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一枚の願い。

ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。”の重版がようやく完成してamazonや書店に流通されはじめた。

ツイッターで反響をチェックしていると、初版分が品薄になってしまい、書店をなんけんもまわったけど見つからなかったという声がいくつかあった。

そうなってくるとamazon頼りになってしまうのだけど、amazonでもずっと在庫が切れていて、中古業者が値段をつり上げて出品している状況が続いていた。1400円の本にだいたい1000円上乗せ、一番高い業者だと送料別で3300円で売っていた。

システムの問題なのか、在庫がないamazonよりも在庫がある中古業者が優先的に表示されてしまうので、間違って高い金額で購入してしまったという声もツイッターで見かけた、本当に申し訳ない。

2刷目が流通したばかりだけど、3刷目の重版が決まった。
3刷目は初版分よりも多い部数を刷るので、品薄はもう回避できると思う。

amazonのカテゴリーでは1位、PHP社内全体では2位、六本木蔦屋では10位に入って王様のブランチにほんの少しだけ放映された。本当にありがたい。

サイン(イラスト)をかく、という慣れない作業にもだんだんと慣れてきて、サクッとイラストを描けるようになってきました。
苦手なものでもやり続けると、できるようになるものです。

ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。”には一枚だけ写真が使われている。
ぼくは写真家だ、初めての書籍、たくさん写真を入れたくなるのが心情だ。

何千枚もある息子の写真の中から、この一枚を選んだのには理由がある。

代官山蔦屋での出版トークイベントでその理由を話そうと思ったら、登壇していただいた鈴木心さんに“答えを言わないで、みんなに考えさせた方がいいよ。”と止められた。

もちろん心さんは一枚の理由を知っている。
“写真家らしい、すごく幡野らしくていい。”と言ってくれた。

7年前に心さんの主催するワークショップにぼくが参加したことで、関係がはじまった。出会いの形で言えば先生と生徒という関係だ。
参加した理由は彼にあこがれて、彼みたいになりたかったからだ。
だから心さんの言葉はとてもうれしかった。

数千枚の中から一枚を選ぶ作業は大変ということは全くなく、撮影したときから一枚にするならこの写真だと決めていた。

息子が2歳の誕生日を迎えた6月、デザイナーの水野学さんからポラロイドカメラをプレゼントしていただいた。“シャッターを押して、すぐに写真が出てくるから子どもには楽しいだろう。”という理由でポラロイドを選んでくださった。

息子のポラロイドカメラでぼくが息子を撮影した、息子が手に持っている箱はポラロイドカメラが入っていたものだ。
うれしそうに何かを言いながら、もう片方の手をあげていた。
水野さんへお礼のメールに添付するためにこの写真を撮影した。
もちろん撮影した経緯と、この一枚を選んだ理由はまた違う。

編集サイドからは20枚ぐらい写真をくださいとお願いされていたため、一枚の写真にするのか複数枚の写真にするのか、じつは最後まで悩んだ。
写真はあるていど適切な枚数を見せた方が伝わりやすい。

本の装丁をしてくださったデザイナーの有山達也さんから、やりたいことをした方がいいよと背中を押してもらったので、一枚でいくことができた。
その一枚を大切に生かすかたちでデザインしてくださったことに、とても感謝している。

一枚の理由はいいかえると、一枚に託した願いだ。

答えをいいたい気持ちもあるけど、誰にも教えずに墓場まで持っていくつもりだ。
妻にも息子にも教えず、ふたりにはなんでぼくがこの写真を選んだのかを想像して、なぞなぞの答えがとけたときのような、そんな楽しさをいつか味わってほしい。

サポートされた資金で新しい経験をして、それをまたみなさまに共有したいと考えています。