重い話フラグ その2

 謎の好評(?)を受けて第2弾である。まあ、好評じゃなくてもどうせその1とつけた時点で第2弾は確定していたのだが。

 ※重い話フラグ その1を読んでない人はこっちもどうぞ。


 特にこれといって言うこともないので早速入っていく。今回も今まで聞いてきた相談における前置き、例えば「相談があるんだけど……」のような言葉から重い話に繋がる危険性やよくある意図、対策を個人の主観と偏見、それと経験談で書いていこうと思う。前回は割と軽め短めな感じで書いてみたが、今回は少し長くなるかもしれない。また、前置きとして挙げる言葉はあくまで一般例であり、一字一句同じというわけではないことを留意していただきたい。


・「無理して聞いてもらう必要はないんだけど」

 重い話しますよ宣言やめろ

 半分以上が重い話。そんなに重くないよ~とアピールこそしているが、騙されてはいけない。油断するといきなり「死んだら皆悲しんでくれるかな」「どんな死に方が苦しくないと思う?」みたいな話をされる。僕に聞くな。その1における「大した話じゃないんだけど」と類似しているが、こっちのほうが危険度は段違いだ。

 心の中がぐちゃぐちゃしていて詰まっている人間が強がろうとして失敗すると、結構な確率でこういう前置きになる。大丈夫だよと言いたい、強がりたいが心が追いついてこない。言葉と心が分離しかけている状態といえば分かりやすいか。そういった状態だとこういった矛盾した前置きになりやすくなる傾向が強いと感じる。無論、経験上の話ではあるけども。

 この手のパターンは冷静なようで混乱していることが多いため、まずは「どうしてそう思ったのかって言うのは、聞かせてもらえたりするかな?」といったように、理由などを口にさせることで筋道を作成していくことが重要だ。経緯を整理していくことで原因が見えてくることもままあるからだ。相手の話を軽く要約しながら返していくことで、相手も自分の話をある程度客観視できるようになる。それは自分の心の状態を対象化して認識する、一種のメタ認知にも繋がっていく。ただ、強制はしないように。「出来たら」「もしよかったら」のような前置きをしてプレッシャーを極力避けるのが無難だと思う。


・「もしよければ聞いてもらえる?」

 マジでこれだけ来てくれないかな

 重い話が来る確率がめちゃくちゃ低い前置き。というより、この前置きをしてくる人間は(経験上)ある程度自分の心の状態や今おかれてる状況などを自覚、あるいは把握している場合が殆どだ。なので、相手と話すことで自分の方向性を決定したり改善したりするのが目的であることが多い。

 話は「友達(彼女)と喧嘩した」「○○がうまく出来ない」「○○(悪い癖など)がやめられない」などといったものが主流で、相手と会話の流れを合わせているうちに自身で解決策を見出してくれることも結構あったりする。こちらとしてもやりやすいし楽だし、なにより立場を自分に置き換えやすいので僕も相手の状態を把握しやすい。また、「もし自分がああなったらどうすればいいだろう?」といったような、僕があの立場ならというシミュレーションにもなるので一石二鳥である。

 余り親交が深くない相手からの相談だと、このパターンが結構ある。身内ではないからこそ客観的に観てもらえるという判断なのかは知らないが、ともかく全ての相談事がこのレベルで落ち着いてくれないかと思うくらいには大人しいパターンである。しかし、極稀に理性の利いた狂気をブチ込まれるのでその時は運が悪かったと思っておくのがいい。ちなみに僕はブチ込まれたことがある。

 対策だが、これといったものはない。内容が多様なため考えられる改善方法や言うべきだと感じる言葉も多く、対策と言えるほど絞り込むことができないからだ。敢えて言うなら”無理に対案を出そうとしない”ことか。まあ、これはどんな相談においてもいえることだが。相手から言葉を引き出させることを意識するとスムーズに会話が進むので、聞き役に徹しながら時折質問をして考えさせる、というような形を取るとなんとかなることが多い。


・「ここだけの話なんだけど」

 嘘乙

 相談というよりチクリ。「あいつが裏で○○のこと~」みたいな。一見綺麗に見える友情の裏の……みたいな。そんな感じ。ちなみにここだけの話ではなく、仲の良い人間に色々なタイミングで話している。一応「どうしたらいいかな?」というオープンなクエスチョンが飛んでくるので相談の枠には入れたが、要は相手をsageることによって相対的に自分の評価を上げようとしているのである。それ自体は実に人間臭くていいと思うのだが、生憎僕はその相手が興味なかったり女子であったりすることが多かったのであんまり効果はなかった。しかも友達が少ないので発信源にすらなれない。うーんこの無能。

 内容は大体悪口。『○○が裏であんなことを言っている』『○○がこの前体育館の裏で煙草を吸っていた』『○○は二股をかけている』などなど。これは単純に相手に非があるパターンなので、こちらとしても結構同調しやすい。まあ、果たしてそれが本当かどうかという問題もあるので深入りはしないのだが。

 自分のことを正義側だと考えているフシが結構あるので、「まぁ確かにそれはよくないかもね」といった同調をはさんでやると満足してくれる。また、悪意なしでこの前置きからリークをぶちこんでくる人間の中には素直な人間も一定数存在するので、「でも、もしかしたら~かもしれないよ」みたいな仮定を与えてみるとあっちもしっかりと考えて、結果として関係の改善にプラスな働きをすることも。


・「気分が悪くなったら言ってくれていいから」

 ワザップジョルノ

「覚悟の準備をしておいてください!」と同義。大体3分の2くらいで本当に気分が悪くなるような話である。残りの3分の1は僕にとってはあまり大した事ではない話である。つまりこの割合というのは完全に僕の主観であり、今から思えばその3分の1もそこそこ重かった可能性があるかもしれない。

 内容は人間関係のいざこざか自傷報告の2択。人間関係のいざこざだと、例えば「二股かけられてた」「親が離婚した」などが挙げられる。重い。自傷報告はOD(OverDose,主に薬品等の過剰摂取を指す)やリストカットである。重い。前者に関してはどう声をかければいいか分からなかったし、後者に至っては完全に専門家案件だ。僕にどうしろというのか。

「親が離婚した」という話はかなり仲良くしてもらっている友人から受けた相談だった。詳しい内容は語らないが、彼は「原因は自分にあるかもしれない」と非常に苦しんでいた。”そんなことないよ”などという言葉は口が裂けても言えない。僕は「なんでそう思ったんだ?」という返答しかできなかった。文字通り、掛けるべき言葉というのが思い浮かばなかった。

 対策を考える。人間関係のいざこざに関しては、正直ケースバイケースとしか言いようがない。とにかくしっかりと話を聞く(そぶりでもいい)ことが重要だ。

 どんな相談においても言えることだが、聞く態度というのは非常に、非常に大切な要素だ。それも、ここでミスをすると全てが終わると言っても過言ではないくらい。逆に言えば、しっかりと話を聞くこと(演技でも)が出来れば、一応の信用は得られるということでもある。なので、まずは聞くこと。

 で、自傷行為に関してはその1でも語った通り、「それくらいしんどいことがあったのかな」「今身体はしんどい?大丈夫?」といった共感や気遣いをまずは入れるのが無難だろう。そこからそのしんどさ、辛さは何故生まれるのか、どうやったらなくなっていくのかというのを一緒に考えてみる。解決するかは分からないが、僕の場合はこの動きをすることで一応の改善(頻度が下がった程度だが……)をみせた。

 


 少し話が変わるが、前置きの種類に関わらず、自傷報告や「死にたい」などの相談を受けた時にまず僕が言っているのは「SC(スクールカウンセラー)に相談はしてみた?」という言葉だ。当然だが、彼ら(彼女ら)は僕のような一般人よりも余程深い知識を持っているし、こういったケースに関する対処法についても学んでいる。なので僕に頼るよりも有意義だし合理的じゃないか……と、理屈で考えれば思うだろうし、僕も常々思っている。

 しかし、人間はとかく感情に支配されがちな生物である。理屈ではどうすべきか分かっていても、荒れている感情をなんとか鎮めるためにそちらに従おうとしてしまう。ここで聞き手にとって大事なのは、その感情の発露、感情論の爆発を「悪いことだ」と思わないことである。荒れる感情を無理に抑えて理屈に拘ることも時には大切だが、心が弱っている状態でそれを続けていると潰れるのは明白だ。故にここで容易に「じゃあ専門家(SCなど)に聞いたほうがいいよ」などと言っても効果はない。あちらだって理屈の上ではそんなことは分かっているからだ。

 だからこそ、まずは「してみた?」という事実確認をする。ここで例えば「したけど分かってもらえなかった」と返されれば、「なるほど、上手く伝わってくれなかったんだね。なら僕でも力不足になるかもしれないけど、まずは一緒に考えてみようか」みたいな返答をする。あくまで自分は専門家ではないことを念頭に置いてもらいつつ、あまりプレッシャーがかからないようにすることを意識したいからだ。また、「してない」などという回答が来た際は「なるほど、してないのか。因みにその理由とかってのは聞いても大丈夫かな?」と、相談していない理由を聞いてみる。責めているような口調になってはいけないので気持ち優しめに。経験上、SCに相談が出来ない理由として多く挙げられるのは「精神的ハードルの高さ」「信頼性の低さ(SCがどんな人か知らないことによるもの)」「どうせ無理だろう(解決しないだろう)という諦め」の3つだ。最後の理由はともかくとして、あとの2つは学校側とSCの連携不足というか、SCという存在がクローズドになっているのも大きな要因だろうなと感じる。SCとコミュニケーションをとれる場所をもっとオープンな場にすることで少しはマシになるのではないかと素人的には思うのだが、もしかしたら中々そういう場が出来ない理由もあるのかもしれない。


 閑話休題。本編に戻る。



・「友達の話なんだけど」

 自分語りです

 嘘である。十中八九自分の話だ。第一、友だちの話を僕にする必要性が微塵も感じられない。これを読んでいる人の中にもこの前置きを使われたことがある人はいるんじゃないだろうか。正直、結構腹がたたないだろうか? 僕も「なんだこいつ」という印象を持っている。とはいえ、実は危険度は中程度くらいあったりするので注意したほうがいい。というのも、相談相手も自分の話が言いにくい、あるいは重いことを自覚しているが故にこの前置きを持ってくることもままあるのだ。”友達の話”とすることで主体を”友達”にすることが出来るため、クッションのような働きをするのである。

 内容は人間関係に関することが多い。「彼女がいる人から告白されて困っている」といった恋愛関係から「先輩から強制されて酒を飲まされてる」といった部活・友人関係まで様々である。

 当然、それ絶対お前の話だよな? と思っても決して口に出してはいけない。こちらも「その友達は~」という言葉を使って合わせるべきである。何故なら、本当に友達の話である可能性を否定できないからだ。そこが0%じゃない以上、リスクのある言動はすべきではないと思っている。まあ、実際は大体友達の話じゃないのだが。

 経験上、”心の内でどうすべきなのかは分かっている、しかしそれを認識出来ていない”……というパターンが多い。なので相手に「自分はどう思ってる?」と聞いてみて考えさせ、すべき行動を認識させることで解決することも結構ある。しかし、いくら認識しても行動に移す踏ん切りがつかず、「でも自分の考えを押し付けるのってなんか申し訳ないし……(上手くいく自信がない、の意)」と躊躇する人もそこそこ多い。もしこうなった場合は本格的に相談を聞く態勢を取る。この躊躇という感情は一度人間にとりついたが最後、中々へばりついて取れないことが殆どだからだ。これを取るには強力なキッカケ、あるいは躊躇をゆっくりと削ぎ落としていく根気が必要だ。そしてそんな根気は僕には存在しない。よって、強力なキッカケ、中でも本人による気づきを得るために(つまりさっさと終わらせるために)本気で聞く。

 対策は「もしよければ聞いてもらえる?」の場合と同じだ。内容が多種多様なので特定の対策といったものが出来ない。ただ、まずは「そういうことがあったんだね」と受け入れる姿勢を取ること。これだけでだいぶ僕は楽に話が進められた。辛そう、あるいは神妙そうな表情を作っておくと相手からの印象がグッと上がるのでオススメしておく。罪悪感はあるが。



 今回は前回よりも詳細に書いてみた。二度とやりたくない。思い出すたびに「あの時なんであんな事言ったんだろう」「どうしてこう言えなかったんだろう」という後悔が今になって募ってきて傷跡を残していくからだ。その3を書く時はもっと分量を短く、簡略にしたい。皆も長い文章読むのは疲れるだろうし(これを短いといえるかは個人差が出るところではあるが)。 

 ちなみに、上記に挙げた例の殆どは勿論高校生時代の経験である。僕の高校やばい奴ばっかだな。なお、残った例外は中学生時代の話である。つらい。

 自分のメンタルを守るために、重い話にはご用心を。

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