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空港で本を買う

心配性の私は、いつも集合時間より早く到着するようにしている。ゴールデンウィーク初日の今日、北海道に向かう私はフライト時刻の3時間前には空港に着いていた。

早く着くのは焦らなくて済むからで、特にやることはない。空港内のローソンで何でもないカフェラテとロールケーキを買い、広いロビーにポツンと置いてある椅子に座って人々の往来をぼんやりと眺める。この何にも追われない時間が私を安心させてくれる。

ロールケーキを食べ終えた私はふらふらと空港内を歩く。すると、本屋をみつけたので入ってみる。本棚に並ぶものは、いわゆる街中で並ぶものと何ら変わりはない。到着までの時間を考えると5時間。ふだんはネットで中古本を買う一択の私だが、せっかくなので本を買ってみる。

手に取ったのは、吉田修一の「パーク・ライフ」。選定理由は、知らない人が書いていて、薄かったから。(買ってから気づいたのだが、芥川賞受賞作品らしい)。

到着までにこの本を読んでみよう。一体どんな内容なのだろう。たとえ面白くても、あまりハマらなかったとしても良い。なぜなら、この本を選んだことが私の人生の一部であるから。

最初のページをめくる。物語はこの節から始まった。

「日比谷交差点の地下には、三つの路線が走っている。
この辺り一帯を、たとえば有楽町マリオンビルを誕生日ケーキの髪飾りに譬え、上空から鋭いナイフで真っ二つに切ったとすると、スポンジ部分には地下鉄の駅や通路がまるで蟻の巣のように張り巡らされているに違いない。地上のデコレーションが派手でも、中身がすかすかのケーキなど、あまりありがたいものではない。」

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