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節目の時期に起りやすいアニバーサリー反応|公認心理師が対処法を解説

1. アニバーサリー反応とは

アニバーサリー反応とは、大きな出来事、辛い出来事から1か月、1年、10年などの節目の時期に、心身の状態が不安定になることを指します。記念日反応とも呼ばれています。
例えば、大災害や事件・事故、身近な方との死別といった出来事によって引き起こされます。出来事が起こった日付と一緒にその体験が記憶されるため、意識していなくても、その日付が近づくにつれて心身に反応が生じます。


どのような反応が起きるのか
アニバーサリー反応として、次のような反応を体験することがあります。

・その出来事について思い出したり夢に見たりする
・その出来事が起こった時の感情や身体反応、考えがよみがえってくる
・悲しみや喪失感が強くなる
・怖い気持ちや不安な気持ちが強くなる
・いらいらや怒り、罪悪感等の感情が強くなる
・意欲の減退や、集中力の低下


自然な反応である
アニバーサリー反応は異常な反応ではなく、自然なものと考えられています。反応が生じた際に、どのように落ち着かせるか知っておくことが重要です。

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2. アニバーサリー反応への対処法


職場での見守りや声かけ
部下の様子が普段と違い心配に思ったら、管理職の方は声をかけるようにしましょう。

部下が安心して話せる場をつくる
「何かあったらいつでも伝えてきてね」というメッセージを伝え、話に耳を傾ける姿勢があることを示します。
部下が話を始めてくれたら、気持ちを丁寧に受け止めながら話を聴きましょう。

継続的に見守る
声をかけて、「大丈夫です」と返されることもあるでしょう。その場合は、無理に話を聞き出そうとせず、見守りを続けるようにしましょう。心配な状態が続くようであれば、話を聴くための時間をきちんととり、改めて声をかけてみましょう。

仕事を調節する
場合によっては、休養を勧めることも必要です。例えば休日を挟んで1~2日休みをとり、少し長めにゆっくりすることを勧めてみましょう。
一方で、普段通り仕事をしていたほうが楽に過ごせるという方もいらっしゃいます。その場合は、仕事の量や質を調節して、過度の負担がかからないようにしましょう。多くのタスクを課したり、新しいことへのチャレンジを求めたりすることはなるべく避け、慣れた仕事やルーティンワークで進む仕事などを任せると良いでしょう。


気持ちを受け止める聴き方をする
不安な気持ちが現れていたら、気持ちを丁寧に受け止め、共感的に聴くように心がけましょう。自責感を抱えていらっしゃる方には、「あなたのせいじゃない」というメッセージを明確に伝えることが大切です。

情報を提供する
気持ちの面に加え、睡眠がとれていない、食欲がないなど、身体面に不調が現れている場合も考えられます。こうした不調を抱えている方には、相談窓口など、ケアにつながるための情報を伝えましょう。
一方で、不調を抱えている方の多くは、自分なりの対処方法を持っていらっしゃいます。ご本人の対処方法を否定しないこと、その方法が有効であれば支持することも重要です。対処方法がわからず、困っているようであれば、有用な情報を共有し、一緒に方法を考えましょう。

セルフケアのポイント
できるだけ日常のリズムを刻む
就寝・起床や食事など、普段の生活リズムを意識して過ごしましょう。

安心できる場で、自分の気持ちを話す
安心できる相手に、無理のない範囲で今感じている気持ちを話してみましょう。悲しいこと、つらいこと、不安や怒りなどの思いを話すことは、トラウマティックな体験から回復する手立ての一つです。

自分自身の気持ちに寄り添う
「喪に服す」という発想があるように、お祭りなどの「楽しいことを控えなければならない」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。楽しみたい気持ちがあるのならば、我慢をせずに楽しんでみましょう。楽しむことも、回復の手立てとなります。
反対に、イベントなどを「楽しまなければならない」とお考えの方もいらっしゃると思います。楽しめないと感じるのであれば、無理に楽しもうとせず、自然と楽しめる日が来るのを待ちましょう。

自分の気持ちを表現する
出来事が起きたときの気持ちを語り継ぐ語り部の活動や、気持ちを文章にすることなど、自分の気持ちを表現することが、回復につながることもあります。

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3. 不安な気持ちやストレスを和らげる方法

不安な気持ちやストレスを和らげ、リラックスするための方法を2つご紹介します。
これらの方法は、アニバーサリー反応に限らず、日常で感じるストレスへの対処法としても効果的です。普段の生活に取り入れてみましょう。

呼吸法

腹式呼吸の方法
ゆっくりと呼吸を整えることで、不安や緊張を和らげます。
1. お腹を膨らませるイメージで、鼻から息を吸う(4~5秒間)
2. 息を吸い切ったところで、少し息を止める
3. お腹をへこませるイメージで、口からゆっくりと息を吐く(8~10秒間)
息を吐くときには、吸うときの倍くらいの時間をかけて、ゆっくりと吐きます。数回繰り返し、気持ちが落ち着くのを感じましょう。

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筋弛緩法
筋肉に力を入れた後に緩ませ、リラックスします。
1. 肩をすくめる
2. 胸を張る
3. さらに肩をすくめる
4. ペンギンのようになって息を吸い、3秒止める
5. 息を吐きながら脱力する
脱力した際に感じる「力が抜けた」感覚が、リラックスした状態です。2~3回繰り返すと、よりリラックスした感じを得られます。

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4. まとめ


アニバーサリー反応は、人間にとって自然な反応と考えられています。職場で辛そうな方に気づいたら、声かけや見守りでサポートする姿勢を心がけましょう。震災後、誰もがそれぞれのペースで日常を進めています。ご本人の考えや気持ちを尊重することが大切です。

監修者紹介

鈴木 麻美
ピースマインド株式会社
コンサルティング部 EAPスーパーバイザー・コンサルタント・精神保健福祉士・公認心理師・社団法人日本産業カウンセラー協会 産業カウンセラー

大学卒業後、2004年よりピースマインド株式会社にて、コンサルタントとして、社員のセルフケア、人事・管理職向けのマネジメントコンサルテーション、職場惨事(死亡事故、自殺他)後の心のケア、など、産業現場のメンタルヘルスに関わる業務に携わる。個人カウンセリングだけでなく、グループセッション、研修、ストレスチェック組織分析説明会などを実施。ストレス・マネジメント、不調社員、職場不適応社員対応、休職・復職対応、職場惨事対応などを専門とする。

参考情報

ピースマインドは、2011年の東日本大震災後、被災地で過ごす方々や支援する方々のメンタルヘルスケアの一助になることを願い、英治出版と協同してピースマインドのクライシスケアチーム監修・執筆の「災害時のこころのケア」という冊子を無料で配付し、2019年の台風19号の災害にともない各種情報を更新しました。

「災害時のこころのケア」には、どなたでも無料で利用できる様々なお悩みに関する相談窓口を紹介しています。現在もピースマインドのコーポレートサイトから無料でダウンロードできます。ご自身や周囲の方々のセルフケアの一助になれば幸いです。

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「災害時のこころのケア」もくじ
・私たちのこころ
・自分のためにできること
・女性が自分のためにできること
・子どものためにできること
・高齢者、障害者のためにできること
・上司や管理者が部下のためにできること
・外国の方のためにできること
・支援者が自分のためにできること( リーダーがメンバーのためにできること)
・大切な人を亡くされた方へ
・さまざまなお悩みに関する相談窓口


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