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「妹たちを守るため、今日をどう生きるか必死だった」誰も信じられなかった僕は今、人のために生きる。

自分の意見を否定され続けると、誰もが自分の夢を諦めたくなるのではないでしょうか。

現在、定時制高校に通う17歳(*1)のばんちょーもまた、自分の意見を周りの人に否定され続けた経験があります。家庭や学校など、日々目まぐるしく環境が変化する中、周りの大人を信じることができなくなり、妹たちと今の自分を守るため自分だけを頼りに生きてきました。

今回の「Choose Your Life Story」では、ばんちょーがハッシャダイソーシャルに出会って、彼の人生にどんな変化があったのか、彼の過去を振り返りながら見出していきます。

「Choose Your Life Story」では、ハッシャダイソーシャルに出会って、一歩踏み出した若者たちのリアルな声や感情をお届けします。
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(*1)取材時点:2021年2月

父が月に1回しか帰ってこない家で、妹たちを守る。

僕のお父さんは、月に1回くらいしか家に帰ってきませんでした。お母さんも仕事をしていたので、妹たちと過ごすことが多かったです。

「長男なんだから、お父さんがいない時は、妹たちを守ってあげるんだよ。」お母さんからよく聞いていた言葉です。僕が家の掃除や洗濯などをすることは、いつしか当たり前になっていました。

お父さんが毎日帰ってこないことに対しても、僕が家事を率先してやることに対しても、「辛い」「めんどくさい」みたいなネガティブな気持ちにはなりませんでした。

当時の僕は、ただ「大人になると、仕事は忙しくなるから。」「長男だから。」と、ただお母さんに言われた言葉の通りに、身の回りの全てのことを受け入れていました。

家を出ることになったあの日。窓1つない小さな部屋で、大きくなっていく責任感。

中学2年生がもう間もなく終わる頃。僕は、ある日突然、家を出ることになりました。

学校から帰ってきてすぐに、母に今から家を出ることを聞かされました。後々分かったのですが、両親の離婚が理由でした。既に家を出る準備をしていた妹たちを見て、僕はその言葉に従うほかありませんでした。

どこに行くかも分からない中、車に乗りました。やっと辿り着いた場所は、窓ひとつもない小さな部屋でした。もちろん、今までのようにご飯を食べたり学校に行ったりと生活をすることはできましたが、自由に外に出ることはできませんでした。

「妹たちが安心して暮らせるように、僕が守らなくちゃ。」という責任感は、日に日に強くなりました。僕たちが住んでいた部屋は、エアコンもなかったので、暑い日は一晩中眠らずに、妹たちをうちわで仰ぎ続けたこともありました。

こうして突然、大きく変わった環境で、僕は誰を頼ればいいか分からずに、ずっと孤独を感じていました。でも、それ以上に「今日をどう生きるか」を考えることで、頭がいっぱいでした。

周りの大人を信じられなくなったまま、進路選択へ。

一晩中、妹たちをうちわで仰ぎ続けた日なんかは特に、日中眠くなってしまい、授業中に寝てしまうことがありました。

そんな僕の姿を目にした先生は、僕を注意します。僕は、今の自分の状況を少しでも分かってもらいたくて、家庭の事情を先生に話してみました。

「そんなわけないだろ、嘘つくな。」
先生から返ってきた言葉は、それだけでした。全く信じてもらえなかった。僕はだんだん周りの大人が信じられなくなりました。

こんな状況の中でも、進路選択の時期はやって来ます。本当は、大好きな野球を続けられる高校に行きたかった。だけど「定時制の高校を選んだ方が良いんじゃないか」と周りの人達は、ただ言うだけでした。

自分の意見や夢を話したところで、どうせ周りの大人たちに否定されてしまう。そう感じた僕はこの時から、完全に大人を信じられなくなりました。そして、もう誰も信じたくなくなりました。

「やってみなよ」と肯定してくれる人に出会った日、今なら変われる気がした。

僕は結局、夜間の定時制高校に進学することになりました。大好きな野球ができなくても、高校に通うことで少しでも妹たちの助けになりたいという一心でした。

でも、もう絶対に周りには期待しない。とにかく自分が就ける仕事を見つけるために高校を卒業しよう。そんな思いで迎えた高校1年生の冬、現ハッシャダイソーシャル理事の勝山さんが、僕の学校にやってきました。

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「未来に対しての希望なんて一ミリもなかった。」
「大人を、社会を信じることができなかった。」

勝山さんの一言ひとことが、今の自分と重なりました。そして、今まで色々な困難を「仕方がない」と割り切ってきた僕も、「今、そしてこれから先、どう生きていけば良いか」悩んでいたことに気付きました。

勝山さんは、そんな僕を見兼ねてハッシャダイソーシャルのメンバーが集まるご飯会に誘ってくれました。そこに居たのは、今まで自分が出会ったことのなかった大人たちでした。自分のどんな小さな考えでも、「いいじゃん!」「やってみなよ!」と肯定してくれる人たちでした。

僕の状況を全部理解してもらえなくてもいい。でも、少しでも自分の今の気持ちに向き合ってくれる人たちが傍にいて欲しかったんだ。心の奥底に眠っていた自分の思いに気づいた瞬間でした。そして、その日僕の中で何かが変わる気がしました。

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オンラインの学校で、諦めかけていた夢と出会う。

すっかり周りの人を信じることが出来なくなっていた僕も、ハッシャダイソーシャルのメンバーとの出会いを機に、もっと色々な人の考えをを知りたいと思うようになっていました。

そんなある日、勝山さんから「ハッシャダイソーシャルがやっている、オンラインの学校(*2)に参加してみないか」という連絡が。僕の答えは、「YES」でした。こんな自分でも今なら変われるんじゃないかと感じたからです。

オンラインの学校には、僕の考え方を大きく変えてくれた出会いがいくつも待っていました。その一つが、料理人の齊藤さん(*3)との出会いです。

実は、僕は小さい頃から料理が好きで、将来は、自分の料理で人を笑顔にできる料理人になりたいという夢がありました。小さい頃から、料理を作った時に笑顔になる家族の顔を見るのが好きだったからです。だけど、何度も周りから自分の意見を否定される中で、その夢すら諦めてかけていました。

オンラインの学校を通して、僕は自分の考えや夢を、少しずつ自分の言葉に出来るようになっていました。そんな僕の話を聞いてくれたメンターの方々が、僕に北海道で実際に料理人として活動している齊藤さんを紹介してくれました。

齊藤さんの人生、失敗の乗り越え方、お客さんの向き合い方...。齊藤さんから色々なお話を聞く中で、「本物の料理人は、料理の腕前を持っているだけではないこと」を学びました。

そこから、僕は「料理人」というひとつの道に頼りきるのではなくて、今できることに思いっきり挑戦して色々なスキルを身に着けようと思うようになりました。

これから自分が選ぶことのできる道は、ひとつじゃない。本物の料理人とお話しできたからこそ、気付けたことでした。

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(*2) ハッシャダイスクール.オンラインは、一般社団法人ハッシャダイソーシャルが無料で運営している、自分の可能性を広げたい高校生のためのオンラインの学校です。

(*3)齊藤さんのお店はこちら。

オンラインの学校で、他県の高校生と出会う。

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僕はオンラインの学校を通して、もう一つ衝撃的な出会いがありました。それは、自分とは違う都道府県に住む高校生との出会いです。

今まで、一度も地元以外の同世代と話す機会はありませんでした。だけど、オンラインの学校に居た高校生はみな、僕とは違う地域に住んでいました。

3カ月間、一緒にワークを行っていく中で、お互いがお互いの気持ちを考えて助け合う。離れている中でも「今、心が通じ合えた気がする」という瞬間がたくさんありました。

自分とは環境や境遇が違う人でも、絶対に1つや2つわかり合えることがあると気づくことができました。

勝山さんと出会い、ハッシャダイソーシャルのメンバーと出会い、そしてオンラインの学校で全国に仲間やかっこいい大人と出会う...。

日常生活では絶対に出会えなかった人たちと出会う中で、少しずつ毎日が楽しくなっていきました。

「目の前のチャンスを一つずつ掴んでいく」全校生徒に向けたワークショップを開催。

少しずつ日常が明るくなり始めた時、担任の先生から「全校生徒の前で、ワークショップをやってみないか」という声がかかりました。

「なんで僕がやらなければいけないの?」
周りの大人の意見なんか信じるもんかと思っていた頃の僕だったら、そう答えていたと思います。

だけど、その時の僕の答えは「やってみる。」でした。どこからか、今までの僕がやってこなかったことでも、応援してくれる仲間の声が聞こえた気がして。

そして、想像以上に僕の中で「目の前のチャンスに挑戦してみたい」という気持ちが強くなっていたことにも気づきました。

「情けは人のためならず」高校3年生になる今、僕が見ている世界。

今年、僕は高校3年生になり、また進路を選ばなければいけない時がやって来ます。でも今は、中学校の時とは違い、将来に不安がありません。

世の中には、どんな小さなことでも、自分の背中を押してくれる人がいることを知ったから。たくさんの道があることを知ったから。

そんな僕は今、周りの人が喜んでくれる仕事に就きたいと思っています。一時期は、自分しか信じることができず、とにかく必死に毎日を生きてきた時もあった。

だけど今の僕は、周りの人から「ありがとう」という一言を聞くことに、やりがいや喜びを感じています。

小学校の時に授業で聞いた「情けは人のためにならず」という言葉。あの時は、全く信じてなかったけど、今はとても大切にしている言葉のひとつです。

これからも、自分の周りのチャンスをひとつひとつ掴んでいきます!

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<取材・文=ハッシャダイソーシャル広報PR・木村りさ>

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