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暴走事故の被害に遭ったら損害賠償請求できる?ポイントを紹介

近年、高齢者ドライバーによる暴走事故が社会問題へと発展しています。その背景には、2019年4月に東京都豊島区池袋の交差点で84歳の高齢運転者の車が暴走したことで、3歳の女児とその母を含む12人が死傷したという痛ましい事件が発生したことが関係しています。この事故は当時、大きな話題になり、報道をきっかけに高齢者ドライバーによる交通事故の危険性への関心が高まりました。

超高齢化社会へと移りつつある日本では、高齢者が引き起こす交通事故が増えています。また、高齢に限らず、ドライバーの健康上の問題を原因とする交通事故となると、いつでも発生する可能性があります。

では、ドライバー本人も予期していなかった健康上の問題で事故が引き起こされたとき、その事故に巻き込まれた人は、損害賠償を請求できるのでしょうか?この点について、詳しく解説していきます。ぜひ最後まで読んで、参考にしてみてください。

健康上の理由による暴走の場合、運転者に責任を問えない恐れがある

事故の被害にあった場合、原則運転手に損害賠償請求や罪を問うことができます。しかし、事故の原因が健康上の理由による場合、運転手に責任を問えない可能性もあります。

実際に、2020年11月にてんかんによる発作が原因で人身事故を起こした運転手の男性に対して、裁判所は「事故当時に発作を起こす恐れがあると認識していたとは認められない」として無罪の判決を言い渡しました。

刑法39条1項でいう「心神喪失状態」にあったため、事故を起こした運転手に責任はないという判断です。

当時、運転手の方は医師からてんかんの診断を受けていましたが、発作や予兆と思われる異常を感じることはなかったといいます。そのため、裁判所は意識障害に陥る危険性の認識を持っていなかったと判断し、運転手に対して過失責任を認めないという判決を下したわけです。

病気はいつどこで発症するかわかりません。そのため、体調の異変や持病の悪化の可能性を認識していたにもかかわらず運転した場合などを除けば、運転手の責任を問うことは難しくなります。民法713条も、心神喪失状態の人が他人に損害を与えた場合は、賠償責任がないとしているので、被害者側が泣き寝入りを余儀なくされる状況に陥る可能性が高くなります。

損害賠償請求は危険を予知できたかがポイントとなる

健康上の理由で暴走事故が発生した際に運転手の過失を問う場合の重要ポイントは、「運転手が事前に危険を予知できたのか」です。具体的には、事故発生前に急変を起こすような持病がなかったか、健康診断などで問題が見つかっていなかったかといったことが問題になります。

運転する前の時点で、いつ正常な運転ができなくなってもおかしくない状態であることを認識できていた場合は、運転手の過失を問うことができます。

また、身体的な病気以外に薬物の摂取や精神疾患なども同様に、「正常な運転に支障が出る恐れがある状態」とみなされるため、罪に問うことが可能です。このため、加害者がこれらに該当しているのかを追求することが裁判の勝敗を分ける鍵となります。

暴走車両による交通事故の被害に遭った際は、弁護士に依頼するのがおすすめ

暴走車両による交通事故の被害に遭った際は、弁護士への依頼がおすすめです。弁護士は、加害者が危険を予知できたのかを徹底的に追求し、依頼者の有利になるような解決へと導きます。

加害者の病歴などを病院に照会できるのは、私人では弁護士だけです。たとえ事故の被害者という立場で尋ねたとしても、病院が第三者の個人に患者の重要な個人情報を漏らすことはありません。このため、暴走車両による交通事故の被害に遭った際は、弁護士に相談することをおすすめします。

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