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バーチャルフードホール

こんにちは、コーイチです。
 今回は、サンフランシスコに拠点を置くフードテック企業で、サンフランシスコのレストランの味を郊外の消費者に届ける、「バーチャルフードホール」や「マイクロ フードホール」などと呼ばれる「Local Kitchens」を見ていき、このような業態が日本でも登場するのか考えたいと思います。

1. Local Kitchensとは

                                                 (出典:Sask Wanderer youtubeより)

 ジョン・ゴールドスミスとアンドリュー・マンデイは、DoorDashで働いていた時に出会いました。
 二人は数年前に会社を辞め、5つのスタートアップを立ち上げるなど、他のことを追求していましたが、食の分野でもっとやるべきことがあることに気付きました。
 彼らのアイデアは、フードホールのように複数のレストランを1つの屋根の下に置き、顧客が同時に複数のレストランに注文できるようにすることでした。
 2020年に同じDoorDashで働いていたエンジニアのジョーダン・ブランブルを加え、「Local Kitchens」を設立しました。

 Twitterのジャック・ドーシーやDoorDashの元上司トニー・シュウなど、著名な投資家を獲得し、複数の地元レストランブランドから注文できる新しいコンセプトのゴーストキッチンとして、最初の店舗をカリフォルニア州ラファイエットにオープンしました。
 当初、ピックアップのみのオペレーションを行っていましたが、すぐに、ダイン・イン*やデリバリー・オプションの需要もあることを知りました。
 *ダイン・イン:イート・インと同じ意味。

 バーチャルフードホールのコンセプトである、1回の注文で複数のレストランの料理を組み合わせて利用できることに惚れ込んだ顧客から、すぐに支持を得ることができました。
 同社は9カ月足らずでサンフランシスコのベイエリア全域にユニットのネットワークを構築し、リーチを広げて新しい顧客とつながろうとする、受賞歴のある地元のレストランパートナーと提携しました。
 また、「Local Kitchens」はDoorDashと提携し、サンフランシスコのベイエリア(クパチーノ、ラファイエット、サン・ノゼ、マウンテン・ビュー、パロ・アルト)で展開をはじめ、カリフォルニア州内に急速に拡大していきました。

 次のステップとして、今年はローズビル、デイビス、サクラメント、南カリフォルニアに拡大し、その後全国展開する予定としています。
 最終的には全米で2,000店舗を展開し、上場して全国的なレストランブランドになりたいと考えているようです。

2.ゴーストキッチンとの違い

                                                           (出典:MealMe youtubeより)

 多くのゴーストキッチンモデルとは異なり、「Local Kitchens」はすべての店舗を独自のスタッフで運営しており、各レストランからトレーニングを受けたスタッフがすべてのメニューを調理しています

 一般的なゴーストキッチンの場合、通常はゴーストキッチンの大家と入居する飲食店が賃貸借契約や施設利用契約を締結します。
 しかし、「Local Kitchens」の場合、「Local Kitchens」と飲食店はライセンス契約を締結し、ライセンス契約に基づき、飲食店は「Local Kitchens」に自らのブランドと料理の「利用許諾」を与え、料理のレシピと調理方法を伝授します。
 さらに「Local Kitchens」の社員に「トレーニング」を施し、自らの品を正しく料理できるよう指導します。
 これに対し、「Local Kitchens」は売上から一定の「ライセンス料」を飲食店へ支払うこととなります。
 これにより、飲食店は1ドルの投資をすることなく、新たな売上を手にすることができるというわけです。

 尚、厨房には複数の品質管理ポイントがあり、基準に従って料理が作られていることを確認しています。
 品質と一貫性は最優先事項であり、「Local Kitchens」はその両面をシームレスに実現していると言います。
 更に、最も人気のある商品を縮小してメニュー化し、デリバリーやテイクアウトに最適化したパッケージングを開発しました。
 このコンセプトは、デリバリーとテイクアウトの両方を提供しています。
 スタッフの数は販売量に応じて変わりますが、「Local Kitchens」では通常、各店舗に約8人のスタッフがおり、それぞれが複数のブランドに対応できるキッチンを割り当てられて働いています。

3."ニューノーマル "で成功できるように

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                   (出典:Local Kitchensより)

 「Local Kitchens」は、地元のレストランオーナーに有効な独自のモデルを開発しました。
 CEO兼共同設立者のジョン・ゴールドスミスは、「Local Kitchensのミッションは、ナショナルブランドだけでなく、ローカルレストランが "ニューノーマル "で成功できるようにすることで、シードラウンドから6ヶ月の間に、十数軒の地元レストランが数百万ドルの売り上げを伸ばし、新しい市場の顧客とつながるのを助けました。」と述べています。

 「Local Kitchens」の各店舗には、地域コミュニティや料理の多様性を反映するようキュレーションされた8~10店舗が出店し、デリバリーに加え、合理的なテイクアウト体験ができる店頭販売も行っています。
 すべての食事は、独自のライセンスモデルによって注文を受けてから調理され、お客様に一貫した高品質の体験を保証する一方、レストランブランドは最小限の資本投資で数週間以内に拡大することができます。
 顧客は LocalKitchens.com を通じてオンラインでテイクアウトやデリバリーを注文することができ、また店舗では注文用キオスクを利用して注文することもできます。

 また、「Local Kitchens」とそのパートナーは、持続可能な調達と地元の学校からの雇用に取り組み、事業を展開する地域社会を支えています。
 各店舗では、すべての食品包装にリサイクル可能な素材とコンポスト*可能な素材を使用し、厳格なコンポストプログラムも採用しています。
*コンポスト:「堆肥(compost)」や「堆肥をつくる容器   (composter)」のこと

 更に「Local Kitchens」の各店は、サンフランシスコから車で1時間くらいの近郊の街で営業しています。
 「Local Kitchens」とライセンス契約を締結している各飲食店は、いずれもサンフランシスコで評判の人気店ばかりで、サンフランシスコという都会の人気店の味を、近郊の街で提供するという戦略を採っているためです。
 日本で例えれば、六本木で評判のメキシコ料理店のブリトーを、近郊の川崎、船橋、大宮などで提供するといったイメージに近く、都会でなければ食べられない味を、近郊のベッドタウンで提供していることとなります。
 これは、「Local Kitchens」のパートナー飲食店にとっても、近郊の街の住民にとってもメリットとなります。
 パートナー飲食店にとっては、「Local Kitchens」の売上が増えれば自らの収入が増え、近郊の街の住民にとっては、わざわざ都会へ出なくても評判店の料理を味わうことが出来るという訳です。

4.最後に

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                                                                        (出典:Local Kitchensより)

  日本では、バーチャルフードコートと呼ぶ「浅草宅配横丁」などがありますが、これらはレストランチェーン会社が様々な業種の宅配専用レストランを組み合わせ、一か所でデリバリー出来るというもので、「Local Kitchens」とは全く違うものとなっています。

 バーチャルフードホールのビジネスモデルは、飲食店経営者、消費者、「Local Kitchens」の、すべてに対してメリットを与え、シンプルでわかりやすいものとなっています。
 特に飲食店経営者にとっては魅力的であり、唯一の懸念点は、秘伝のレシピの公開くらいでしょうか。

 コロナ禍が続く中、厳しい状況が続いている飲食業界では、このようなゴーストレストラン+デリバリー+ライセンスのようなプラットフォーム型モデルは参考になるのかと思います。
 現時点では、「Local Kitchens」の日本進出予定はありませんが、DoorDashは既に進出してきており、繋がりのある「Local Kitchens」が近い将来に進出してくることも考えられます。

 都会近郊で、都心に出なくても名店の美味しいものが食べられる、様々な名店の食事を少しづつ一度に食べられる、日本でもこのような業態が出来てくることを楽しみにしています。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。          
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