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3%の偶然

昨年末に中判カメラのRZ67を購入したとき、サブ機と露出計を兼ねてGR IIIを一緒に購入した。

軽量でコンパクト、操作も簡単なので電源ボタンとシャッターボタンぐらいしか知らない息子と妻もよく使っている。軽量なので息子がカメラを落として足を怪我をする心配もなさそうだ。

子どもが生まれたことをきっかけにカメラを購入する人は多い。スマホが普及する以前は子どもの運動会をきっかけにビデオカメラを購入する人が多かったらしい。

広告の影響ってすごいよね。バレンタインのチョコレートも、節分の恵方巻きも、丑の日のうなぎも広告が作り上げた風習のようなものだ。

親は子どもの写真を撮りがちだけど、写真を撮る親の姿をみて子どもだってマネをしたくなるものだ。子どもがかいてくれた絵や手紙が親の宝物になるように、子どもの撮ってくれた写真も宝物になる。

間違った知識やバエがないぶん子どもは素直な写真を撮る。軽くて簡単なカメラは家族で共有できるので、子どもをきっかけにカメラを探している人におすすめだ。

別々に行動した日は撮った写真を見ながらどんなことがあったのか会話するのがたのしいし、一緒にどこかへいったときは写真をみながら思い出話をするものたのしい。

↓ GR IIIで撮影

一ヶ月ほど前にGR IIIxというGR IIIとウリがふたつなカメラをプレゼントされた。ぼくもカメラをよくプレゼントする。お金と一緒でカメラはまわってくるものだ。

ふたつのウリなカメラの違いはレンズのmm数だ。プロっぽくいうとレンズの焦点距離が違う。GR IIIは28mmでGR IIIxが40mm…と説明されがちだけど、正確には18.3mmと26.1mmだ。

GRはセンサーのサイズが少しちいさいので、フルサイズのセンサーに変換すると28mm相当と40mm相当の画角になる。画角は角度で焦点距離は焦点の距離の長さなので根本的に違う。ざっくりいえば画角は写る範囲の話で、焦点距離は写り方の話だ。

iPhoneの広角レンズは26mm相当の画角だそうだ。センサーはとてもちいさいので焦点距離は5.7mmになる。写る範囲の画角は26mm相当だけど、写り方は5.7mmだ。だからスマホで撮る写真はスタイルが悪くなったり、逆にスタイルを本物以上に良く撮ることもできるのだ。

カメラ選びはライフスタイルと予算に合わせるクルマ選びとよく似ている。軽トラを選ぶかミニバンを選ぶかみたいなことだ。ちなみに軽トラ所有率の全国最下位が東京都で、全国一位は長野県だ。カメラもクルマも使い方によって選び方が変わる。

どんなカメラでも長所と短所がある。短所を他のカメラの長所でカバーするからプロはどんな撮影でも対応できる。だからカメラ選びにいっっっちばん大切なのは、カメラの長所と短所を把握することだ。

GRの短所はピント性能の低さ。この状態でピントが合いませんか?ウソでしょ?ってぐらい性能が低い。それでいて瞬時にマニュアルフォーカスへ切り替えできるデザインでもないので、いっそのことピントはある程度あきらめた方がいい。

それから画素数が2400万画素という点。必ずしも「高画素=いいこと」ではない。GRのセンサーサイズなら個人的には1200万画素でもいいぐらいだ。おかげでノイズが発生しやすく暗所に弱い。ピントの弱さと重なって、ちょっと暗くなったら使いにくいカメラになってしまう。

あとレンズ横のよくわからんリングが外れて紛失する。紛失したら社外品リングで2000円弱の出費になるのでパーマセルを貼っている。正直、アロンアルファで止めたくなる。あと社外品のサムグリップをつけてホールド感を強くしてる。

長所は携帯性の高さだ。ポケットに入るのがすごい。センサーサイズをちいさくして、レンズの焦点距離を短く、そしてただ高画素数にしたカメラやスマホはいくらでもある。

GRはまぁまぁな大きさのセンサーに18.3mmと26.1mmの焦点距離を実現して、携帯性を損ねてないから素晴らしい。だからいい感じの写真が撮れる。短所を許容できるのでGRを重宝している。

テーブルの上にGRをおいておくといつでもサッと写真が撮れる。出かけるときはテーブルから持っていって、帰ったらまたテーブルに戻す。

バッテリー容量はちいさいけどUSB-C端子なのでモバイルバッテリーでも充電できる。スマホとの連動アプリも他社メーカーよりも簡単で安定している。

うちではぼくがGR IIIxを息子と妻がGR IIIを使っている。どちらにしてもピントが短所なので、ピントを気にせずどんどん撮った方がいいカメラだ。

↓ GR IIIxで撮影

偉そうなことをいうつもりは無いけど、どう控えめにいっても偉そうだから偉そうにいっちゃうけど、写真が上手い人と苦手な人に決定的な一つの違いがある。

センスや知識や性格やコミュニケーション能力だのいろいろあるけど、精神論や技術論ではなく単純な方法論だ。

使い捨てカメラの「写るんです」は27枚と39枚のタイプがある。一般的なフィルムは一本36枚撮りだ。はじめてカメラを持った小学生でも大人でも高齢者でも、どんな人でも不思議なことにフィルム一本撮れば一枚はなんとなくいい感じに撮れた写真がある。

ぼくはこれを「3%の偶然」と呼んでいる。ざっくり3%なんだけど、偶然でヒットが出るのが写真だ。

写真をいろいろ勉強すると4%…5%…と偶然が上昇する。ただの偶然を多少なりとも考えて狙って撮るからだ。ぼくは18歳から写真をはじめたのでもう21年写真を撮っている。

「3%の偶然」を才能と勘違いをして、勉強をしてプロになった。現在の打率は仕事内容にももちろんよるけど、せいぜい10%ぐらいだ。

100枚撮ったら10枚ぐらいのいい感じの写真がある。そこでぼくは100枚じゃなくて1000枚撮る。そうするといい感じの写真は100枚になる。

写真がどんなに苦手な人でも30枚撮れば一枚はいい感じの写真が出るのに、苦手意識から20枚…10枚と撮る枚数がどんどん減っていく。打率が低いのにバットを振る回数まで減らせば当然ヒットは出ない。

だから決定的な違いは撮る枚数だ。ごちゃごちゃ考えずに撮ればいい。写真の質は量から生まれる。「いい感じ」のハードルも上がっていくので、打率はあまり上がらないかもしれないけどそれが成長だ。

「本当に上手い人は一枚だけ撮ればいい」みたいな眉が唾だらけな話も聞くけど、そもそも本当に上手い人が一枚しか撮らない状況がわからない。スタジオでじっくり1CUTを作り上げて納品することと撮る枚数は違う。

写真は玉子焼きと一緒だ。誰だってはじめて玉子焼きを作ったときは失敗するんだけど、次に作るときはちょっと上手になる。はじめての玉子焼きと101回目の玉子焼きの出来上がりは違う。

写真もたくさん撮らないと上達しない。そのためには常にカメラを持ちあるく必要がある。旅行に行ったときも入院中も、仕事や学校に行くときも、コンビニへ買い物に行くときも持ちあるく。日常のなかでおもわず見たものを撮ればいいだけだ。

写真は電源を入れてシャッター押せば簡単にうつるのだ。だから撮影者の人柄や性格が反映される。おもしろいところでもあり、むずかしいところでもある。バエない日々を撮る。コンパクトなGRはおすすめだ。

サポートされた資金で新しい経験をして、それをまたみなさまに共有したいと考えています。