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天皇賞秋 2023 回顧


【レース展開】

M(ミドル)平均型 SP持続型 57.7-57.5
12.4-11.0-11.5-11.4-11.4-11.4-11.4-11.6-11.4-11.7

平均ペースのSP持続力勝負の展開で、前半が57秒台にもかかわらずハイペースにならないのは、後半も前半と同じ57秒台のペースになった為。終始11秒台半ばを刻むラップ推移で、3~4角で全く緩まない形から後半の11秒台半ばを維持し続ける形。逃げたジャックドールは直線半ばでつぶれたが、直線半ばから勝ち馬イクイノックスが引き継ぐ形で最後まで11秒台を維持。離れた3番手追走だったイクイノックスでも58秒前半の流れを追走していると想定される。

イクイノックス 1着

【決め手】好位追走から楽々と抜け出して完勝・桁違いのSP持続力を見せ

発馬五分から好位3番手を追走。道中は終始3番手を楽に追走する形から、3~4角もそのままの位置で回って直線へ。直線は序盤から半ばで持ったままの手応えで前との差を詰めていくと楽々と先頭に躍り出る。半ばでようやく追われると2番手以降を完全に引き離して独走態勢。最後1Fもそのまま伸び続けて、ゴール前は完全に流して後続に2馬身半の差をつける完勝。高速馬場と前半57秒台のハイペース(実際にはMペース)という事もあって勝ちタイムは脅威の1.55.2のレコードタイムでの勝利。

逃げたジャックドールが作り出した前半57.7秒のペースを3.4馬身後方の3番手を追走。おそらく3番手のイクイノックスの位置でも58秒くらいのペースだったと思うが、その流れを追走しつつ後半を同じく58秒台を切る流れで走破している。終始11秒半ばを維持し続けるラップ推移の中で、極めてハイレベルなSP持続力を見せた事になる。もはや加速がどうのこうのという問題では無く、SP持続力そのものの高さを見せつけた形であり、ちょっと他馬には真似のできないレース内容を見せた。

ちょっと今回は言葉が出ないと言うか、どう説明や解説をしていいか迷うところなのだが、とにかく途轍もないスピード維持能力という事と、他馬が全く太刀打ちできそうもない内容を示したと思う。終始11秒台半ばのラップを維持する流れを好位で流れに乗って、直線も同じく11秒台半ばのラップで乗り切ってきた。ラップだけを見ると最後1Fだけ11.7秒と若干落としてはいるのだが、これはイクイノックスがゴール前で流しに掛かっているからであろう。まともに追い続けていたら確実に11秒台半ばを維持できたと思うし、時計もさらに短縮されていた…と考えると本当に恐ろしい結果になったと思う。

【レース関係者コメント】
(C.ルメール騎手)

「安心しました。やっぱりイクイノックスは世界一の馬ですから。今日はイクイノックスの強さを見せました。もちろん1番人気にG1で乗ったら集中しますね。イクイノックスの力を知ってるから、勝つ自信はたくさんありました。だんだん加速してくれました。時計を見た時は、びっくりしました。天皇賞は僕にとってすごく大事なレース。勝ててよかったです。イクイノックスは全部を持ってるね。スタートからいいポジションを取れます。そのあと冷静に走れます。最後にいい脚をみせてくれる。スタミナもあって有馬記念も勝てた。本当に完璧な馬ですね」

ジャスティンパレス 2着

【決め手】後方から直線勝負の感も自分の形に徹した結果・勝ち馬に完敗も

出負けもあって序盤から後方で控える形の競馬。道中は後方2番手でジックリと構えるように追走して、3~4角もペースが落ちない中で前を追いかけずにジッと待機。結果4角では最後方まで下がる形になってもジッと我慢。直線に入ってから徐々に外へと誘導されて、半ばで満を持して追い出しを開始。追い出されてグイっと伸びると、最後1F地点で3番手付近まで浮上。最後1Fでは3.4着馬との争いの中でゴール前100mから更にグンと伸びるなど決定的な違いを作って2番手に押し上げたが、先に抜け出した勝ち馬(イクイノックス)との差を詰めるには至らず2馬身半差の2着。

勝ち馬(イクイノックス)異次元の競馬をしていて、ちょっと比較の対象ですらない結果になった。位置取りや展開的なものを考えると完敗の内容であり、最後は僅かに詰め寄った感じには見えるが、それでも0.6秒差の2着で普通に完敗の内容になる。

ただ2着に来れたのは展開的に後方待機の直線勝負に徹する形でが奏功してのもの。特にペースが全く緩まない状態だった3~4角で、あえて前を追いかけずに完全に直線に向いてからの勝負に徹したのはかなり効果的だったと思う。3~4角で前をおいかけなかった分だけ、同じく後方待機策だった3着馬(プログノーシス)より上に来れた感じ。特にゴール前100mからの伸び脚で違いを作れたのは、道中しっかりと脚を貯め切った成果だろう。ただ展開と位置取り的ものを精査すると、おそらく前半は59秒台の中で後半SP持続力を生かし切た形になると思われる。傍から見ると勝負度外視の直線勝負に徹したような印象があるも、あくまでも後半型の競馬に徹してその中で自身の武器である後半のSP持続力を引き出した結果という事になると思う。

展開や位置取り的なものを考えると勝ち馬との差は決定的だが、3着以下に0.2秒もの差をつけたのは立派。距離的にどうか?という感じもあったが、十分に対応できるだけの内容を見せたと思う。現状では有馬記念よりもジャパンカップの方が出番があるかも?という雰囲気。

【レース関係者コメント】
(横山武史騎手)

「ゲートの中がうるさいと聞いていたので、いろいろと策を練ったんですが、うるさかったですね。前で運ぶプランだったんですが、いいスタートが切れなかったので予定より後ろからになりました。ただ、思ったよりもペースが流れたので、結果的にはいいポジションになりました。イクイノックスは強かったですが、この馬もよく走っていますよ」

(杉山晴紀調教師)
「ゲートをもう少し決めていれば、前に行くというのもあった。1歩目を決めきれなかったので、腹をくくってあのポジションで。前が流れたのもあるが、それでもいい脚を使った。これだけ使えるとは思っていなかった。収穫あった。負けて悔しいけど、この時計だと納得感もある」

プログノーシス 3着

【決め手】後半勝負で噛み合うもバテ差し3着が限界・スピード面で苦労?

出負けもあったが序盤から控える構えを見せて最後方からの競馬。前半は離れた最後方でジックリと脚を止める形の追走も、4角手前から外を回ってジワッと進出を開始。そのまま4角を回って直線入口で大外へと誘導して直線へ。直線は序盤で追われるも伸び脚そのものはジリジリで他馬との違いを作り切れない感じ。それでも半ば以降で大外からグイっと伸びを見せ始めて3.4番手まで浮上するが、最後1Fに入ってからの伸びが再びジリっぽくなる。ゴール前100mからは外から来た2着馬(ジャスティンパレス)に交わされてしまうが、何とか最後までしぶとく伸び続けてゴール前で内に居た4着馬(ダノンベルーガ)を何とか頭差交わして3着を確保した。

勝ち馬との比較では普通に完敗の内容。後半勝負に徹してもどうしようもならない結果と内容になったし、同じく後方待機だった2着馬(ジャスティンパレス)にも0.2秒もの差をつけらているから完敗と言わざるを得ない。
展開的に後方待機からの後半勝負の形がある程度嵌ったと思うが、それでも直線の伸び脚で違いを作り切れずという感じで3着。直線では特性面による違いから加速面で他馬に対して見劣ったと見ていいだろう。ただ2着のジャスティンパレスとの比較では3角過ぎから動いて行った…という事が起因していると思われ、最後1Fでの伸び脚の差に繋がっていると思う。まぁ総合的に見ても高速馬場の後半勝負で太刀打ちできるように思えなかったし、後半勝負に徹した形ても最後は持続力での優位性を保てなかったのはこの馬としては痛い。前半57秒台のペースの中でバテ差しの様な感じで3着を確保だし、高速馬場を含めたスピード面で厳しい形になったと思う。

【レース関係者コメント】
(川田将雅騎手)

「素晴らしい具合で、とてもいい走りを見せてくれました。全力で頑張って、ここまできてくれました」

(中内田充正調教師)
「自分の競馬はしているし、強い相手によく頑張っていた。2000メートルがベストだと思っているので、馬の状態を見ながらオーナーサイドと決めていければと思います」

ダノンベルーガ 4着

【決め手】最後1Fで伸びあぐねる・中団からの競馬で0.6秒差は地力表れ?

発馬五分もあまり行き脚が良くなく自然と中団やや後方の中目の位置取り。道中は終始中団馬群の中目で進めて、3~4角はその中団馬群の中から動き出して直線へ。直線は序盤で追われてジリジリ伸びつつ少しづつ外目へと誘導。半ばでムチが飛んでグイっと伸びて最後1F地点では3番手まで押し上げたものの、最後の1F区間に入ってから少し伸びあぐねる感じ。それでも最後までしぶとく伸び続けたがゴール前で外の3着馬に僅かに前に出られて4着まで。

終始中団馬群の中で構えて直線もしぶとく伸びきる形だったが、勝ち馬には0.6秒差の完敗。勝ち馬がケタ違いの能力を引き出して来たので比較にはならないものの、その他の中団勢の中では後半要素を引き出してしぶとい内容を見せたと思う。特に直線半ばでは一瞬グイっと伸びるシーンがあって、あのまま伸び続ければ2着があっても…という感じもあった。ただ本当にいい脚は一瞬しか使えないタイプであり、最後1Fで少し伸びあぐねる…といういつも通りの内容になったと思う。根本的に緩いペース向きなのだろうが、こういう流れる展開の中でも持続性の脚を使っえるなど総合能力を備えているという感は強くなった。

まぁ今回は勝ち馬(イクイノックス)が強すぎたし、2.3着馬は後方待機で後半勝負に徹した組。そういう意味では中団から運んだこの馬が0.6秒差に踏みとどまった事は大きく評価されていいと思う。

【レース関係者コメント】
(J.モレイラ騎手)

「ペースや時計の速いレースになったけどいいスタートを切って前半から手応え良くいいポジションを取ることができた。直線でいい脚を見せてくれて最後までファイトしてくれたが、勝った馬が強かったです。きょうのこのレースが使っていいステップアップになると思います」

ガイアフォース 5着

【決め手】好位追走から直線しぶとく粘り切る・SP持続力の高さを証明?

好発からある程度前に行く構えを見せて2番手追走の形。道中は57秒台の速い流れの中を2番手を追走し、そのまま3~4角から直線へ。直線序盤で逃げるジャックドールに並びかけに行って半ばで先頭に立つ。しかし直後に外からにじり寄ってきた勝ち馬(イクイノックス)にアッサリと交わされて2番手後退。最後1F地点では単独2番手の位置にあったが、最後1Fで急激に脚色が鈍る感じ。残り100mほどで外から来た2~4着馬に揃って交わされる頃には完全失速状態だったが、6着以下の馬の接近を許さずに5着。

好発から序盤で前に行く構えを見せた為に逃げるジャックドールが序盤で一気に脚を使う形になってハイペース(実際にはMペースだが)になるきっかけを作っている。それでも2番手で57秒台の速い流れに乗って直線で最後までしぶとく粘り込んだし、この流れでもスピード負けするような感じを一切見せなかった事は評価できると思う。ただ最後1Fで急激に脚色が鈍っておりこれをもって2000mは長いと判断するか、単純に速い流れで余力が無くなったと見るかの評価は分かれそう。勝ち馬のSP持続力には完敗の内容だが、逃げたジャックドールが直線半ばで成す術も無くスリ落ちて行った事を考えれば、例え2番手追走であってもSP持続力を生かし切ってのの5着は評価に値すると思う。

【レース関係者コメント】
(西村淳也騎手)

「勝ちにいく競馬をして思った通りに乗ることができました。あまり後ろを待ってもすごい馬たちだらけなので、この馬自身ビュッという脚はないので4コーナーを回ってどれだけセーフティーリードを取ってゴールできるかと思っていたんですが、勝った馬が強かったです。でもよく頑張ってくれたし今後が楽しみです」

アドマイヤハダル 6着

【決め手】中団追走・4角外から動く、直線伸びきれず・後半要素見劣り
【レース関係者コメント】
(菅原明良騎手)

「中団で雰囲気良く運べました。G1のこのメンバーの中でもしっかり力を出せたのが良かったです」

ドウデュース 7着(2人気)

【決め手】中団待機も直線半ばで失速気味・本来の後方待機策では無くて?

発馬五分から中団中目を追走も前半は若干掛かり気味。道中は終始中団で1人気イクイノックスの背後を追走。3~4角を中団馬群の中で回って来て、4角から直線入口で動き出して直線へ。直線序盤で追い出しの態勢に入っては中目から伸びをみせる。しかし半ば以降で少し伸びあぐねる感じになって、勝ち馬(イクイノックス)には突き放されてしまう。さらに最後の1F地点ではかなり甘くなって、後続差し馬(2~4着馬)に一気に交わされると最後は余力が殆ど無くて雪崩れ込むように6着でゴール。

位置取り的にもイクイノックスをマークする意識が強かったと思うが、それでも前半57秒台のペースをある程度の位置で追走する形の中で、SP持続力で大きく見劣った形になる。さらに直線半ば以降は後続差し馬に対して何ら抵抗する事も出来ずで、前半速い流れの追走で消耗したと見ていい。ちょっとタイプ的には道中で貯めての直線勝負型なので、速い流れの中で脚を貯め切れなかった印象は強い。

まぁ直前に主戦騎手が負傷してしまい急遽乗り替りがあっての騎乗で、本来のこの馬の特性面を引き出せなかったという見方もできる。本来はジャスティンパレス(2着)、プログノーシス(3着)のような後方の位置取りからの競馬であり、その形であれば本来の後半要素は引き出せたような気はする。ただ勝ち馬(イクイノックス)との比較に追いて、後方待機策で差し切れたかどうかは定かではない。まぁタラレバの話になってしまうのだが、本来の主戦騎手ならどう乗って来たか…という所に注目が集まると思う。

【レース関係者コメント】
(戸崎圭太騎手)

「スタートを上手に出てくれて思ったよりも前に行けたし、ポジションもイクイノックスを見る形で運べました。ただ、道中力んでいる感じがあり、それが最後に影響しましたね。もう少しリラックスして走らせてあげられればよかったんですが……」

(友道康夫調教師)
「休み明けもあって本来の伸びがなかった。まあジョッキーも替わったし、ああいう馬混みでの競馬も初めて。自分のリズムで走れなかった。次はどこか分からないけど、これが実力じゃない」

エヒト 8着

【決め手】出負け、中団後方追走・直線半ば脚止まる・道中の流れで消耗
【レース関係者コメント】
(横山和生騎手)

「この馬なりにゲートを上手に出てくれました。このメンバーこの時計の中で良く走ってくれています」

ヒシイグアス 9着

【決め手】中団外目追走・直線半ばで失速・前半の流れで消耗、右回り?
【レース関係者コメント】
(松山弘平騎手)

「勝ち馬を見ながらいけました。この馬にとってはせわしいペースだったと思いますがその中でも最後までよく頑張ってくれました」

ノースブリッジ 10着

【決め手】3~4角内通す・直線半ばで失速、余力なし・前半の流れで消耗
【レース関係者コメント】
(岩田康誠騎手)

「ある程度行くことも頭に入れて運びました。ただ、直線に入ってから反応がなかった」

ジャックドール 11着

【決め手】主導権握る・直線半ばで失速・前半オーバーペースの影響大きく
【レース関係者コメント】
(藤岡佑介騎手)

「他の出方を見ながらですが向こう正面ではハナへ行くと決めていました。スタートして内から1頭出てきましたがハナを切ることができました。もう少し後ろを離して逃げるイメージでしたがぴったりついて来られてしまいました。馬のフォーム的にもためが利くというよりはハミに乗り気味に走っているところもあって、4コーナーを待たずにバタバタになってしまいました。この速い勝ち時計の中、アグレッシブに行った結果なので仕方ありません」

(藤岡健一調教師)
「めちゃくちゃ状態は良かったです。この馬の競馬はやっているけど、1分55秒2はちょっと走れない。いやあ、勝った馬が強すぎる。今後はいろいろ考えます」

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