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【名作椅子】vol.7 UP5&6

こんにちは、蓮実です。

皆さんは「アートとデザインの違い」について考えたことはありますか?

私は「アートは問いかけ、デザインは解答」だと考えています。
その定義でいえば今回ご紹介する椅子は、アート作品かもしれません。

椅子の名前は「UP5」。球体のオットマンは「UP6」。
発表当時はドンナの通称でよばれていました。
ドンナとはイタリア語で「貴婦人」を意味します。

作者はイタリア人の建築家であるガエタノ・ぺッシェ。
彼はこの彫刻のような一脚をどのような目的で生み出したのでしょう。

ドンナは1969年のポップカルチャーが最盛の時代に登場しました。
ポップカルチャーとは、戦後の暗く重っ苦しい雰囲気を吹き飛ばすように
生まれた一代ムーブメントです。特徴としては、プラスチック樹脂を
原料とした明るく奇抜な色使いや、奇抜な形状です。

安価である代わりに、品質は低かったようです。
若者たちの文化ともいえるでしょう。

ドンナは、原料に発泡ポリウレタンを使用しており、
出荷時には圧縮をして、コンパクトサイズで運搬できるように
考えられていたそうです。当時としてはかなり未来を感じる
製品だったのではないでしょうか。

大きな特徴としては、なんといっても土偶のような独特なフォルム。
そして紐で繋がった球体のオットマンです。なんとこれは、
「鎖に繋がれた女性」がモチーフとなっているそうです。

これを知った時、大変衝撃を受けました。
ラウンジチェアはくつろぐ家具であって、社会的なメッセージ性が
込められているものとは思っていなかったからです。
暗いメッセージなら尚更のことです。

鎖に繋がれた球体は「家庭や社会」を意味するらしく、
 かなりラディカルなテーマです。

 思うに、この椅子が出た当時は、いかに好景気になり、技術や経済がいかに発展をしても女性たちに対する扱いは、肝心な根底の部分に大きな変化が
無かったのかもしれません。

そこにスポットライトを当てて、あらためて立ちとまり、
考えるきっかけとして、この極端なフォルムは生まれたのではないでしょうか。

現代でも家電や雑貨、アプリなどで便利な、効率良く暮らせるものが
日々生み出されています。

しかしそれを使って家事や雑用をするのは誰であるか。
それをあらためて思い返してみなければいけません。

女性を本当の意味で解放するのは技術ではなく、思想である。
それをガエタノ・ペッシェはドンナという椅子を通じて私たちに
投げかけているように思いました。

実際の座り心地は、包み込まれるような座り心地で、良いらしいです。

では、また。

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