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『バケツ』か『バケット』か

今から8年前、2014年に"Ice Bucket Challenge" というチャリティー活動が突然巻き起こったのを覚えていますか?

こちらの動画は、Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグとMicrosoftをつくったビル・ゲイツによる"Ice Bucket Challenge"の様子です。


このチャリティーは、難病である筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の研究を支援するのが目的で、氷の入った水をかぶって動画を投稿し、次にチャレンジする有名人を指名するというものでした。
きょうのnote(投稿)は、そのチャリティーそのものには関係がなくて、"bucket"の読み方の話です。
このチャリティーが行われていた頃は、「アイス・バケット・チャレンジ」と呼んでいたと記憶していました。
ところが、このnoteを書くためにウェブ検索したところ「アイス・バケツ・チャレンジ」との表記がたくさんヒットしました。

さて、「バケット」と「バケツ」はどう違うのでしょうか?

これは、「単語は『ん』で終わる場合などを除き母音で終わる」という日本語の特徴に関係しています。
これに対し、ヨーロッパの多くの言語は、単語の最後が子音で終わります。
幕末から明治にかけて、英語やドイツ語、フランス語、オランダ語などを日本語に取り入れるにあたっては、「単語の最後に現れる母音を伴わない子音」をどう扱うかが難しかっただろうと思います。
そして、"bucket"のように"-t"であれば、「〜ト」とするか、「〜ツ」とするかのどちらかになったのだと思われます。
"-k"であれば、「〜ク」のほかに「〜キ」もあります。
"brake"=「ブレーキ」や"ink"=「インキ」など。
(「インキ」は英語ではなくオランダ語起源との説もありますが、"k"が「キ」になったのは変わらないと思います。)

つまり、「バケット」と「バケツ」は、語尾の子音(t)の表記方法の違いということですね。

Wikipediaで「バケツ」を見ると、以下のようになっています。
<以下引用>
バケツは英語のbucketに由来しており日本語の音に合わせて簡略化されたものである。日本では近代になるまで木製の手桶や水汲み桶が使用されていたが、欧米から金属製のバケツが移入されると次第に普及し明治20年代にはバケツが国産化されるようになった。明治30年代頃までは「バケット」との表記もよくみられた。
<引用終わり>

以前も紹介した福沢諭吉の「和英(日英)対訳集」とも言うべき「増訂華英通語」を見ると、"Bucket"は「ボックケット」と表記され、日本語では「吊桶」(ヲケ)となっています。
「ボックケット」は「ツ」「ツト」が右側に小さく書かれていて、「小さい『ツ』=促音」や「ト」が母音を伴わないことなどを示しているのではないかと思います。



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