【#創作大賞感想】「花畑お悩み相談所」穂音ワールドに身を委ねる心地良さ
穂音ワールドに身を委ねる楽しさをすっかり知っている私としましては、バクが喋ってもダークな内容の童話風メールが来てもビクともしません。創作大賞に穂音さんが参加することが嬉しくてどんどん読み進めていきます。しかし、第十二話で主人公律子の息子である孝介が、
と発言した時、思わず吹き出してしまいました。
そうですよね、孝介がそう思うのも当然です。バクが人間同様の格好で普通に家を訪問し会話をすれば普通はそう思うでしょう。しかし、彼以外は当たり前のように「花畑お悩み相談所」を受け入れ、会話だけでなくお悩みのプロとして相談までするのです。人間だけがいる世界に慣れていれば「どうしてバクが」と言いたくもなります。
しかし、穂音ワールドにどっぷりと浸かっている私にとって、このお悩みは衝撃でした。それくらい、穂音さんは人間と動物が対等な立場で生活をしている世界を自然と描き出す名人なのです。優しくて不思議な穂音ワールドが「花畑お悩み相談所」でも展開されます。
ただ、物語はフワフワと展開するのではなく、
ところどころにブラックな内容が含まれる童話のようなメール
料金プランを元に相談料をしっかりと請求するバク
不慮の事故により目覚めない主人公の孫
と不穏な空気を散りばめながら進んでいきます。犯罪の匂いさえ感じた人もいるのではないでしょうか?しかし、穂音さんはひとつの家庭の中で起きている小さな亀裂をしっかりと優しく見つめ物語にします。家族でありながら理解してもらえない辛さ、期待に応えようとする苦しさを穂音さんは丁寧に掬い取るのです。
家族にも語れない小さな秘密は深く心に刺さり毒となり中学生を内側から苦しめていきます。その苦しみは、その子だけでなく家族へもジワリジワリと広がり亀裂となって違和感を積み上げ、ズレを生みます。辛さにもう耐え切れないと声なき叫びをあげた時、心優しきバク達が現れ解決へとゆっくり導いてくれるのです。
バクが一緒のテーブルに座りお茶をする不思議な世界をごく当たり前に描くこの作品を読み終えた時「続きはいつかしら」と呟いていました。バク達のお仕事ぶりを私はまだまだ読み続けたいのです。
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