【#シロクマ文芸部】「イワンのばか」へのオマージュ
舞うイチゴを「イワンのばか」が持っていると噂が立ちました。
村の男どもが笑う中、1人笑わない男がいました。
「本当に舞うイチゴを持っているのか?」
「そうさ!」
そう答えた瞬間、男はイワンを袋に入れ闇の中へ消えました。
男は、王様から舞うイチゴを持つ男を探すよう頼まれた家来だったのです。
王様にはイチゴのような可愛らしい唇を持つお姫様がいました。
お姫様は、ある日運命の人を占ってもらいましたが、やる気のない占い師が、
「舞うイチゴを持つ男があなたの運命の人」
と適当に答えたのです。
お姫様があまりに騒ぐので、王様は家来に舞うイチゴを持つ男を探させました。
「でかした家来!」
と喜んだものの、男を見てがっかりしました。
イワンのばかの噂はお城にまで届いていたのです。
お姫様も相手がイワンなので、占い師に本当にこの男かと尋ねますが、嘘と言えない占い師は、
「煮える大鍋にこの男が入れば立派な王子になります!」
と苦し紛れに言って、鍋に向かってイチゴを投げました。
「イチゴ!」
イワンは思わず飛びつき、そのまま大鍋にドボン!
次の瞬間、大鍋からイチゴを持ったイワンが、立派な身なりの若者となり出てきました。
「魔法が解けたんですね!」
姫は喜んでイワンに飛びつきました。
「馬鹿いうでねぇ。王子でなくてイワンだ。このイチゴはオラの大切なマリヤが育てたもんだ。舞うイチゴはマリヤのことだ」
よく見ると、イワンは田舎者のままでした。
呆然とするお姫様に占い師が言いました。
「ごめんね、魔法がかかっていたのは、お姫様なの」
「え?」
「私、本当は魔法使いなの。王様が夢見がちな姫の目を覚ましてくれと言うから色々やったんだけど、あなた頑固でね、なかなか」
「そうじゃ。そろそろ夢を見るのをやめて隣国の王子を婿に迎えておくれ」
涙目の王が姫に言いました。
姫もようやく自分が冷静でなかったと気づき、イワンに謝りました。
「煮えたぎった大鍋に入れて、ごめんなさい」
「なに言うだ、お姫様。鍋は冷たい水だよ」
「煮えたぎって見えたのも、私の魔法」
魔法使いはそういうとイワンに向かって杖を振りました。
イワンは瞬時に村へと返されました。
その後、国をあげてお姫様の結婚式があげられました。イワンの住む村にもお祝いの蜂蜜酒が届けられ三日三晩、祝われました。
イワンはその後、舞うイチゴのように可憐なマリヤと結婚して幸せに暮らしましたとさ。
お題が「舞うイチゴ」と発表された時、野イチゴのように可憐な少女が浮かびました。
また、子供の頃に愛読していた「イワンのばか」を思い出し、野イチゴのような少女とイワンが幸せになる物語にしたいと思いました。
イワンがグラグラと油が煮え立つ鍋に飛び込んだり、水の中に飛び込んだりすることに理不尽な思いを抱いていたので、お姫様と結婚するのは納得できなかったのです。
お姫様には冷静になって普通の王子様と一緒になってもらいました。
王子様は見栄えもそれなりで常識もある理想の夫だと思います。
小牧幸助さん、今回も素敵なお題をありがとうございました🙌
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