【After story】だんちゃん、交通事故に遭った。


3週間閉ざされていた重い扉が開かれて。
外の空気は思ったよりも冷たくて。
病棟の部屋の中ではマスクをしなくてもよかったのに、外に出たらずーっとマスクを着けていなければならないのがなんだか不思議で。

帰りは迎えに来てくれた母とともにタクシーに乗りました。
もともと入院の荷物も大きかったし、病院を出る直前にとんでもない荷物を渡されたんですよ。
栄養剤の300kcalのジュース250mL缶を24缶、毎食飲んで8日分、を一気に渡されたんです。これだけで6kgオーバー。
強烈な重しです。顎間固定でしばらく固形物が食べられない証左としても重い。
まだまだ続くよ治療生活。


それでも、顎が固定されながらいつもの日常が戻ってきます。
家に帰ってからどうしてもやりたいと3週間待ちわびたこと、まず最初にかなえたのは筋トレでした。
痩せきって細くなった腕で腕立て伏せすると、筋肉が痛んで、血がたくさん流れて、生きている感覚が体に漲ってきます。
そして、傷んだ筋肉が欲してくるプロテインを飲むのが美味しくて美味しくて。
実は病院食以外で初めてとったエネルギーがプロテインだったりします。
だんちゃん、交通事故に遭う。とかいうシリーズのDay 17に書いてあったあれね、あのとき注文してたやつね。
筋トレからのプロテイン、この黄金のルーティンに日常の幸せを感じます。


そして、家で食べるごはんを買い出しにドラッグストアへ。
相変わらずペースト状、液状のものを探すんですが、、これが意外と種類があるんですね。
アイソカルのきょうだいもたくさん。メイバランスなるものもあるんだね。
それから、ペースト飯もかなりの種類があります。
分類として、咀嚼難易度で分かれています。噛まなくてよい、舌でつぶせる、歯茎でつぶせる、簡単に噛める、だったかな。
今食べられるのは噛まなくてよい分類までですね。
スプーンで歯の目の前まで持ってきて、歯でフィルタをかけて、一切固形がなくなった状態でそのまま嚥下に持ち込むしあないので、舌でつぶすような上下運動を伴ったものは無理なんです。
それでもたくさん種類があります。豚肉、鶏肉、鮭、白身魚、、病院のペーストごはんで飼い慣らされたわたしにとっては垂涎ものです。
咀嚼難易度が高いものについては、さらに種類が増えます。歯茎でつぶせる分類にはわたしがずーっと食べたいって言ってたすき焼きも。思わず購入。
これから状態がよくなって食べられるようになるのが楽しみだなぁ。
カゴにばさばさ流動食を入れながら、お買い物って楽しいなぁとか思ってました。


いよいよごはんの時間。
まずは栄養剤「エネーボ」を一口。想定通りのだる甘。カスタードクリームにさらにお砂糖を加えたような味です。
ところがこれが飲んでくると美味しく感じてきて。不思議なもので。
長らく病院飯だと、普段のごはんって楽しくて美味しいですね。
お豆腐、茶わん蒸し、サツマイモのポタージュ、トマトのポタージュ、、いろんなものが食べられて、食に彩りが出てきました。全部食感なしの状態で食べてるけど。


そしてお仕事への復帰も始まりました。まだ在宅勤務だけれど。
みんな歓迎してくれて、進捗もいろいろ教えてくれて。
いろんな人から心配の声をいただきました。みんなあたたかい。当の本人はいたって元気(?)ですが。
初日からいろいろとやることもあるし、自分でこれやろうあれやろうと考えて動く余地もあるし、クリエイティブな営みで忙しいです。調子が出てきたよね。


そうこうしているうちに今日、退院後初の検診。
経過は良好。右奥の糸もとれて、顎が少し開くようになりました。
そして、、いよいよ、固形物が解禁されました。一口大で柔らかいもの縛りはあるけれど。
帰りの足取りの軽いこと軽いこと。あっ、久々の電車にもテンションあがってたしね。


家に帰って何食べようかな、って見てみると、よくよく見たらもうほとんどのものが食べられるようになってるんですよ。
ありゃ無理ゲーだろって言ってた、歯茎でつぶせる分類だってもう余裕。夜ごはんは勝利のすき焼きです。
勝ち得たすき焼きの味は美味しかったなぁ。このお肉の味、ずっと求めてたんよ。半ペースト状だけど。

まだまだ顎を動かしたっぱななので、噛むにも疲れてしまうんで、あまりたくさん噛まないといけないものは、柔らかくても難しいです。普通の白米とか。
それでも、少しずつ慣らしていけば食べれるようになることもわかって。
そしてこの顎間固定とも1/31でおさらばで。
そうしたら、硬いものも、口を大きく開けないといけないものも、慣れていけば食べられるようになっていく。
お仕事だって、体を動かすことだって、これから慣れていけばいい。


長い入院生活を抜けて人として大きくなって、「できない」世界を知って、それができることになって世界が変わっていく。そんな状態でわたしはまたみんなと再会していく。

これからどんな世界が待っているんだろう。

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