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新月の夜に美しい世界の中に足をふみいれた

 心臓がバクバクいってる。頭がぼーっとしている。心はときめいている。聞いて❗️聞いて✨と誰彼かまわず言ってまわりたい。たった今私が出くわした出来事。聞いてください✨いや読んでください🍀

毎週金曜日は息子の体操教室。夕食後体操教室に送り、実家に荷物を取りに行き、息子を迎えに行って帰る。

今宵もその金曜日。

バタバタ夕飯を作ってあわただしく夕食をすませ、さあ行くよーと車の鍵をもってとびだす。息子はのんびり出てきて車に足を入れたところで、「大事なものを忘れてきた」と戻っていく。あーもう早くってばと心の中でつぶやく。戻ってきた息子はたった今まで見ていた動画の不思議な事件について夢中でしゃべりだす。私の心はそれどころではなかったが、「へえ」とか「ふーん」とか言いながら、この話は着くまでに終わるのか?と焦っていた。

やっぱり❗️車をとめても話はとまらん。話の切れ目に「そこまでにして続きは帰ってから」とやさしーく声をかけてみたけど、我関せずの息子。ですよねー話しますよねー💦確かに5分くらい前ですよ。でもみんなそろってるんだと教室の中の様子を片目に見ながら、聞き終えた。息子はやっとあわてて出ていった。全く話の内容覚えとらん。

あーもうっとイライラしながら細い暗い道を進んで、片側1車線の通りに左折して入ろうと車の顔を出し、左右を確認した時に右を見たその時。車のライトが照らしている、しりもちをついた人とその後ろに立つ人の影が見えた。事故⁉️私のまわりには車も人もいないので、道路交通法には反するのかと思いながらバックして近くの銀行の駐車場に車を勝手にとめさせてもらってかけつけた。その時にはもう一人駆けつけていて、両側から支えられ助け起こされ、なんとか歩道に入っている3人の影になっていた。車も次々道によせてとまり、「大丈夫ですか?」と声をかけに来てくださる方もみえた。

若い男性と若い女性に両側を支えられ立っているおじいさんの表情がはっきりしている姿を確認すると車に戻っていかれた。

おじいさんが「この次の交差点を入ったところにある家に行く途中で」と話されるとすかさず「私もそっちの方向ですので、よかったら一緒に乗っていかれますか?」と女性。「車が少し先なのですが」と。「はい、お願いします」とおじいさんがしっかりと答えられる。「かしこまりました」と女性。そして、女性の車に向かって歩き出す3人。横についている男性に「かわりましょうか?」と声をかけてかわる。男性の車がライトもエンジンもついたままだったのだ。ためらいつつ車に向かった男性は「乗っていかれますか?」と思わず口に出されたけど、女性の車に向かって歩く3人を見て車に乗った。

おじいさんは、歩きながら「では前にのせていただいて」とおっしゃる。

しまった男性の車はもう行ってしまったよ💦車がないことにすぐ気がついて、そのまま歩かれるおじいさん。腰は落ち両ひざもまがったまま歩かれる。

すっかり動転していた私はひたすらこの状況の流れにのるしかなかったけど、はたと気がつく。いったいなんでこんなことになったんだ?

「転ばれたのですか?」と聞くと、

「2年前にもやったんだけど急に力がぬけてしりもちをついたんです。上手に使えば一生使えるとお医者さんは言われたけど最近はあまり使ってなくて」

「まだ寒いですから、体が動きにくいかもしれませんね。今は痛いところはどこですか?」

「しりもちをついたからお尻だけ」

「落ち着いてくると痛みが出てくるかもしれないですし、ぜひお医者さまにみていただいてくださいね。」

と言っているうちに車の近くへ。女性が少しでも歩かずにすむよう車を近くに出してくださった。助手席にゆっくり乗り込まれたが体が入りきらずズボンの腰のところとおしりを持ち上げさせてもらって押し込むようにして乗ってもらう。女性はそのままあわてて運転席へ。道を説明してもらっているようだ。後ろ髪をひかれるとはこのことか。気になりながらも車にもどった。いい人ばかりだった。どの人もビックリして不安で、そんな中でできることを精一杯やったのではなかろうか。一番不安でびっくりしたのは転倒されたおじいさんであったろうに、しっかりと話をされ、歩いてくださった。

道路も工事中で道幅が狭くなっているので、車が停まっていると通りにくいのにクラクションをならす人もいなかった。大丈夫ですか?と自然に声をかけていかれた人、よかったら車に乗ってくださいといった人も。美しい世界を見せていただいた。

感動して実家でひとしきり話して荷物を車にのせて、息子を迎えに行って帰るはずだった。

車を走らせながら、今宵出会った人たちに幸運がおとずれるようにと祈った。おじいさんけがはなかったかな、ご家族もびっくりされただろうなとか考えてたら、ご家族がいらっしゃると話してみえたが、おじいさんを支えられる力のある方とは限らないではないか。私の母は杖をついて一人で歩くのもあぶなっかしいぞ。そんな状態だったらあの女性は大丈夫だったろうか?と不安になる。はたと気づくと家の近くまで来ていた。

息子を迎えに行くのを忘れた。どうりで静かなはずだ。いやそんなこと言ってる場合ではない。あわてて迎えにもどる。ギリギリ何事もなかったように息子を車に乗せた。

帰って音さんにこんなことがあって素敵な人がいたんだよとひとしきり話して、でもやっぱり車でついていけばよかったかなあなんて話をする。冷静な判断ができなかったなあと。でも、あの時の自分にできることを精一杯やったと思う。あの場にいた人たちが全て精一杯のことをしたのだと。

ちょっと落ち着いたら、実家にカバンを忘れてきた。何をやっているのだ私。頭は美しい世界の人たちのもとにいってしまっていたのだ。

せめて今宵の新月に美しい世界の人たちの幸運を祈る。美しい人たちのまわりも美しい世界がひろがることを祈る。

カバンは明日取りに行く。おやすみなさい。いい夢を🍀







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