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WSET Diploma合格しました〜体験記①〜

はじめに

ご無沙汰しております。こちらに記事を書くのはとても久しぶりです。色々と一段落ついたのでまた更新していこうかと思っています。

2020年10月にスタートし2021年4月に受験したWSET Level3に始まったWSET受験ですが先日WSET Diplomaの6つの試験を全て合格したため修了となりました。
2022年1月9日にオンラインコースがスタートし2023年1月18日の試験で合格したため、ほぼ1年での合格になります。
WSET Diplomaを受験するにあたってただ受験するだけではダメだと思い、最高成績か最短記録での合格を目指しておりましたが、無事に達成することができました!!やったね!!

WSET Diplomaというのはイギリスに本部をもつワインの世界最高教育機関であるWSETにおける最高位の資格になります。現在日本での取得者は110人程度でしょうか。
多くの受験者が2年以上かけて受験する資格になります。またドロップアウトしている方も相当数いると聞きます。


この資格を得るとMaster of Wineの入学試験を受ける権利が得られます。
Master of Wineは現在世界に400人ほど、日本にはまだ1人しかいない間違いなくワイン界全体で最高位の資格となります。
将来的にはこのMaster of Wineを取得することが夢です。

さて、どうも合格通知が来てからどうもダラダラと勉強してしまい無駄な時間を多く過ごしているので一度振り返りをしようと思います。

D1試験受験まで

【勉強に使用したもの】
iPad Pro, iPad mini, Apple Pencil, D1 textbook

1月にオンラインコースがスタートです。
最初は3月末のD1試験とチュートリアルが目標です。この時点で僕の失敗は試験の2週間前から1週間ほど九州旅行を入れていたことでしょうか。なんとも愚かしい受験生です。
というわけで3月頭までにはほぼ完璧にすることを目標に勉強に取り組みます。

D1試験は栽培と醸造についての試験となります。のちに続くすべての試験の基礎と言える内容です。
WSET Level3でやった内容をひたすら深掘りです。主に健康で成熟したブドウを得るために何を行うか、醸造ではなぜこの手法を行うのか、最終的に出来上がるワインのスタイルはどうなるのか、などについて考えていきます。

ワインを消費者として楽しんでいくと、どうしてもファインワインが全てでファインワインを作るためにどうするのかを考えがちですが、この勉強をしていると安い大量生産のワインとそのコストについても考える機会も多いため、世の中のワインプロダクト全体を公平に見ることができるようになったように思います。

試験勉強自体はトータルで220時間していたようです。
僕の場合はノートをまとめてもあとで絶対見ないのと教科書に書いてあることは全て必要なことだから自作のノートを作って抜けがあっても仕方ないので勉強の仕方としては教科書を読むだけです。
たまに単語を覚えるために書いたりはします。最初は楽しいなあと思って読んでいたD1ですが途中から覚えられてないことに気づき焦ります。しかし1ヶ月経った頃から常に「なぜ」と一連の流れを意識しつつ勉強をすることにより段々と点で覚えている記憶がより確かなものになりました。
3月頭には答案を書くことも十分可能になってきていたため旅行の時点ではもう合格は確実にできるだろうというところまではきていたと思います。

試験勉強でとにかく大切なことは栽培も醸造もFinal Wineをイメージしてそれぞれどのような手段を取るのかを考え続けることです。また、その流れの中で関与してくるものがどのプロセスで関与してくるのかを考えることが大切です。
多くの人が手法だけを覚えてそれがいつ使用されるのかを理解していないことがありました。

その他大切なことは細かい暗記を諦めないことです。
例えば病害や台木、清澄剤などは丸暗記ものになりますが、細かくて覚えきれないからと大雑把に結論だけを覚えてしまっている受験生も多いように感じます。しかし、D1試験はとにかく教科書に書いてあることはすべてしっかりと書かないと満点にはなりません。つまり、暗記じゃないと答えられないもののを諦めたらその時点でほぼ合格は難しいと思います。またD1試験を乗り越えたところでその後の試験はD1試験の知識をベースにそれぞれの各論を考えていかなければいけないのでその後の試験に合格することは厳しいでしょう。

冒頭に書いたように九州旅行を入れるというナメプ(もちろんナメてません。)を行ってしまった僕はそんな状況でも勉強時間を捻出できるようにiPad miniを購入しました。
iPad Proで勉強をしていますが、長距離移動中に片手で持てないのは疲れるので電気屋に寄った際に思いつきで買いました。
これのおかげで飛行機移動が多い中常に教科書を読み勉強を継続することができました。旅行期間中は移動時間中しか勉強していませんが、毎日欠かさず勉強を少しでもすることで定着していたものを失わずにすみました。
またこの時点である程度完成させていたため、教科書を読む際も1つのワードからどのようなことが連想できるかを頭の中でひたすらアウトプットすることができたのも大きいかと思います。

このiPad 2台持ちですが、この後の受験期間中でも素晴らしい役目を果たしてくれています。軽い20−30分程度の移動中にも教科書がスマホよりも楽に読めるし、iPad Proを全面ノートにして、iPad miniを教科書と翻訳用にすることでとても快適に答案を書く練習をしたり、答え合わせをしたりできます。

個人的感想ですが、Diploma CandidateはiPadは必携レベルかと思います。
基本的にすべてのテキストはPDFで配布されるのでよほど紙での勉強にこだわりがない限りはiPad使用が安定だと思います。D2-5の試験を勉強する際に他のテキストを見る必要があったりもするためすべてのテキストがiPadに入っているのはとてもありがたいです。

さて結果です。

D1試験は完璧で受験前はDistinctionのつもりでしたが、実際はPass...
前日にさらっと見て「ここはそんな大して問われないしいいや」と思ったところがドンピシャで30%くらいの配点で出題されました。
ざっくりしか覚えていなかった上にverbの意味がよくわからなかった僕は試験最初に絶望したため残り70%分でなんとか55%をもぎ取る戦法に変え、なんとか試験時間内に書き切ることはできました。
終了した時の手応えとしては55−65%(おそらく62%)。実際も62%でした。
最後の最後で暗記を怠ったせいでかなり苦しい思いをしました。
なのでどれだけ細かくて大変だと思ってもしっかり暗記はしましょう。
正直、試験直前までしっかり勉強していれば流れの中で答える問題で不安なものはないはずです。

D2,4,5試験同時受験まで

【勉強に使用したもの】
iPad Pro, iPad mini, Apple Pencil, D2 textbook, D4 textbook , D5 textbook, Webでいくつかビジネスに関する参考資料(主にThree-tire-systemとMonopoly Marketについて)

D1試験を受験し終わった僕は落ちていることはないと確信したためD2,4,5試験を同時に受けようと申し込みました。この時の誤算は試験日である2022年6月7日まで勉強開始の4月1日から3ヶ月弱あると思っていたら67日しかなかったことです。どうやら算数の能力も落ちていたようですね笑

勉強の仕方としては
落ちる可能性が限りなく低いD5→恐らく通るであろうD4→みんな苦戦してるから厳しそうなD2
の順に勉強を行いました。
もちろん3つとも通すつもりで勉強はしていましたが、共倒れは避けたかったため保険はかけています。
1週間くらいでD5を読み終わり、次の週から12日ほどかけてD4を読み進めながらD5の復習を、そのあとで2週間ほど片手間にD2を読み進めながらD4,5の復習をといった形で勉強していました。

残り2週間に差し迫ったところで決断を強いられます。
(D2試験に残りの時間を集中しないとD2試験は合格できなそうだ...)
というのも最終的にはD2 70時間、D4 80時間、D5 70時間という配分で試験を受けることになったのですが、それぞれの全体から見た配点はD2 10%、D4 5%、D5 5%の配点です。これは目標勉強時間の割合にも直結してきますので本来220時間を振り分けるとしたらD2 110時間、D4 65時間、D5 45時間が理想です。D4とD5に関しては教科書の分量が120ページほどと70ページほどであることとD4の方が出題される国が多いことに起因します。
ただし、上記の理想配分では全て落とす可能性の方が高かったと思います。単純にこの3つを受験するにあたって220時間は少なすぎました。実際は記録できてない部分や帰り道歩きながらの思い出し勉強などもあるためもう少しやっているかとは思います。

D2試験についてはこの時点では全く勉強が足りなかったので後述のD2再試験で触れたいと思います。

D4試験はなかなか鬼門でした。とにかく産地が多いです。
基本的には大雑把にpremium産地とinexpensive high volume産地に分かれ、特殊なスパークリングワインについてはより注意して覚えていくというような形になるかとは思います。
品種の知識について問われることもありますし、地形気候などについて問われることもありますし、ワインメイキングについて問われることもあります。つまり全部ですね。

簡単なポイントをいくつか...

-cool climateで酸が高いpotential alcoholが低いブドウが取れる地域なのかmoderate~warm climateだけどcooling effectが大きく上記のようなブドウが取れるのか。
-Lees agingの期間は果実の風味の度合いに相関する。
-MLFの有無は基本的に気候と相関する。
-病害リスクとかまで全て覚えておいた方がいい品種はChardonnay, Pinot Noir, Sauvignon Blanc, Glera, Lambrusco, Shiraz
-原産地呼称に定められている地域は収量制限まで覚える。
-アメリカのスパークリングワイン産地は全て地形的要因まで完璧にしておく。
-ほとんどの新世界はhigh volume inexpensiveである。

D5試験はLevel3の時に酒精強化を完璧に覚えていればあとは製法によるワインの影響について深掘りしたり、その地域の土壌の違い、法律に関する問題を覚えていくだけなので簡単かと思います。
マデイラとVDNはD5から増えたので重点的にやりました。基本的に全範囲から出ます。
たった70ページなので集中すればすぐに終わります。法律的な問題も出そうですが、まずは栽培醸造についてをしっかり抑えた方が当日答えられる可能性は高い気がします。

テイスティング試験についてはほとんど勉強しませんでした。
スパークリングワインはacceptable~good qualityのChampagneなんかは注意が必要かもしれません。
酒精強化ワインは基本的に大きな団体が関わっていることが多いため、あまり酸度やアルコール度数、残糖度に生産者ごとの変化が少なく、それぞれが基本的にどの程度のアルコールなのかとかを覚えていくのがいいと思います。

さてその結果は?

D2試験Fail Unclassfied!
D4試験TastingのおかげでPass!
D5試験Pass with Merit!

D2試験は60分で行わねばいけません。それをナメていました。60分で4問中3問しかほとんど書けず、しかも時間がないことにかなり焦ってしまったため何を書いたかさえ怪しかったです。
何より栽培醸造やワインの各論と違い、全く別ベクトルであるワインビジネスの総論なので今までの補助知識で戦うことも難しかったため、試験の途中でやや諦めモードでした。
終わった頃には「うん、とりあえず他2つをしっかり通そう。D2試験なんてなかったんや。」と言い聞かせながらお昼ご飯を食べてました。
もう脳内は「今日はこれから試験だったよね。」って感じです。

D4試験とD5試験はテイスティング試験とセオリー試験を同時に90分で受けます。日本人はテイスティングを30分で終わらせてセオリーを60分でやる戦法を取る人が多いと聞いていたためそのつもりで勉強していました。

これ、やめた方がいいです!

海外の受験生の話を聞くとそれぞれを45分45分で受けるつもりでやるようでした。
これ、冷静に考えたら当然なんですよね。テイスティング試験とセオリー試験それぞれで合格ではなく、どちらもFailまでであれば合算でPassを超えていたら合格なんです。
実際に僕もテイスティング試験のおかげでどちらもトータルのrateが上がっています。
また僕の身近な受験生の方でもD4でセオリーFailをTastingでカバーして合格していました。

またテイスティング試験も受験の時によってmark数が異なります。ただテイスティングコメント3つだけで30分でいいやと思っていると痛い目に遭います。僕の時はテイスティング問題のmark数がそもそも10以上多く考えさせられる問題であったためテイスティング30分の予定が余裕で45分かかってます。
そのためセオリー試験を45分でやらなければいけなくなったため、とにかく限りなくPassに近づけることしか考えられませんでした。

振り返ってみて思ったこと

海外の人を参考にする

まず僕の意見ですが、普段から海外の人と同じ意識で勉強しておいた方がいいです。
日本人はどうしても英語に苦手意識があるのとテイスティング試験は簡単だと思って挑んでいる人が多いように感じますが、優秀な成績を収めてる人は身の回りでもごく一部なのでどちらも同じ意識で挑んだ方がいいと思いました。

同様に僕自身も日本人ですが、できるだけ日本人受験生の意見よりネイティブの人の答案の作り方や問題への挑み方を参考にした方がいいなと思いました。話してみるとそもそもの考え方が違うこともあったり答案にどのようにアプローチするかなども参考になることが多かったです。
逆に日本人受験生は暗記項目などをいかに妥協するかに振り切ってしまっている方も多く、意見を鵜呑みにしてしまうと一生合格点に辿り着けない可能性もあると感じました。
Group Studyもピンキリです。
WSETの認知度が上がりDiploma Candidateが増えたことは喜ばしいことですが、反面、軽いノリで受けている人もかなり増え、勉強開始時点から他人に過去問を求めたり何からやるべきかを質問したりしている人も多いと聞きます。そういう人達が多いGroupだと情報共有も少なくなりますし、周りのモチベーションにも悪影響を与えます。
ともに勉強する仲間についてはある程度絞り込んだ方がいいと思います。
自発的に勉強をできて諦めず継続できる人と一緒に勉強できれば効果は数倍に上がります。

3つ同時受験について

余談ですが、3つ同時受験はワインビジネスによほどの自信がある人、英語のライティングスピードに不安のない人以外はやめた方がいいと思います。
まずD1試験は全ての試験で1番簡単です。同じノリで受けない方が懸命です。
そしてD4,5に対して圧倒的にD2試験の分量が多いです。またD2の勉強は他の分野に必要なので最初に単独でしっかりと勉強した方がいいと思います。
また僕は「3つ同時受験に失敗したら無価値。」と自分をかなり追い込んでいたため、試験後1ヶ月ほど軽く鬱になりました。元々退路を経たないと100%の力が発揮できないためこのようなことを行いましたが、精神衛生上良くないです本当に。
受験費用も高いですし、早くに合格することよりも正しく理解することが大切なので無茶な受験はしない方がいいと思います。僕が言えることではないですが笑

ここまで書いたところでかなり長くなってきたので続きはまた次の記事で書こうかと思います。
実際受験した時の気持ち、その後の振り返りなのでこれから受験される方の参考になれば幸いです。

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