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お茶ください

子どもから「お茶!」と言われたとき、皆さんはどうしますか?
我が家では、その一言でやりたい事、言いたい事は分かっていても必ず「お茶がどうしたの?」と聞き返すようにしています。

本記事では、他者に対する依頼の仕方を覚えてもらう取り組みについて、ご紹介します。


お願いしたい自分と、お願いされる他者

親の立場で見ていると、子どもが今何をしてほしいのか言われなくても気が付くことが多いです。
「お茶が飲みたいんだな?」「声をかけてほしい顔をしている」等、手に取るように分かると、先回りしてやってあげることも簡単です。

しかし、そのまま成長したらどうでしょうか。
学校へ通うようになった時、先生に「トイレ!」と言って「トイレがどうしたの?」と聞かれてしまうのではないでしょうか。
周囲の大人に「どいて!」と言って、白い目で見られることもあるかもしれません。
そもそも人に依頼をする場合、「トイレに行っても良いですか?」「道を開けてください」等、依頼に適した言葉に言い換える必要があるのです。

家の外で出来ればよい、外出した際に教えるというご家庭もありますが、果たして、親と他者/家と外出先、で分ける必要があるのでしょうか。
おうちで親が練習台になることで、「依頼をするときは適した言葉に言い換える」が日常になり自然に身につくと私は考えています。



お手本は何度でも行う

我が家には2歳になる息子がいます。
お茶やおかわりが欲しいときに、「お茶ください!」と言ってもらうように声掛けをしています。

発語が始まった1歳頃は「お茶!」しか言えず、依頼の仕方が分からない状態だったので毎回「お茶くださいと言ってね」と言葉にして、言ってほしい言葉を繰り返し伝えてからお茶を注ぎました。

最初から「お茶がどうしたの?」と聞いてしまうと「何と言えば良いのだろう?」と、正解が分からず子どもが混乱してしまう可能性が高いので、必ずこちらが言ってほしい言葉を毎回伝えるように意識しました。
半年ほどたって話せる言葉が増える始めると、「お茶ください」が言えるようになっていきました。

不意のタイミングで忘れて「お茶!」と言ってしまうこともありましたが、すでに言葉を知っている/言うことに何度も成功するようになってからは、「お茶がどうしたの?」と聞くようにしました。



「いいよ!」は、依頼が成功した合図

「お茶ください!」が言えた時は、たとえ私が食べ物を口に入れる直前だったとしても/トイレに行こうとした時だったとしても、まずは大きな声で「いいよ!」と返事をするようにしています。

状況に合わせて、「今とってくるから少し待っていてね」や「お母さんがトイレから出たら、お茶を入れるから待ってね」等、すぐに対応できなくても「いいよ!」だけは必ず言うようにしています。

「お茶ください」→返事がないままお茶が出る という場合、依頼が成功したか分からず、お茶を出すほんの数秒の待ち時間の間も不安に感じるのではないでしょうか。
相手からの「いいよ!」で、相手が依頼を受けた+僕・私は依頼が成功した!と感じてほしいのです。



いつ手に入るのか、必ず伝える

前段で少し触れましたが、食事中、作業中、急ぎの用事ですぐ用意できないという時でも、子どもからは「お茶ください!」と注文が入ります。
場合によっては、「飲み切ってしまったので、買いに行かないと無い」という状況もあり得ます。

そんな時は素直に、理由を説明します。

・買いに行く必要があるの
・今**をしているので、すぐには出せないよ
・さっき飲んだばかりなので、もう少し時間を空けてほしいんだ

そのうえで、必ずいつ手に入るのかも合わせて伝えます。

・今日の夕方に買い物へ行くから、夜ごはんの後には用意できるよ
・今やっている**が終わる30分後に出すね
・今日の分はおしまい、明日のお昼にまた飲もうね(ジュースなど)

たとえ数秒でも、子どもにとっては長く感じるものです。
まして、「後でね」「待っててね」「今度ね」等、不明瞭な条件では我慢する気持ちにはなりにくいのではないかと思います。

理由やいつ手に入るのかを説明しても、最初のうちは「いや!」というかもしれませんが、親が説明した約束を必ず守るようにすることを繰り返し行うと「お母さん・お父さんが言ったとおりだ」と子どもも納得し、理解してくれます。



親が約束が守れないとき

泣くから/騒ぐから、と言って親が約束を破り早めに用意すると「こうすればやってくれる」という喜ばしくない成功体験に繋がるので、子どもからなんと言われても、親が落ち着いて理由を告げ、約束の時まで用意できないと言葉にし続ける根気は必要です。

ただし、出先や人前で騒ぎが起こり、このまま我慢一筋ではいられないということもありました。
そんな時は冷静に「お母さんのお話聞いてくれるかな」と何度も問いかけ、お話を聞こうとしてくれたタイミングで「悲しいね。お母さんも悲しい。だから何とか頑張って用意してみるよ。今回だけ特別にね」と伝えて希望を叶えるようにしました。
お菓子を買う、ジュースを用意する等、その場でなんとかできる範囲で希望を叶えて、もう一度「特別だよ。いつも我慢を頑張ってくれてありがとうの気持ちで特別だよ」と伝えていました。
子どもだけでなく親も、今回は特別。約束通りではないと意識し、普段は言葉通りを貫くと、こういった騒ぎは減っていったように感じます。



お願いはコミュニケーション

「お茶ください!」はお茶をもらうことがゴールです。
しかしお願いする相手とコミュニケーションをとるというプロセスが、無意識に行われます。
ここでのコミュニケーションは、伝えればよい/伝わればよいのではなく、態度・言葉使いなど心配りをし、気持ちよくやり取りをすることも指します。
依頼した相手から、「いやだな…」と思われるのは望ましくありません。
親は子どもと比べるとそういった経験が多いので、「その言い方でお願いされても、やりたくないな」「こんな態度なら、お母さんも思わず手助けしたくなるよ!」と会話をしながら、依頼の仕方を通して気持ちの良いコミュニケーションを覚えるきっかけづくりができるよう意識していきます。


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