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感想:赤と白とロイヤルブルー(Amazon Prime)



見どころ

 アメリカ合衆国初の女性大統領の息子(ファースト・サン)と英国第二王子の恋物語。

 ご覧の通り、アメリカ大統領の息子は、メキシコ系移民を父に持つので、黒い髪と瞳、浅黒い肌のラテン系でとってもセクシー。対する英国王子はブロンドに碧眼と、ノーブルなハンサム。イケメン同士のイチャイチャ尊い。眼福な映画でした。

単なるBL実写化だと思ったら勿体ない。真の見どころ(私見)

 冒頭述べたように、本作中のアメリカ大統領は女性です。しかも移民の夫を持つ。この辺の描写がサラッと出てくるのが、アメリカのポリティカルコレクトネスを体現しています。息子であるアレックスは複数人種をルーツに持ち、テキサス州の決して裕福とは言いがたい家庭で生まれ育ちます。まさにアメリカの息子。
 両親の背中を見て育った彼は、将来自分も政治家になりたいと考え、志を持って、母のスタッフとも丁々発止のやり取りを繰り返しながら積極的に政治に関与していきます。政治に夢や希望を抱き、良きものとして描くところが非常にアメリカらしく、明るく前向きです。

 これに対し、英国王子ヘンリーは、生まれた時から様々なしがらみに縛られ、自分自身の人生など無いのだと半ば諦めています。ゲイであると自覚しているものの、それを知っている祖父母からは「認められない」と、隠すよう言われています。適当な頻度で適当な相手とデートして写真を撮らせ、世間の目を欺くような生活を過ごしています。

 忙しく、ちょっと移動するとなるとセキュリティサービスやら侍従やらがくっ付いてくる二人ですので、当初仲を深めるのは今どきらしくSNSです。時折電話も。当初つんけんしている二人も、ユーモアセンスや、公人として課された責任・義務を果たせるかどうか不安になったり自信がなくなったりすることも。そんなナイーブな内面も含めて互いに理解し合える大切な友人として、そして、互いのセクシュアリティも次第に明らかにされ、二人は恋に落ちていきます。

 二人の喧嘩・恋愛は、両国の外交・政治問題に発展し、まさに再選を目指して大統領選を戦っているアレックスの母の支持率にも影響してきます。厳しいセキュリティサービスとうまく折り合いを付けつつ、マスコミの目を避けつつ、束の間の逢瀬を楽しむ二人の若者らしい歓喜の表情がとても可愛い。

 映画全体では、不安や苛立ち、切なさ、諦観、等、複雑な感情を表現されるシーンが多いです。特に、やはり王子として長い王室の歴史を背負っているヘンリーが困惑してアレックスを突き放す、二人ともお互い好きなのに、互いの気持ちだけで愛する人を公然と抱き締めることができなくてもどかしいというあたり、リアリティがあってよかったです。

私が気に入ったシーン(細かいのも)

  • 年越しパーティーに来て、最初は楽しそうかと思いきや、バカ騒ぎしている一同をよそにいつの間にか一人雪の中に佇むヘンリー。「誰でもない誰かになりたい。作家になってパリに住みたい」と呟き、追いかけて行ったアレックスを悲しげに見つめる。「好きな人とデートなんかできないんだ」と拗ね、「王子様とデートしたがらないコなんていないだろ?」とボケをかますニブチンアレックスに熱いキスをする。アレックスもキスされて満更でもない。っていうか、むしろもっとしたいと思ってる自分に混乱する。周りの女性からは「アンタ昔からヘンリーのこと意識しまくってたじゃん」とツッコまれる。(ラブストーリーとしてはこの辺から盛り上がります)

  • ヘンリーが「僕の一部を持っていて」と、肌身離さず付けていた指輪(たぶん何か謂れのある大事なもののはず)をアレックスに渡すと、アレックスからも「僕の原点」と言っていた実家の鍵を下げたネックレスを渡し、互いに大切なものを交換し合うシーン。やだ~泣けるわぁ……。

  • 「王室は服装に主義主張を持たせない」と言っていたヘンリーが、パーティに華やかなネクタイをして来たり、選挙戦の山場・テキサス州の趨勢を見極める現大統領陣営を激励に訪れる際は「『テキサスの黄色い薔薇』にちなんで、薔薇模様の黄色いネクタイをして来たよ」とニコニコするところ。可愛いな! しかも「テキサスの黄色い薔薇」には「もう一度会えたら彼女を(彼を)永遠に離さない」みたいな歌詞あるらしいんですよ。やだ~ヘンリーったら!

  • 恋愛以外では、大統領のスタッフ・ザハラができる女で、アレックスやヘンリーを尻の青い若造扱いでビシッと叱りつけるところが痛快。ファーストサンだから、王子だからって変に遠慮しないところが良い。

  • アレックスが自分で考えたテキサス攻略プランを母に認めさせ、自らテキサスに飛んでキャンペーンに励むシーン。アメリカ映画・ドラマには、選挙ボランティアする学生がよく出てきます。この俳優さんのイキイキした演技が上手いの!(演出もいいのかな)

 というわけで、本作は「BL映画」というより、セクシュアリティや自分の役割に悩む若者たちが愛を貫こうと周りから認められていくという爽やかな物語だと私は感じました。

 こういう明るい映画・作品を作らせるとアメリカ人ってうまいんだよな~……。とは言え、一昔前のセクシャルマイノリティを扱った映画と言えばシリアスで重たいものが多かったことを考えると、隔世の感があります。(ミルクとか、ブロークバックマウンテンとか)

※現在、日本では視聴できない模様…。DVDとかはあるはず

※Amazon Primeにもあります

もっと本作を楽しむには

 個人的には、州ごとに選挙人を選んで~的なアメリカ大統領の選挙制度や、ここ数回の大統領選をある程度知っていたら、さらに面白くなると思います。

アメリカの政治を扱うおススメエンタメ作品

 政治を良きものとして取り上げたハートウォーミングで良質な映画・ドラマ、アメリカには多いんですよね。こういうの日本ではどれくらいあるんだろうか。日本にもこういうエンタメがもっとあってもいいと思うのですが。

 例えば「ザ・ホワイトハウス」(原題:West Wing)
 ウェストウィング(西棟?)というのは、大統領官邸の表に出ない側つまり『裏側』を示す用語です。民主党の大統領・バートレットを中心に(※実は大統領本人よりも周囲のスタッフのほうが出番が多いのが本作品の面白み)大統領本人より高い支持率を得ているファーストレディ(医学博士)、野党や超党派を含めて立案した政策を議会通すために陰に日向に活躍するスタッフたち。
 お仕事ドラマとして超一級品だと思います。エミー賞の歴史を変えるほど多数の賞を獲得し、高く評価されたそうです。(ただ、アーロン・ソーキンが降板し、首席補佐官役を務めた重鎮の俳優さんが亡くなって、シーズン5以降は次第に面白くなくなった)

ラブも絡んだストーリーだと「デーヴ」
 職業あっせん所を経営しているバツイチのデーヴは、時の大統領のそっくりさん。本物の大統領が病気になり、誰にも(ファーストレディにも!)知られないよう内緒で影武者を務めてくれないかと頼まれる。
 最初は戸惑うものの、朗らかで温かみのある人柄のデーヴは、居丈高だった本物の大統領よりも人気者になっていく。そして自分自身の意思や良心に基づき、使命感に目覚めていきます。人は『大統領だから』ついていくのではなく、その人にほれ込んだからこそ着いて行くのだという理想を見せてくれるラストシーンでは、爽やかな感動の涙間違いなしの名作です。

本記事のヘッダ画像はシネマカフェ様よりお借りしました。


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