見出し画像

脱炭素社会の実現に向けた「初歩の関連事柄・動き」のまとめ

こんにちは。現在、行政機関に所属し、起業家やベンチャー企業の支援を行っているはたしょです。

ここでは、昨今、注目されている脱炭素社会の実現(カーボンニュートラル)に向けた取組や動きについて、金融機関が積極的に注力する理由と共に、まとめていきます。

地球温暖化の現状

ご存知の通り、世界の平均気温は上がり続けています。
二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が増え、地球に熱を閉じ込めることが原因と言われています。

世界目標として、工業化以前の1850年〜1900年代と比べて1.5℃の気温上昇とすることで合意し、日々取り組みが始まっていますが、1.5℃の上場でも影響は多大です。
大雨、熱波、干ばつ、雪害、水害、感染症…。挙げ出すとキリがないと思います。

これら課題に対して、登場したのがカーボンニュートラルという考え方。
現代社会で、温室効果ガスのゼロ化は不可能。そこで、温室効果ガス排出量と吸収量を足し引きして均衡させることで実質ゼロ(プラスマイナスゼロ)を目指すものです。
現在、各国がカーボンニュートラルの実現に向けて検討を進めています。

2022年11月には、エジプトで第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)が開催されました。
その中で、「損失と損害(Loss and damage)」と呼ばれる、すでに気候変動によって大きな損害を被っている被災地への支援や、被災者への生計手段の提供の課題に対しては、基金が設立され、欧州の国々が新規で2億ドル程度の基金への拠出を約束するなど、一定の進展がありました。
(一方で、期待されていた「石油・天然ガスを含む化石燃料の削減」については特に言及されませんでした。)

日本国内の脱炭素動向について

国内でも日本政府が、2020年10月にカーボンニュートラルを宣言して取組を推進しています。2022年7月には、グリーントランスフォーメーション実行会議が発足しています。

2022年12月に行われた第5回GX実行会議の中で
①今後10年間で150兆円規模の投資の実現を官民連携で行うこと(ロードマップ作成)
②排出量取引制度は2026年度に本格導入する
③炭素賦課金は2028年度から本格導入する
④原子力発電所の次世代革新炉化や運転期間の緩和・延長

などが方針として決まっています。

コーポレートガバナンスコードでも、プライム市場企業に対して、気候関連財務情報開示提言(TCFD/企業に対して気候変動によるインパクトや、財務上の影響の開示を求める国際組織)に沿った開示が実質的に義務化され、二酸化炭素排出量を含む気候関連財務状況の開示が求められるようになりました。
(スタンダード・グロース市場は任意・推奨に留まる)

また、これまで世界で乱立していたサステナビリティ開示基準が統合などを繰り返し、2023年ごろを目処に、IFRS(国際会計基準)財団下に設立された国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により、協調された最終基準が公表される予定です。

これらを踏まえ、金融市場においても、今後益々「脱炭素」が投資の判断材料にされるようになり、消費者も労働市場も、環境に配慮した商品・サービスを展開する企業を選好する形へとシフトしています。

炭素税と排出量取引について

今後、そういった環境下において、カーボンプライシング(炭素に価格を付けること)が浸透していくとされています。炭素への価格を付ける際に深く関わり合う仕組みである「炭素税」と「排出量取引」について、ここではまとめます。

炭素税とは

炭素税とは、大まかにいうと「二酸化炭素の含有量に応じて税金をかける仕組み」です。
同じカテゴリの商品でも、製造にかかる二酸化炭素排出量が多い商品には、その分炭素税を上乗せするという形です。

排出量取引とは

排出量取引とは、企業毎に二酸化炭素の排出枠(限度量)を設定する仕組みです。排出枠が余れば、その余剰分を他社へ販売が可能で、反対に排出枠を超過する際には、その分の枠を他社から購入しなければならないという形です。

排出量算出と開示の実態について

では、その「排出量」はどのように考えていくのでしょうか。
それには、GHGプロトコル(Greenhouse Gasプロトコル)という温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際的な基準を用いるとされており、その中で、次に挙げるScope1〜3の範囲を自社の算定対象とします。

Scope1:自社による直接排出

・自社工場による燃料の燃焼など

Scope2:他社から供給されたエネルギー利用に伴う間接排出

・電気の利用など

Scope3:自社以外の上下流での排出

・上流(川上)
1.原材料 2.資本財 3.エネルギー関連 4.輸送配送 5.廃棄物 6.出張 7.通勤 8.リース
・下流(川下)
9.輸送 10.加工 11.使用 12.廃棄 13.リース 14.フランチャイズ 15.投資

Scope3の範囲は、(自社のみならず)取引先の排出量が算定対象となるため、自社努力でScope1や2を削減することに加えて、取引先間で協調して排出量の削減に取り組むことが必要となります。
すなわち、企業間で協調して排出量を減らす、もしくは、排出量の少ない企業と取引するかです。
Scope3が占める割合が9割以上とされる業種・メーカーも多く、サプライチェーンへの脱炭素対応を求める大手メーカーも出てきています。

金融機関にとって、「15.投資」には取引先が含まれるため、自社の排出量削減に繋げたい狙いで、積極的に脱炭素の取組を進めているということです。

では、Scope3のカテゴリー15.投融資の評価手法は一体どうするのでしょうか?
それについては、PCAF(金融向け炭素会計パートナーシップ:Partnership for Carbon Accounting Financials)という、金融機関が融資・投資を通じて資金提供した先の温室効果ガスの排出を整合的に算定するための組織が設立されており、Σ 自行の融資学/融資総額✖️年間排出量(t)が算定方法となる予定です。

GHG排出量の算定は、かなり細かい計算となりますし、削減に取り組んだ企業の努力を反映させるためには、環境省が公表する標準値データを使うのではなく、できるだけ現場の一次データを利用することで精度を高めていく必要があるとされています。また、業界毎に異なるサプライチェーンの特性を加味する必要があるなど、一筋縄では行かないようです。温室効果ガスは目に見えないだけに、その中でもどれだけ純度を高く出来るかが課題です。
(国内のベンチャー企業が、GHG排出量の算定・可視化をするクラウドサービスなどの展開を加速させています。先日もシリーズAラウンドで約25億を調達しています。)

最後に


2050年までのネットゼロ排出量を目指して、2025年までは排出量の報告体制を構築するトレンドで、2026年からは本格的に排出量削減を実施していく時流となります。

どこまで報告体制を中小企業まで波及していくことができ、意識を変えることが出来るのか、注目だと思います。
また、カーボンフットプリントという製品・サービスに対して、原材料調達から廃棄に至るまでに発生する二酸化炭素量表示などの動きも加速していくと考えられます。

今年の冬は、ほぼ暖房を使わずに過ごしています。一国民として、出来ることから取り組んでいきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?