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古い洋館が音を立てて燃えていた。巨大な蝋燭が灯ったように町全体がやけに明るい。業火に包まれた館から舞い上がる火の粉が漆黒の夜空へと吸い込まれていく。材木の爆ぜる音と軋む音が強くなった。半壊が近い。館を囲んだ群衆は身動ぎもせずじっと見ていた。燃え盛る炎ではなく真後ろにいるこの私を。