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【#週刊少年マガジン原作大賞】骨皮筋衛門と蚊ーニバル:第3話

第2話はこちら

「我は蚊に刺されにくい体質であった」
「へぇ~それは羨ましい」
と円城寺。心底どーでもいいといった感じが蚊山と蚊取をいらだたせ、蚊おつき顔つきに気をつけろ!と怒らせてしまう。慌てて謝る円城寺。

「そのため、蚊への嫌な感情が人より少なかった」

それよりも気づかないうちに人から血を吸いとる蚊に興味がわき、大学の専攻では迷わず蚊を選んだ。

「蚊が専攻?」不思議がる円城寺。
「蚊は研究するほど工学や生理学の面で蚊つよう活用できる身体的特徴が見つかった。ますます夢中になる中、私に蚊の女かのじょができた」

へぇ~と円城寺。心底興味ないといった姿勢を示したが、蚊山と蚊取は怒らなかった。円城寺に蚊の女ができたことがないのを知っていたからだ。気の毒そうに見る2人の視線に気づき「蚊ぁ~!」となる円城寺。

デーモン蚊っ蚊・蚊山・蚊取が「そうそう、いい反応」と笑った。

「で、彼女ができたのと蚊ーニバル設立とどう関係が?」
悔しさを隠しながら円城寺が先を促す。

「彼女ではない!蚊の女かのじょだ!蚊の女も熱心な研究者だった。共に研究し、ジョンストンき蚊ん器官の素晴らしさに打ち震えた」

楽しい日々が続くと信じていたデーモン蚊っ蚊だったが。

「ある日、蚊の女と蚊フェでお茶をしていた時のことだ」

プリンアラモードのメロンに1匹の蚊がそっと降り立ち遠慮がちにメロンの汁を吸い始めたそうだ。

「血を吸わないオスの蚊だった」

これからも秘密をいっぱい教えてくれよ、と心の中でほほ笑んだ時、パン!と蚊の女がつぶしたのだ。悪いことをしていないオスの蚊を!

「蚊の女がただの彼女に変化した……」

ごっめぇ~ん、と軽く謝る女に俺は心底嫌気がさした。そして、優れた機能を持ちつつも簡単につぶされる運命の蚊に哀れみと親近感を覚えた。

「慌てる彼女をその場に残し俺は大学を去った」
「その時、ともについてきたのが俺たちだ!」
「見た目が蚊わいい可愛いからと男のと言われるのが嫌だった!」
蚊って勝手に蚊っ蚊との仲を噂されるのが嫌だった!」

「え?蚊ーニバル結成の理由……それ?」
今までモテたことのない円城寺には全く理解できない設立秘話だった。そういえば、この3人、見た目がいい。男性的な魅力あふれるデーモン蚊っ蚊・白い肌に赤い唇の中性的な魅力を放つ蚊山ゆうぞう・サラサラストレートで永遠の少年といってもいい蚊取しんご。どれも円城寺が望んでも手に入れられない容姿。

こいつら、悪の道へ進む必要ある?いやすご~くムカつくんすけど、とマグマのようにどす黒い気持ちに円城寺奏多は支配されかけた。

しかし!彼らの美しさを俺が利用すれば、イービルフラワーを立て直せる!悪を世に振りまくためにも人集めは大切だ。奴らは意味不明な理由で感情的に動くからコントロールする人間が必要だ。俺のような……俺のような見た目はちょっと残念だけど頭脳明晰な……と無理にコンプレックス払いのけ、

「本当に大変な思いをされてきたんですねぇ」
と円城寺は下卑た笑いを浮かべた。
「女なんてそんなもんです。浅はかなんですよ!蚊っ蚊、蚊山さん、蚊取さん、心ゆた蚊豊かに生きられるせ蚊い世界のために私はいくらでもお手伝いします!」

円城寺奏多の心無い言葉に純真無垢なデーモン蚊っ蚊は「蚊ん動感動!」とむせび泣いた。

「くだらないと言わな蚊った人はあなただけだ!」
と喜ぶ蚊山。
見蚊け見かけによらずいい奴だな、円城寺!」
とサラリと髪を書き上げる蚊取。
「しかし、イヤー蚊フの機能が警察にバレてしまった。今後はどうすれば」
と暗い顔をするデーモン蚊っ蚊に
「いい考え、いやいい蚊んがえがありますよ」
と円城寺がニヤリと笑う。

「イービルフラワーは以前、SNSを駆使した炎上作戦を行っていました。それをまた立ち上げるのです」

お3人はパソコン教室の勧誘員、あ、蚊ん誘員としてビジネス街に立っていただきます。なに、難しいことはありません。ニッコリとするだけで女性も男性もついてくるでしょう。集めた人達は私が蚊い発開発したこの機器でコントロールし、悪の情報を流していきます。そして……

「ちょっと待った」と蚊山が制止する。
「それは我々の目指すものではない」と蚊取。
「蚊の成分が全く入っていないではない蚊」とデーモン蚊っ蚊。

えーっとそこは、その後ほどあれやこれやで蚊成分を注入するとして、まずは皆さんの見た目を存分にい蚊し活かして、と円城寺がシドロモドロになったその時。

「君達は騙されている!」

との声が響いた。

「そ、その声は!」と憎々し気な円城寺。
声の主は骨皮筋衛門だった。暗闇からふくよかボディのラインが浮かび上がる。
「騙されているだと!蚊っ蚊を愚弄する気か!」
襲いかかる蚊山をヒラリとかわし、攻撃してきた蚊取の向きをクルリと円城寺へ。「おわっ!あっぶねー!」

「ほ、骨蚊わ筋衛門……我々が騙されているだと?」と疑り深くつぶやくデーモン蚊っ蚊に筋衛門は優しく声をかける。

「奴はイービルフラワー再興のために君達を利用しているのだ」
「違う!ちゃんと蚊……んがえている!次の作戦はっ!SNSで絶大な影響力を持つクマッタ文芸部の部長と部員を拉致し……」
「そこのどこに蚊成分が含まれているんだ?」
「蚊行が含まれている!ほら!クマッタとか!」
「それは純粋な「蚊」じゃない」
「う、うるさい!お前らは俺が言うように動けばいいんだ!」
小者らしくブチ切れる円城寺の豹変した姿に呆然とする3人。

「君達の気持ちはわかる。しかし襲われた人達の気持ちを考えたことはあるか?」
メロンの上で潰された蚊のように恐怖を感じていたのではないか?と筋衛門が話しかけた。

「君らは気持ちが優しすぎ、純粋過ぎた」

そのため、イービルフラワーが用意したメロンにのせられ、そのまま潰されてしまう運命に突き進もうとしていたのだ。

「オスは血を吸わないかもしれない。メスも産卵の時に栄養を摂るために必死なのだろう。一度血を吸うと人には近づかないとの研究もある。だが」

筋衛門が蚊……いやカっと目を見開いた。

「蚊を媒介する病気もあるのだ。刺されたことによるアレルギー反応で痒みだけでなく痛みや腫れに苦しむ者もいる!その全てに責任を持って君達は活動をしているのか!」

あまりの正論に愕然とする3人。

蚊を研究することで未来へつながる発見はあるかもしれない、でも蚊を増やすことで起こる危険性は……

「そ、そこまで蚊んがえな蚊った……」
うなだれるデーモン蚊っ蚊の元にそっと近寄る影。

カフェに置き去りにした元カノ・蚊オリ、いや香だった。

「かぁくん、あの時はごめんね」とほほ笑む彼女はいくばくかの年は重ねていたが、清楚な美しさはまだ残っていた。

「かぁくんが去ってから、あなたのことを探しながら研究は続けていたの。でもかぁくんがいないと蚊の研究は進まないの。だから……もう変なことは止めて研究室に戻って」
「蚊……香ぃ……」
デーモン蚊っ蚊いや、かぁくんは泣きながら香にすがりつき涙した。
蚊山いや加山、蚊取いや香取ももらい泣きをしている。

「お前ら!俺のこと無視して話を進めるなよ!お、女連れてくるなよぉ!」
怒り狂った円城寺が自爆装置を発動させる壁のボタンを押そうとしたその時、骨皮筋衛門のふくよかボディが宙を舞った。

ヒラリ・クルリ・プルン・ボスン。白目を剥く円城寺。

その音が合図であったのだろう。太山デイブを先頭に警察が円城寺のアジトになだれ込んだ。


「で、蚊ーニバルの3人はどうなったんですか?」
とコーヒーを淹れながら幸田さんがデイブにたずねる。

「彼ら3人の起こした事件は長年、警察を悩ませていたのだが」
横でクスリと笑うボン・ラジを少しにらみながら、
「でも、彼らの蚊への意欲や研究は素晴らしいし、ただ蚊を言わせるだけで市民は誰も怪我をしていない。そこで」
「そこで?」
と砂沼さんが食いついてきたのでデイブは、
「厳重注意を行い、骨皮筋衛門の潜入捜査の役に立つ情報を提供するという約束で大学の研究室で働くことが決まった」
とウインクをしたが、その時は砂沼さんは幸田さんのところへ出来立てのコーヒーを取りに行ってしまった。

やはりデイブはタイミングが悪いんだよなぁとボン・ラジが笑う。

「で、大活躍の骨皮筋衛門さんは?」とボン・ラジが聞くと
「インタビューは俺に任せた、と言って地下に潜った」

カランカランという音と共に「えー、今日こそ潜入捜査の話が聞けると思ったのに」と言いながら江藤さんと越前さんが入ってくる。今日は「カサブランカ」で「笑顔デスカ♪」の公開収録があるのだ。

「俺がいるだろ?」というデイブに「そうですね」と軽く流す江藤さん。越前さんはさっさと収録の準備をしている。

少しショボンとしたデイブに「まあまあ」とコーヒーのお代わりを差し出す砂沼さん。絶妙なタイミングだったので、デイブの機嫌はあっという間に直った。これで収録が無事進みます、とボン・ラジが砂沼さんに礼を言う。いえいえとニッコリする砂沼さん。

その時、カウンターでクスっと笑う者がいた。ふくよかなボディライン。しかし最大限に気配を消しているため、幸田さん以外に気づく者はいなかった。

「いいんですか?」
「みなが街が幸せならそれでいい……じゃ」

そういうと幸田さんの目の前からふくよかなボディラインは消えた。


「円城寺は残念だったわね」
「仕方ない。イービルフラワーの中では奴は最弱だからな」
ぎぃーっと開かれる扉。
むぅんとした空気とほとばしる汗。
はいっ!食べて!ジャンプ!回転!休憩ぃぃ!
「へぇ~。骨皮筋衛門……」
「シィ!話は後だ!」

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