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【#創作大賞2024】祖母・動物編

昨日は私の宇宙人体験について投稿をしましたが、祖母のようにコメント欄もビュー数も伸びません。やはり祖母には敵わないということでしょう。器の違いを思い知らされました。

ということで、本日は「祖母・動物編」をお送りします。


迷い猫と祖母


小学校から帰ると家に白い猫がいました。しかも仔猫!

「きゃーおばあちゃん!どうしたの!」

姉妹で大興奮です。祖母はフフフと笑い、

「ドアを開けたらよう、スルと足に寄ってきて入っちゃったんだよ」

ずっと犬か猫が欲しいと言っていたのに、命が短いからダメと飼うことができなかった我が家。一番力を持つ祖母が飼うと言うならうちもとうとうネコ様が家に……!

フワフワの猫にエサを上げたりなでたり。あの時間は最高でした。祖母も目を細めています。

白い毛にブルーの瞳がまた魅力的な仔猫の名前をどうしようか、という話になり妹と「チェビィ」と名づけました。もう、この子はうちの子。

次の日、チェビィ会いたさに飛んで帰ってくると、いません。

「チェビィは?」
「出ていったよ」

ドアを開けたら自分でスルッと出て行ったと祖母は言うのですが。

元々祖母は、猫は家具に傷をつけるという理由で絶対に飼わないと言っていました。その祖母が猫を家に入れたのですから、てっきり飼うものと思い込んでいたのに。

孫が涙ながらになぜ追いかけなかったんだ、不用意にドアを開けるなんてと言いましたが、祖母は動じません。

「仔猫の可愛さは魔物だからな」

だから逃がしたとでも言わんばかりでした。そのとき、私達はチェビィが勝手に出たのではなく祖母が外に出るように仕向けたのだと悟りました。祖母は仔猫の破壊的な可愛さに思わず家に入れてしまいましたが、冷静になって自分が猫を飼わない主義だということに気づいたのでしょう。

後日、チェビィが近くの猫屋敷の窓に座っていたと妹が悔しそうに報告しました。チェビィ、うちの子になって欲しかったです。

インコと祖母


祖母は、インコが欲しくて仕方ありませんでした。しかし、生き物は寿命が短いからダメと言っている手前、飼いたいとは言えません。

そんな時、一羽の迷いインコが飛び込んできました。白い羽に水色のお腹、目の下には瑠璃色の模様が頬紅のようについたインコです。

祖母がこのチャンスを逃すはずがありません。

ものすごい速さで鳥かごと餌を購入しあっという間に「我が家のインコ」にしてしまいました。どこかで迷いインコを探しているかもと母が言っても

「誰も探しゃしないよ!」

と言い放ちます。こんなにきれいなインコなら探しているだろうと母は言っていましたが、結局迷いインコを探している人は出てきませんでした。

最初、うちのインコだと言われるのが怖くて外に出すのを嫌がっていた祖母ですが、問い合わせが来ないとわかってからは窓の側にカゴを置き、日光浴をさせながら楽しく植木いじりをしていました。

逃げてきたため大人だったのでしょう。3年ほどでなくなりました。

祖母の落ち込みがあまりに激しかったので父が慌ててインコのヒナをペットショップが連れてきましたが、その子は弱く1年しないうちになくなってしまいます。

それ以降、祖母はインコを飼いたいと言わなくなりました。

ハムスターと祖母


姉妹してハムスターが大好きです。フワフワもっちりの乳児のような体型がたまらないのです。

うちに初めてハムスターが来たのは妹の嘘がきっかけでした。友達から2~3日預かったと言って連れてきましたが、自分の小遣いで買ったのです。ちょうどセールで小学生にも手の届く値段だったのだとか。

母に嘘を暴かれ泣く妹を馬鹿だなと思うと同時に「でかした!」と喜びました。私も手のひらサイズのモフモフな動物が大好きだったからです。

ゴールデンハムスターで気性が荒くエサのとき以外は懐きませんが、見ているだけでも幸せな気持ちになります。さて、名前をどうしようかとなったときに祖母が、

「けっ!ねずみに名前なんて!けっ!」

と言ってきます。インコが飼えなくて腹を立てているのです。

「しゃべりもしないしな、このねずみは」

と何度、ハムスターだと教えてもねずみ呼ばわりをします。そこで、祖母にねずみと吐き捨てるように言われない名前にしようと考えました。

ねずみ様

の誕生です。

オリジナルキャラのねずみ様はこのゴールデンハムスターがモデルとなり生れました。妹とハムスターを模写していたら凶暴さが際立ってしまったため、描く線を減らしていくちに現在のねずみ様が生まれたのです。

で、祖母はその後どう呼ぶようになったかと言うと。

「けっ!ねずみ!けっ!」

は治らなかったです。

アサシン祖母


下町ということもあり古い家が多く、昔はねずみがよく出ました。商店街には、ねずみを捕獲する網が普通に置かれていました。うちは商売をしていなかったで、あまり縁がなかったのですが。

ある日、とうとう我が家にもねずみがやってきたのです。ハムスター好きのためひそかにときめいていたのですが、祖母のねずみへの憎悪はすごく、ありとあらゆる器具を常備してねずみの捕獲に情熱を傾けていました。

ねずみが捕獲されたカゴを持ち、バケツへと沈める姿はアサシンそのものだったと語る時、妹はいまだに震えます。

妹は刑を執行する時、必ず私達を呼ぶので覚えているはずというのですが。

私は全く覚えていません。

同じハムスター好きでも、嫌な記憶が残る派と消し去る派に分かれたようです。

ドジョウと祖母


小学校の夏の恒例行事に「ドジョウつかみ」がありました。夏休みに入ってすぐ、校庭に大きな簡易ビニールプールを作り、児童とドジョウを放り込み、掴ませるというワイルドな行事です。

ホースで水をかけられながらドジョウを掴むのはさぞかし楽しいだろう、と思わないでくださいね。すごく嫌でした。

その行事に出席したくないと毎年ダダをこねました。大騒ぎでドジョウを掴むのも無残に子ども達に踏みつけられたドジョウを見るのも嫌だったのです。ヌルヌルしたドジョウをわざわざ掴まなくてはいけないのも理解できません。

しかし、祖母は私を引きずるように連れていきドジョウを掴めといいます。無理矢理簡易プールに入れられ端でホースの水を浴びながら耐えるしか私には選択がなかったのです。

微動だにしない孫に業を煮やしたのでしょう。

「こうやって獲るんだよ!」

ずかずかと近寄ってきた祖母はヒョイヒョイとリズミカルにドジョウを持参したバケツに入れていきます。

「柳川、美味いんだよねぇ」

なんて言いながら。

その日の夕食のメニューを私は覚えていません。
やはり私は嫌なことは忘れる派なのでしょう。


「ド」と祖母


おばあちゃんってさ、アリンコのことをアリンドって言うよね、と妹が言い、どうしてアリンドなのかな、と2人で推理してみました。色々と話しているうちに、

「アリンドの「ド」って奴隷の「奴」なんじゃない?」

となり、アリと奴隷を重ね合わせる表現に姉妹で痺れました。爆笑しているうちに妹が、

「でもさ、おばあちゃんって鼻の穴をハナメドって言うよね?」

と言いだし、鼻の穴まで奴隷にしちゃうのかよーと爆笑をしたのですが。しばらくしてから、

「メドって穴を意味しているんじゃない?」

と気づいたのです。そういえば針もハリメドと言っています。

アリンドはアリに「ド」がついただけですがハナメドは「メド」だったのです。目処がつくという言葉が見通しがつくというように「メド」は穴を意味する言葉だったのです。

アリンドの奴に引きずられ愚かな間違いをしてしまいましたが、こういう言葉遊びは間違っていても楽しいものです。

ペスと祖母😢


これだけ悲しいお話です。

祖母は男の子4人を育て上げた肝っ玉母ちゃんで、かなり厳しかったそうです。父は長男だったためかなり厳しく育てられたのですが、末っ子には甘かったそうで。

その末っ子がある日、犬を拾ってきました。これが他の子だったら、

「捨てといで!」

となるのですが、末っ子が鼻を垂らして目を潤ませお願いをすると飼うことになったのだとか。兄弟全員で、この時は末っ子に甘い母親を大歓迎したそうです。

昔の犬は番犬という仕事も任されていたので今とは違い、知らない人にはよく吠えました。吠えれば吠えるほど「いい犬」とされます。ペスと名づけられた犬は家族によく懐き、朝晩売りに来る豆腐屋のラッパの真似をして、

「トーフィー」

と鳴く愛嬌もありましたが、番犬としての仕事きっちりします。ペスの話をするたび「あれは賢い犬だった」と祖母は嬉しそうに言っていました。

そのペスは突然、毒を食べて死んでしまいました。
朝、外に出ると泡を吹いて倒れていたそうです。近所の人にも番犬として頼もしいと言われていたのにね、と祖母は涙ぐんで話をしてくれました。

祖父が亡くなってしまったため、祖母と4人の男児だけで暮らす家にはペスは頼りになる存在だったといいます。ペスがいなくなってから2度ほど強盗に入られており、祖母は首まで絞められました。幸いにも下町で家が密集していたため近所の人が気づき助かりましたが「あの時にペスがいれば」と言っていたので、優秀な番犬がいなくなった家は泥棒に入りやすくなったのでしょう。

ペスがいなくなって泥棒に入られやすくなりましたが、祖母は二度と犬を飼いませんでした。ペスは祖母にとって5人目の息子だったのです。

ペスは人間のエゴによって亡くなりました。動物が人間の勝手で命を落とすような世界は必要ないです。

#なんのはなしですからしくない話が出たところで今日は終わりにしましょう。

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