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なぜMoogなのか

実を言うとMoog(モーグ)の音はどちらかというと嫌いな部類の音でした。それは音楽を志した30年前頃からずっとそう。どちらかというとProphetの方がパッド系が得意だしいいなぁと思いますし、当時の自分のメインはFM音源でしたから、全然音色が違う。どうもMoogってもちろん昔から憧れはありましたけど、「ピー」とか「ブー」とか「ザー」とか何だかファミコンの音みたい(すみません悪気はないです)。そんな印象でした。それが2年ほど前に「あえて興味を持てない音のデバイスを買ってみよう」という変なチャレンジ精神で買ってしまったMOTHER-32を触っているうちに「あれ?どうもまんざらでもないかも」という気持ちに段々と変化してきたのです。不思議なものです。かつては全く興味がなかったのに。だって音色の保存も出来ないし、電源入れたらしばらく温めたのちに毎回チューニングしなくてはいけない。しかもMOTHER-32は単音しか出ないんですよ。いやいやいやどう考えても面倒臭い。購入後もしばらくはそう思っていました。それが結局使っているうちに、どうもこれは機械には違いないんだけど思っていた以上に楽器っぽい。と感じるようになってきました。そのうち、いやそもそも音楽(もしくはサウンド)作りってたぶんこういうことだよね。と根本的にワークフローを見つめ直す事にもなりました。

ちなみにご参考までに昨年MOTHER32で即興演奏した映像です↓

そりゃあソフト音源は確かに便利ですよ。音色の保存はすぐに出来るし、プロジェクトごとに細かい設定もバッチリ出来るし、チューニングはいつも安定してます。正直ソフト音源がないと仕事になりません。ただMoogを触っている時に現われるまるで機械と語り合っているようなこの緩やかな気持ちと空気感は一体何なんだろう?と思うようになり、気がつけばいつの間にかその時間が待ち遠しく感じるまでになっていました。ただ今のところMoogを仕事で使うという事は稀です。というか殆ど0です。やはりクライアントワークは時間との勝負も重要なので毎回Moogのツマミを回して作った音を思い出している暇はありません。仮に使うとすればサンプリングして自分でソフト音源化して使います(あ、脱線しますけどMatriarchで作ったKONTAKT用無料音源作ってますのでご興味ある方はDropBoxにあるのでこちらからダウンロードしてください〜)。ですから基本的には自分の作品作りで使っています。納期も特にないのでじっくりとまるで漆塗りのようにDAWに録音しては音色を重ねたりあれこれエフェクトをかけながら、野太いオシレーターから発振されるビープ音の変化に耳を傾ける。そしてツマミを微妙に回しながら自分の頭の中で鳴っている音色にどんどん近づけていく。音楽を作っているのは確かなんですが、もうこれはある種のカウンセリングだなと。もしくはヨガみたいな感覚。心の平静を取り戻すような時間。でもつまりは楽器って本来そういうものですよね、ピアノにしろギターにしろ、もしくは歌うこともそうかもしれない。何か安心するんですよ。音楽を作ることを生業としていると、自分の場合はPCや鍵盤に向かう事は時には何かこう心がギスギスして緊張を生む行為(仕事内容によりますけど)だったりするんですけど、Moogは違う。アレはれっきとした「楽器」です。

という事で、MOTHER-32を購入後はわりとすぐにDFAMを、今年に入ってMatriarch(念願のポリフォニック!4音ですけど笑)を導入するなど、順調に散財しています。今や作品作りは基本Moogだけでやろうかな、と思うほどの気持ちになっているのが自分でも不思議です。というかMoog沼です。それではまた!


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