間に入って仲介するというもの。どんなに頑張っても、数日は要します。

つまり、利用者が月極駐車場をスマホで探せて、そのまま申し込み、契約ができる“オンライン契約システム”が必要だと考え、急ピッチで開発しました。これが2016年の頃です。

完成して間もなく、自信を持っていくつかの管理会社にこのシステムを提案しに行きましたが、残念ながら一向に良い反応をいただけませんでした。「なにがダメなんだろう…」と思っていると、ある管理会社の方から、核心的な指摘をいただきました。

「増田さん、申込と契約手続きがオンラインになるだけじゃ、全然業務削減になってませんよ。実際に大変な作業はそれ以外にあるんです。」

詳しくお聞きすると、月極駐車場の管理業務は実入りのわりに負担が大きい。具体的には募集から契約手続き以外にも、日々の空き確認の電話応対や保管場所使用承諾書の発行、契約者からの相談に対応したり、解約や更新も手続きがあります。集金して滞納している方がいれば数千円だったとしても督促しなければなりませんし、賃料改定や閉鎖だってある。細かい仕事がたくさんあって、オンライン契約システムだけで業務が楽になるわけではないことを教えてくれました。

私は大きな勘違いをしていたようです。オンライン契約というITシステムだけでは、全然足りなかったのです。管理会社が「本当に便利だ」というサービスでなければ、「ホテルのように便利に」を実現できません。

「もっと管理会社に喜んでいただける仕組みを作ることに集中しなければ!」

仕切り直しです。

ついに完成した「アットパーキングクラウド」

管理会社の皆さんにとって、実入りのわりに負担は大きいとはいえ、オーナーとの関係づくりにおいて捨て置けないのが月極駐車場管理という仕事。なぜなら、オーナーが月極駐車場を売却したり建物を建てたりという検討をするときに早くから関われるのは、やはり管理会社だからです。

そして、管理会社の至上命題といえば、空車を埋めて稼働率を100%に近づけ、オーナーの資産価値を向上させることです。これを実現しながら、同時に業務の効率化を図ることができれば、きっと喜んでいただけるはず。

まとめると、

  1. 空車を埋めるための集客支援

  2. 申込から契約、解約や更新もオンライン化するシステム

  3. 収納代行と滞納保証

  4. コールセンターによる電話応対の代行

これらがポイントだと整理しました。

幸い1.と2.はできています。

3.については、当社がオフィス仲介事業をやっていた際に、賃料の滞納保証事業をやっていた際のノウハウを活かして、月極駐車場専用の滞納保証サービスを作って解決すればいい。

4.も非対面の仲介サービスで培った経験値をもとに内製で作り上げる。

点が線になるとはまさにこのこと。またまた急いで開発と体制づくりに努め、そしてついに、管理会社にとって便利なオンライン契約システム「アットパーキングクラウド」の原型が完成し、貴重なご意見をいただいた管理会社に改めて提案。「これならば」と、業界に先駆けて試験導入いただくことになりました。これが2018年の初めです。

運用開始後、稼働率が全体で約20%アップし、かつ今まで行っていた管理業務の大部分を削減するに至りました。


アットパーキングクラウド

おわりに

まだまだ粗さが残るサービスだったこともあり、2年かけて少しずつ試験導入先を増やし、各社から忌憚のないご意見、ご要望をいただきながら、じっくりトライ&エラーを繰り返しました。そして、ついに2020年春に正式リリースを迎えます。

私が1台の月極駐車場探しに困ったあの日から、実に10年以上の歳月がかかりました。これが「1台の月極駐車場探しが私の人生を180度変えた!」エピソードです。私自身が感じた、本当にちょっとした体験ですが、強烈な当事者意識を持ち続けたこと、そして利用者、管理会社、社員の皆の支援があって、ここまで来ることができたと思っています。

2023年の現在、大変ありがたいことに全国の管理会社からご評価いただき、導入企業は400社を軽く超えています。

「月極駐車場の貸し借りをホテルのように便利に」

全国には約3,100万台にも及ぶ月極駐車場があると推計していますので、すべての月極駐車場で「ホテルのように便利に」を実現することを思えば、まだまだ道半ばです。引き続き、精進します。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。
これを読んでいただいた皆様の、ちょっとしたヒントになれば幸いです。