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稟議書に電子署名やタイムスタンプが必要ってほんと?

はじめまして。波多野と申します。
株式会社コラボスタイルで「コラボフロー」というワークフロー製品のプロダクトマネージャーを担当しています。

長年「ワークフローは単なるハンコシステムじゃない!」と言い続け、ワークフローに心臓を捧げてきた僕ですが、コロナの影響で多くの組織がハンコとの付き合い方を迫られる中、承認行為と押印、電子署名やタイムスタンプに関する世の中のイメージが、なんだかごちゃっとして来たように感じましたので、この記事を書くことにしました。

さて、この「脱ハンコ」の流れの中で最近になって増えてきたのが「稟議書には電子署名やタイムスタンプが必要なの?」という質問です。

これまで僕はずっと、稟議書は社内文書なので電子署名やタイムスタンプは必要ないと思って生きてきましたが、念のため確認しようと「e-文書法 稟議書」でググってみると、あれ?あれれ?「稟議書はe-文書法の対象」と読める記事が結構出てきます。

認識違いしてた・・・?

e-文書法って?

e-文書法は「紙による原本保存義務がある文書」「電子的に保存してもいいよ」という法律です。これにより会社法、商法、証券取引法などで保管が義務付けられている文書を、電子的に保存する事ができるようになりました。

その保存要件の1つとして定義されていたのが「電子署名」と「タイムスタンプ」なんですが、電子署名は2015年の規制緩和により要件から外れたため、現在必要なのはタイムスタンプのみとなっています。

つまり、もし稟議書がe-文書法の対象なら、稟議書の保管には少なくともタイムスタンプが必要、という事になります。

稟議書がe-文書法の対象かを調べてみる

稟議書がe-文書法の対象であるかを確認するには「内閣官房IT担当室」が発行している「e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定」が参考になりそうです。

しかしこの一覧、とてつもない量の規定が並んでいる上に、内容を正確に把握するにはそれぞれの法令の中まで確認する必要があって、全部チェックするのはあまり現実的ではありません。

そのため、検索機能を使ったり、関連する法令に絞って目視でチェックするなどの簡易的な確認のみ行いましたが、その限りでは、この中に「稟議書」という文言を見つけることはできませんでした。

近いものとして「議事録」という文言はちらほら見受けられますが、内容から察するにこれは一般的な会議の議事録を指すのではなく、取締役会議事録などの保管が義務付けられている文書を指しているようです。

いよいよ気になったので、内部統制に詳しいCollegia Internationalの公認会計士・税理士の浅野雅文氏に相談したところ、「稟議書は基本的には社内合意文書に過ぎないので、法律で保存が義務付けられている書類に該当しない限りは、e-文書法で要請されるようなタイムスタンプまでは不要だと思います」との見解をいただきました。

つまり稟議書がe-文書法の対象となる可能性は「状況によりゼロではないもののかなり低い」と考えて良さそうです。

※インターネット上に「稟議書はe-文書法の対象」とする記事が散見されるのは、恐らくe-文書法とペーパレス化を絡めてアピールする流れの中で、いつの間にか対象文書に稟議書が紛れ込んでしまった、というのが実情ではないかなと推測してます。

まとめ

ここまで稟議書の話ばっかり書いてきましたが、もちろん契約書や、e-文書法の対象となる取締役会議事録等の文書については、タイムスタンプや電子署名を使って正しく処理する必要がありますので、クラウドサインやAgreeといった電子契約サービスを利用するべきでしょう。

一方で、社内のみで完結する稟議書のような「タイムスタンプが必須ではない」文書を取り扱う場合は、やはりワークフローシステムを使うのがベストだと思います。

タイムスタンプを使わなくても、コラボフローを始めとするワークフローシステムで社内文書を運用していれば文書の改ざんはまず不可能で、誰がいつログインしたか、承認したか、却下したかといった操作情報についてもしっかりと記録に残すことができるからです。

同じ「ハンコを無くす」という目的でも、その利用シーンによって、使うべきサービスは異なります。

自分たちが本当にやりたい事、必要な事は何かを振り返りながら、適切にサービスを選択していく事が大事ですね。

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