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Ubie Advent Calendar 3日目:医療系ソフトウェアのデザインに携わる人が読むとよさげな本10選

これは何?

Ubie Advent Calendar 3日目(12/3)のお鉢が回ってきました。
医療系ソフトウェアのデザインに携わる人が読むとよさげな本を、独断と偏見でピックアップして紹介する記事です。
もっとおもろいのがあるぞって人は紹介しておくれ〜!

1冊目:『医師は患者をこう診ている  10分間の診察で医師が考えていること』

キーワード
英国の医療, 総合診療, 医師と患者のコミュニケーション

どんな本か
英国のとあるGP(*1) が、病院のとある午前の診療のエピソードをまとめたもの。

第一章 〇七時三十分 ミスター・W・E(胸の痛み)
第二章 〇七時四十分 ミスター・N・B(直腸出血)
第三章 〇七時五十分 ミズ・A・F(喉の痛み、妊娠能力の質問)
(以下略)

といった具合に、患者1人につき1章分割いている構成で、10分間の診察で起きている静かなドラマが「患者の視点」「医師の視点」それぞれで描かれています。
淡々とした診察の裏で医師がどんなことを考えているか、読みやすい翻訳で書かれていてとても面白いです。

*1 :  General Practitioner、総合診療医の略。英国において、病気になったときにまずかかる家庭医を指す。どこの医療機関を受診してもよい日本と異なり、英国ではまずかかりつけのGPを受診し、そのGPの紹介がないとより大きな病院に受診できない制度となっている。

2冊目:『診断戦略  診断力向上のためのアートとサイエンス』

キーワード
診断推論, 総合診療

どんな本か?
1冊目に紹介した本『医師は患者を〜』は患者ごとのエピソードを下地に書かれていますが、こちらはより実践的な本です。
志水太郎先生という総合診療のスペシャリストが書いた本で、一流の総合診療医が診断にあたってどのようなプロセス・プロトコルで患者を診ているのか垣間見ることができます。
前半の「戦略篇」だけであれば、医学に関する前提知識がなくても読めます。

3冊目:『型が身に付くカルテの書き方』

キーワード
カルテ, 書き方

どんな本か?
医師や看護師は患者さんの診断・治療にまつわることをカルテに書くとき、目的や状況に応じて様々な型を使い分けています。
SOAPなどの基本の型からはじめ、病棟・一般外来・救急外来・集中治療など応用の型までまんべんなく網羅されており、研修医向け(?)のカルテ記載の入門書でありながら、その幅広さを垣間見ることができます。
薄い本で、サクッと読めるという点でもおすすめです。

4冊目: "Modeless and Modal"

キーワード
OOUI, 道具のデザイン

どんな本か?
上野学さんの近著であり、上野さんが10年ほど前に書いたブログ "Modeless and Modal" を収録した電子書籍。
あとがき部分にはこんな一節があります。

「デザインは、サブジェクト(ユーザーの要求)に従うのではなく、オブジェクト(仕事の対象)に従うべきであるということです。使いにくいデザインが出来上がるのは、ユーザーに合わせる努力が不十分であるからではなく、ユーザーに合わせて作るという発想自体にある種の誤謬があるからだという主張です。ユーザーに合わせて作るとは、ユーザーのタスクを先に特定してしまってそこへ誘導することをデザインの要件にすること。その作為が不自由なモードを作り出してしまう。一方よりよいデザインとは、ユーザーのタスクではなくオブジェクトに合わせたもの。オブジェクトへの指向が、モードを取り除く働きを持つのだということ。」
Manabu Ueno. "Modeless and Modal (Japanese Edition)"
’AFTER 10 YEARS’ より引用

これまでの医療系のソフトウェアは、医療機関と開発ベンダーの受発注の関係の中で、ある種ユーザーに合わせてつくることが正しいとされてきた節があります。
一方、医療者が業務系アプリケーションという道具を様々な文脈で自由に使いこなすには、不要なモードを可能な限り取り除くソフトウェア設計が不可欠となります。
ユーザー中心設計の重要性が日本で叫ばれるよりもっと以前から、そのピットフォールを指摘し突破口を示してきた、まさに時の試練に耐えた名著です。めっちゃいいです。

5冊目:『医療におけるヒューマンエラー  第2版: なぜ間違える どう防ぐ』

キーワード
医療安全, ヒューマンエラー, ヒューマンファクター工学

どんな本か?
ヒューマンファクターの専門家が、原子力発電・航空・道路交通など様々な分野の人為的事故を引用しながら、医療におけるエラーとはどんなものがあるか、そもそもなぜヒトはエラーを起こすのか、医療事故を防ぐために何ができるか、などを解説した本です。
面白いのが、エラーを誘発しやすい環境の一つとして、モードの濫用が取り上げられている点です。いまどの操作をしているか、自分自身がわからなくなることを著者はモードコンフュージョンと呼び、こうした紛らわしいデザインが航空機の墜落事故、医療現場のヒヤリハットを引き起こしていると紹介しています(第4章「エラーを誘発しやすい環境」)。
『悲劇的なデザイン』でも同様の事例はありますが、よりヒューマンファクターに寄った本という意味で、実践者にとって少なからず学びあると思います。

6冊目:『内科診断100ケース-臨床推論のスキルを磨く-』

キーワード
症例研究, 臨床推論

どんな本か?
「メジャーな症例で、どんなこと考えて診察してるんですか?」って弊社の医師メンバーに無邪気に相談したときに紹介してもらった本。
医学生とか研修医が読む本らしいので、医学的基礎がないと細かなところまではわからんですが、症例ごとどのあたりを留意して問診や検査の結果を読み解いているか、ざっくり雰囲気は掴めます。

7冊目: "Deep  Medicine: How Artificial Intelligence Can Make Healthcare Human Again"

キーワード
AIとデザイン, Human-Machine Interaction(HMI), Deep Learning

どんな本か?
米国を代表する循環器内科医のEpic Topolが、AIがどのように医師の能力を拡張し、患者体験を変えうるかについて示した近著。
医療分野においてAIに何ができて何ができないのか、一般人向けに書かれた本。
平易ではあるけどある程度背景知識あったほうが読みやすい。

8冊目:『今日から使える医療統計』

キーワード
医療統計

どんな本か?
医療統計の虎の巻らしいです。
医療におけるRCT(ランダム化比較実験。IT業界でいうところのABテスト)や感度・特異度の考え方など、わかりやすく解説してくれてる本です。
あくまで医療統計の本なので、統計はじめましての人はこの前に一冊入門書挟むと理解捗りそう。

9冊目:『医療現場の行動経済学 - すれ違う医者と患者』

キーワード
行動経済学, 医療経済学, 医師と患者のコミュニケーション

どんな本か?
有名な本なので、読んだことある人も多いかと思います。
医療者と患者の間でコミュニケーションがうまくいかないケースを題材に、なぜそんなことが起きるのか、どうすれば解決の方向に向かうのかを、経済学者の大竹文雄先生らが解説した本。
目次を見てみると、患者や医師の意思決定のメカニズムについて

・第4章 どうすればがん治療で適切な意思決定支援ができるのか
・第6章 なぜ子宮頸がんの予防行動が進まないのか
・第11章 なぜ急性期の意思決定は難しいのか
・第12章 なぜ医師の診療パターンに違いがあるのか

といった具合に個別の問いを立てつつ答えていく形式で、面白いです。

10冊目:『未来のモノのデザイン』

Designship 2019の登壇でも触れたD・A・ノーマンの10年前の本。
ヒトと機械の関係性について、いま読んでもとても示唆的な内容が多く、特にAIプロダクトのデザインをする身としては学びが深いです。Google が出公開しているAIプロダクトのデザインの手引書 People + AI Guidebook も、(明示的ではないですが)この本の内容を一部下敷きにしている節があり、一緒に読むとより理解が深まります。

以上!!!良いお年を!!!
引き続きデザイナーも採用しているゾ!!!

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