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「窓際のトットちゃん」感想! 想像力と自由教育で戦争と戦え! 子供向けと思ったら凄まじい傑作

 こんにちは!今回はアニメ映画「窓際のトットちゃん」について語っていきたいと思う。今作は、タレントの黒柳徹子さんが本当に通っていたトモエ学園を舞台に描かれたノンフィクション小説が原作のアニメーション映画である。観る前は正直子供向けの作品だとなめていたが、「蛍の墓」「この世界の片隅に」に並ぶレベルの超名作だった。それでは始めていこう。


○リベラル自由教育で戦争と戦った小林先生とトモエ学園!

 今作は、通っている学校で問題を起こし、退学になったトットちゃんが、新たにトモエ学園に入学するための面接をする所がら始まる。面接の場でトットちゃんは、トモエ学園の校長である小林先生から「君は本当はいい子なんだよ」と承認してもらい、トモエ学園に入学する事になる。

 このトモエ学園では、身体的なハンデを持った子や、トットちゃんのような普通の学校に馴染めなかった子から、良家の子供まで、様々な子供達が受け入れられており、子供達の個性を尊重する多様性を重視した教育が行われている。

 戦中のあの時代は、全体の価値観が1つの方向に誘導されていた。国全体が一丸となり、戦争の勝利に貢献する事が正しいとされていたはずだ。

 国全体が、そういった1つの価値観に染まっていく中、小林先生は多用な価値観を認め、個性を尊重する開かれたリベラルな自由教育を行っていた。戦中のあの時代に、そういった教育を行う事は相当画期的な事である。そんな環境だからこそ、黒柳徹子ような才能が育ったとも言える。要は小林先生は、トモエ学園という場で、教育という形で戦争が生み出す空気や時代と戦ったとも言える。

○日常に少しずつ侵食する戦争の影!

 そして、今作の凄い部分として、戦争の描き方がある。例えば、トットちゃんの家族や友人が、直接的に戦争により奪われる等の出来事が起こる訳ではない。駅員のおじさんが、いつのまにか女性に変わっていたり、音楽家であるトットちゃんの父に軍歌の演奏の以来がくるなど、トットちゃんの日常に、少しずつ戦争の影が侵食してくるのだ。何か悲惨な出来事が起きて日常がひっくりかえるのではなく、ジワジワと日常が変化していく見せ方は素晴らしかったと思う。

○豊かな想像力で日常を侵食する戦争と戦ったトットちゃん!

 そして、トットちゃんは、凄く想像力が豊かな子で、暗く変化していく現実の中でも、その現実を拡張し、煌びやかで豊かな世界を生きていた。

 例えば、雨の中トットちゃんが空腹で泣き出してしまう場面で、トットちゃんは雨音に合わせて友達と歌いながら踊る事に夢中になる内に元気になっていく。このシーンでは、トットちゃんの心象風景として、カラフルにライトアップされた世界が現れる。戦争の影で暗くなっていく日常に中でもトットちゃんは自分自身の豊かな想像力により、世界の見方を変え明るく生きたのだ。戦中のこの時代、戦っていたのは大人だけでなない。トットちゃんのような子供も想像力の力で戦争という現実と戦っていたのだ。

 そう考えると、この物語は、教育と想像力で戦争と戦った、小林先生とトットちゃんの物語であるとも言える。

○消えないトモエ学園の精神性と誰かを承認する事!

 そして、最終的に、トモエ学園は空襲により燃えてしまう。しかし、小林先生は悲しむのではなく「次はどんな学校を作ろうか」と言う。そして、田舎に疎開する事になったトットちゃんは、移動中の電車の中で赤ん坊を抱きながら「あなたはいい子」という言葉をかける。トットちゃんが最初に小林先生に承認して貰ったように、トットちゃんも他の誰かを承認してあげる場面で、この映画は幕を閉じる。

 戦火によりトモエ学園が燃えようとも、この二人は全く現実に負けていない。学校が燃えようと、小林先生の教育への情熱は消える事はなく、トットちゃんの中でもトモエ学園で学んだ大切な精神性は消える事はない。だからこそトットちゃんは、小林先生のように誰かを認め、承認する事が出来るようになる事が出来たのだ。

 感想は以上になります。 最後まで読んで下さりありがとうございました!

 

 


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