2歳の誕生日。
お誕生日おめでとう。
毎朝の“おはよう。”の挨拶ではないことと、昨日までなかったリビングの飾りに息子も今日がいつもと違う日だと感じている様子だった。
子育ての先輩たちから子どもの成長は早いという経験談を耳でタコが産卵するくらい聞いていたけど、これは本当だった。子どもの成長は早い。
子育てマウンティングを取ろうとする人の“これからが大変よぉ”という言葉はウソだった。
深夜にお湯の温度を測って首を支えながらミルクを与え、ゲップを促さないといけなかった息子が、いまじゃコップに注いだ麦茶を自分で飲んでいる。
子育ては息子の成長とともに日々楽になっている、成長に比例して大変さの量が増すわけじゃない。
もちろん大変さの質は変わるけど、年齢相応の大変さは子どもだけでなく大人だって持ち合わせている。それが人生だし何よりも成長している証だ。
人の言葉には意図がある。
子育てマウンティングを取ろうとする人の言葉にも意図がある。
言葉の意図を読む必要性を子育てをしていてよく感じるし、時には耳を貸さないことも大切だ。
群馬県の水上温泉に向かった。
僕と妻は温泉を、息子には蛍の群生を見せてあげたい。
宿に向かう途中で吉本ばななさんが世界一美味しいと絶賛したことを最前線に出したお店でバームクーヘンとローソクを購入した。
息子は浴衣を着るのが好きだけど帯を嫌がるので、どこか入院患者みたいな感じになる、かわいいからいいんだけど。
エレベーターやロビー、夕食会場などいろんなところで浴衣姿の息子に笑顔で“かわいいねぇ”と話しかけてくれる人がいる。
見知らぬ人から笑顔で優しい言葉をかけてもらえるから息子はかわいくなる。
息子はよく笑う、それは僕と妻だけでなく多くの人が笑顔で接してくれるからだ。
子育ては親だけでなく、子どもと一瞬でも関わればそれが子どもにとって小さな積み重ねの一つ一つになり影響を与える。息子に対する笑顔が本当にありがたい。
館内のゲームコーナーに行った。
宿のゲームコーナーってだいたい古いゲームが置いてあるものだけど、インベーダーゲームがあったのには驚いた。僕が生まれる前のゲームだ。
なんとなく知ってるけどやったことはないのでお金を投入した。
あまりにも多勢に無勢すぎる、味方はいないのか。
高威力だけど単発式の銃、敵の攻撃で脆く崩れる壁、迫る大軍。もう降伏しようと降伏ボタンを探している間にあっさり死んだ。
電車が好きな息子は電車でGOをやりたがっている。
アクセル全開で電車を走行、停車すべき駅で減速すらしないのですぐに終わった。
親子揃ってあまりゲームのセンスはないみたいだけど、息子は満足そうだ。
蛍の群生地に向かう。
蛍を撮影するときは手持ちで撮影する、三脚は使わない。そもそも僕はこういう場所で集団になって三脚を構えて撮影している人達が嫌いだ。撮影のための場所じゃないのに、我が物顔で撮影地にしちゃうから嫌いだ。
鉄道や国立公園の花などの被写体に集団で三脚を構えている人たちを見かけるとグヘェってなる。一言でいえば迷惑なんだけど、迷惑をかけて撮影した写真がGoogleの画像検索にでるような写真をお手本として目指しているから余計にグヘェってなる。それを先生と呼ばれる写真家が引率したり、カメラ雑誌で推奨している記事を読むとグヘェってなる。
すぐ近くに新幹線の駅があった。
停車時刻を調べるともうすぐ新幹線が到着するので入場した。誰もいないホームで駅員さんが息子の相手をしてくれた、ありがたい。
JRの駅員さんはシールをくれたり、優しくしてくれる。駅員さんの小さな優しさの積み重ねの結果、息子もJRの駅員さんが好きだ。
こういう対応ができる人に僕もなりたい。
宿に戻ってバームクーヘンにローソクをさして火をつけた。息子がひとつづつ吹き消す、全部消せると嬉しそうだった。
去年は僕が代理で吹き消していた、来年は一気に吹き消しているかもしれない。小さな小さな成長だけど、何よりもそれが嬉しい。
息子はあと16年9ヶ月で高校を卒業、あと13年9ヶ月で中学校を卒業、あと10年9ヶ月で小学校を卒業、あと4年9ヶ月で保育園を卒園する。
僕はどこまで息子の成長を見ることができるのだろう?なんて考えたりする。
僕は好奇心が強く、知らないことを知りたいという欲求が強い。自分の命が惜しいというよりも、これから息子に起きる出来事を一緒に楽しみたかったり、社会がどう変化して行くか知れないことが残念だ。
でもそれは当たり前のことで、徳川家康だっていまの日本を知れないわけだ。
知らないことを知るというのは生きている人間の特権だ。
いつか息子もこの記事を読むことになると思う。
だから少しだけ息子に宛てたことを書いておきたい。
優くんへ
お誕生日おめでとう、優くんはいま2歳です。
毎日お父さんと遊んでくれて、お父さんは楽しいです。
人間どんな状況でも楽しめます、お父さんは病気だけど人生楽しいよ。
優くんとお母さんにはちょっと申し訳ないけど、お父さんはあの世でも楽しめます。人生を楽しいものにするか、つまらないものにするかは考え方次第です。
楽しい人生の方がいいので、お父さんは楽しい考え方を選びました。
きっと今までもこれからも、お父さんのことを引き合いに出されて、優くんは周りの大人からいい子であることを求められると思います。
でも、いい子になる必要はありません。
“そんなことしたら、お父さんも天国で悲しむぞ。”
きっと自分のやりたいことを始めるときに親戚の人がこう言い出します。
お父さんが天国行ったら縄文人と遊んだり、マンモスとか恐竜とか探して楽しんでいます、悲しむことはありません。
お父さんですらベトナム旅行の前に優くんが悲しむよ、親よりも先に死んでしまうであろうことを親不孝と親戚の人に言われたけど、お父さんは耳を貸していません。
つまらない大人の言うことを聞いていると、優くんもつまらない大人になっちゃうから、つまらない大人の意見には耳を貸さないように。
それよりもお父さんが好きなことをして楽しく生きたように、優くんも好きなことをして楽しく生きてください。
お父さんと優くんは33歳差です、生きていた時代が違います。
優くんは優くんの生きる時代で好きに生きてください。
好きなことを見つけるために生きてください。
お母さんのためになんて考えなくていいです。
自分のためを考えてください、それがお母さんのためになります。
好きなことを見つけるために、漫画をたくさん読んで、映画をたくさん見て、本をたくさん読んで、音楽をたくさん聴いて、ゲームをたくさんやって、インターネットをたくさんして、行きたいところにたくさん行ってください。
創作物や作品に触れてください。
好きなことが見つかったら好きなことについて、たくさん勉強してください。
知らないことを知るというのは楽しいことです、それが好きなことなら最高です。
何歳でこれを読むか分からないけど、何歳になっても覚えておいて欲しい事です。
今日は何をして優くんと遊ぼうか?
縄文人と遊ぶよりも、優くんと遊ぶのがお父さんは一番楽しいです。
また書きます。