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【MEMEME×SNOW SHOVELING対談】 〜継続は力なりか〜

東京・駒沢にあるブックストア兼ギャラリーSNOW SHOVELINGの店主”中村さん”と、京都・神宮丸太町にあるコーヒーショップMEMEME COFFEEの店主”晴(はれる)さん”によるインスタライブ「継続は力なりか」の対談より—————

なにかと有目的的な発言や行動が求められる現代社会。
私も就職活動では、自分の心にある形を成していないモヤモヤを無理をしてでも形に、声にすることを求められました。

もちろん形になることで自分を相手に伝えたり、自分の思考が整理されたりするが、相手に伝わったのは心の中にあったモヤモヤの表層部分だけ、というか、複雑性をそぎ落としてこれまでの概念に近づけて出したものであるから、何か自分としては重要な部分がそぎ落とされたようにも感じました。

「言葉にできないようなモヤモヤにこそ価値はある。」

結果よりも過程を大事にされているであろう中村さんと晴さんお二人の対談を勝手にまとめています。今回も目から、いや脳から鱗です。どうぞ。
(2021年11月7日配信)

メインターゲットより、めっけもんが彩る人生

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視聴者:よっぽど強い意志や好きな事じゃないと続けるのってすごく難しくないですか?

(機器エラーにより前略、ここからの開始)

中村さん:今を生きることは大切って話をしていた一方で、今を生きることは大切なんだけど、僕らみたいにある程度年齢を重ねてくると「人生に無駄なことは何もない」って気付き始めるじゃない。

否定したくなる人もいると思うんだけど、本当に人生に無駄なことないんだよ。あるいは、無駄な事しかないんだよ。

本人がどう取るかってだけで、どっちも僕は正しいと思っている。

人生って無駄なことってないなって経験を大人になればいくつかしてきて、

これもある程度の年齢に達したら気付くことなんだけど、何かを狙い撃ちしている状態の危うさっていうのも僕らは学ぶ必要があるというか。

○○になるためにこれをしているっていう、”盲目的”な、ある一つの事象に猪突猛進している状態は褒められることかもしれないけれど、一方ではもったいないことかもしれないというか。

晴さん:でもそれってその人が心から良いとか、やりたいと思っていることならいいんじゃない?

中村さん:うん。それはその人にしか決められないし、その人が決断しても思い通りにならないものだと思う。

ただ、僕なんかが「面白い人生だな」って思うような人たちは、過程でガラクタとかをちゃんと集めてきている人なんだよね。過程で目に付いて拾った石ころとかを大事にしてきている。

晴さん:それは、一見他人にはガラクタに見えるけど、本人にとっては価値のあるものを大事にするってこと?

中村さん:そうそう。それが目的ではなかったけど目標に向かうまでの副産物として得た、人には測れない固有の財産になるってこと。

メインターゲットではなくて、めっけもんが人生の宝物になったりするんだよ。

晴さん:そういった副産物が、自分の人生を彩らせることもあるよね。だからこそ、そういう副産物を手に入れるためにも真剣になった方がいいと思うんだよね。

損得ゲームを抜け、絶対的世界に身を置く

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視聴者:一見他人には無駄なように思えることが無駄ではなく、副産物として面白い人生になるには何が必要ですか?姿勢とか目標設定とか。

中村さん:損得を捨てることだね。

晴さん:(拍手をした後)いい答えが出たね。
難しいけど、本当にその通りなんだよ。俺も最近同じようなことを思っていた。

世の中に損得で動いちゃう人が多い。俺も損得で動いてしまうこともあるんだけど、そういう人がまず気付かなければいけないのは、自分が損得をしているということ。

そして、得したとか損したとかに一喜一憂する損得ゲームから抜け出した方がいい。損得をしていても好きな事は見つからない。

なぜならその状態は、見えないものや可能性のあるものに対して怖くて投資ができなくなっている状態で、(未知なものに対する)回収がない。最終的に損得をする人は何か大きなものから搾取されるだけになってしまう。

とにかく、自分が損得をしてしまっていることに気付き、その損得ゲームから抜ける努力をしてほしい。心が動いたものに投資する、素直に反応する。それを続けることが継続に繋がるという話にもつながってくる。

中村さん:今の話に少し補足をすると、損得のゲームの勝者って資本の大きいやつなの。ここでの資本とは、単純にお金だけじゃなくてもっと抽象的なものも含めてね。

損得ゲームの勝者は、損得が好きな人たちなんだよね。資本の量や数で自分たちの価値を高めようとしている人たち。僕はその人たちの人生を否定する気はないんだが、明らかにその世界は地獄だと思っている。

どういうことかというと、損得とは相対的なもので、相手を必ず必要とする。その相手と自分を相対することで損得が生まれるんだけど、物事を比べて判断する相対の世界から、絶対の世界に身を置けば損得のバランスはなくなっていく

自分の中に絶対的な価値や評価があると、今風に言うとそれは「サーキュラーエコノミー」になる。循環型のシステムで、車に例えると自分で走りながらガソリンを補給できている状態。

晴さん:いや~多くの人に聞いてほしいな。

損得は強敵だから、損得をしているという自覚を持ってほしいよね。損得が続いている状態を当たり前に思うようになってしまったら、損得ゲームの気持ち悪さにも気づけなくなるから。

「何か悪いの?みんなやってるじゃん」みたいな。

中村さん:そう。

「みんなやっているけど、キミはどうなの?」ってツッコミを本来は自分で入れないといけない。

晴さん:素晴らしい。わかりやすく説明してくれた。

自分の人生を歩む=物事を自分事として捉える

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視聴者:(お仕事が教師の視聴者)最近、学生の思考力をどう鍛えればいいかって考える時に、自分の学生時代の経験を思い出します。ゼミで発表を求められてもなかなかコメントもできず、なんで先輩や教授はすぐにコメントできるんだろうと、すごく悔しかったのですが、でも気づいたら、自分もうまくコメントできるようになりました。多分ずっと鍛えられ続けたから、できなかったことができるようになったと思いますが、このプロセスを学生に伝えるのは難しいと感じています。「継続を力にする」ための方法論って、一体何なんでしょうか?

中村さん:僕が思う方法論って、「一刻も早く自分になる」ということだと思うんだよね。

人は他人の人生に憧れたりするんだけれど、最終的にみんなが落ち着くのは自分になろうとすることだと思うんですよ。

答えを教えることはあまり好きではないんだが、若者に言えることは「一刻も早く自分の人生を獲得し、自分の人生を歩く」こと。そうやって自分になれば、コメントできちゃう。

なぜ人は求められたときにコメントできないかというと、大体は当事者意識がないからなんだよね。あとはそのサブジェクトに対して自信がなかったり、情報量が少ないと思ったり。

でも自分のことを十全に知っていたら、例え事前の情報が少なくてもそれはコメントにネガティブにならない。情報がなくても知恵は絞れる。

でも一方で、損得感情だったり、他人に何を言われるか・思われるかを気にするから知に頼ってしまう。でも人間は知恵があるから知がなくても本来はコメントできる。

要は当事者意識がないから=自分に関係のない話題だと思っているから話せない。

だから一刻も早く自分の人生を歩めばあなたはどんな意見も答えられますよ。

晴さん:自分の人生を歩めば、あらゆることに当事者意識を持てますよってことで、結局自分の意見を言えるようになりますよってことだよね。

中村さん:そう。だから自分の意見を言うためには自分の人生を生きなければいけない。自分の人生を生きれば、すべてが利害関係になるから。

晴さん:じゃあ先生の立場だったら、生徒に説得するアプローチはどんなのがあるかな。

中村さん:人間って自分が好きな事なら話せるじゃない?楽しいから。例えば、乃木坂のこととか、ゲームのこととか。

でもその話題しか話せないと思っているのは、その人自身なの。
得意な話題は●●で、苦手な話題は○○でってその人が決めつけているだけ。

みんな得意な話ならできる。盛ろうとしなければ自然に話せる。でも他人にいいと思ってもらいたいと思う損得心が生まれて話せなくなる。

発言の場でその人が価値があるとされるものは、黙っていることではなくて、意見を発することなんだよね。その人がどういう表情でどんな声でどんなことを話すのかということに価値があって、その人が何を知っているかやどういう本を読んでいるのかっていうものよりも価値がある。

だから僕が教師の立場だったら、恐れを無くして、思ったことを話しなさいと言うかな。

例えどれだけ的が外れていても、間違っていてもいいんだと。それがあなたのオリジナリティだから。

だからコメントに求めることは、あなたの知っていることではなくて、あなたの思っていることを話しなさいってことだと思う。

日本では「食えるかどうかがプロか否かの基準」といったことがよく語られますが、そのことと作品の評価はまったく別問題だと思います。「継続は力なり」と盲目的に「続けること」に必死になるよりは、自分にとって日々無理なく「続いていってしまう」ことは何だろうと素直に考えることの中に、その人自身の「美術」が隠れているように思います。
(現代美術家 大竹伸朗)



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