高山一実生誕祭

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#3 乾いた空気を切り裂くようなぬくもりだった。いつもと変わらず進んでいるはずの秒針がこんなにもゆっくりと感じるのは科学的にも証明されていないはずだ。自分ではないことの幸せに自分のことのように喜べる感情はどこから湧いてくるのだろう。疑問は尽きない。それでも秒針は6度ずつ歩を進めていく。人とかかわることの幸せに気づけたとき、長針は何度を指しているのだろうか。そんなのは長針に聞いてもわかるわけがないだろう。ただ一つだけわかるとしたら、この優しいぬくもりに気付けないうちは時計の針は動かないという虚無感だけだ。