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私を抱きしめて

私は長い間、自分の体が好きではなかった。
小さい頃からずっと太っているし、どこもかしこも毛深いのがコンプレックス。
そのせいで揶揄われたり、時には虐められたりもしてきた。

こんな自分が化粧をしたって意味がないし、「デブのくせに」「ブスのくせに」って、まわりも思っているに違いないって思っていた。

服も、太っているから普通の店にはサイズがない。
服なんて、入ればなんでもいい。
おしゃれをしたり、体をケアするなんて自分にそぐわないって本気で思っていた。

結婚して専業主婦になり、夫からたびたび「おまえは無職」とバカにされる中で、こんな自分にお金をかけるのは無駄遣いだ、という気持ちも生まれた。
何をするにしても「まずは痩せれば?」って、他ならぬ自分が、自分の体を馬鹿にしていた。

 

だけど、この4年の間に、色々なことが変わってきた。


4年前、夫からの無職いじめを振り切りたくて、パートに出た。
毎日同じ顔ぶれに接するようになったら、“着たきりスズメ”ではいられないと思うようになった。
肉体労働なので、食事と間食に気をつけるだけで、スルスルと痩せた。
(それでもまだ太っているけれど)

毎日お化粧をするようになり、服を買うのも選ぶのも楽しくなってきた。
更衣室とは言っても人前で着替えるので、思いきってワキ脱毛に通い始めたりもした。


今年に入って、マッチングアプリで男性と会ってセックスをするようになってからは、「きれいになりたい」という気持ちがより強くなった。

長年の悩みだった体毛をなんとかしたくて、VIOを含む全身の美容脱毛に通う契約をした。 

そして毎月、違う男の人に会って、体をすっかり開いて。
すみずみをなぞられ、何も考えられなくなるくらいに気持ちよくしてもらって、乱れて、バラバラにならないように抱きしめてもらう。
私の体は、人から大切にされることを、ずっと求めていた。

家でのお風呂上がりにはコスパの良い化粧水を全身にバシャバシャして、そこから部位ごとに美容液やボディミルクを塗っていく。
脱衣場の鏡に映る自分は、決して美しくはない。
あいかわらず太っているし、皮は余っていて、お世辞にもナイスバディとは言えない。

だけど、全身を手のひらで撫でながらボディミルクを塗ってあげているとき、コンプレックスだらけのこの体を「愛しいな」って、思い始めている。
いつもきれいにして、大事にしてあげたいと思う。
いつか男の人に抱かれなくなっても、私が私を抱きしめてあげる。

そうやって思えるようになった。
私、今、とてもとても幸せだよ。



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