渋谷駅 大人になるということは 行き交う顔に 面影みること
なんとなく歩いて帰る雨上がり きょうの花束 あしたの生活
帰りつき余力でちょっと引き延ばす 明日のための短い夜を
いたずらに過ぎる平日 友だちの誕生日さえ覚えておけない
話したいことの鮮度は落ちていく まま味気なき大人の日々は
桜の木 ただ手伸ばして何望む 蕾が今か待つ春ぞかし
春風を連れて改札抜ける人 花束抱えて歩いてく
窓の外 降り続ける雪音もなく 厚く積もってそっと肩たたく
落ちている手袋が魔法みたいに 見えたら楽しい夜だと思う
生ぬるい風を吹かせる終電の上にかがやく冬のオリオン
道すがら冷えた空気に香りたつ金木犀に気付いたら秋
どしゃぶりの雨に歌えば聞こえない と思って好きに口ずさむ夜