ガラス越し聞ゆ嬰児の泣き声に 目尻を下ぐる新祖父母かも
巣立ちたる子らの訪れ待ち侘びて 熟し落つるか庭の沼酸槐
凡夫にも救いの道を示したる 南無阿弥陀仏ありがたきかな
納骨を済ませて父の故郷の 山野を眺め思いを捨つる
大暑なり大粒の汗拭きもせず 早場米は稲刈りの時
見上げれば月ぬ美しゃや十三夜 先島の唄恋しく想ふ
サフランは斜面に咲くと教えたる 君は何処の山に暮らすや
八月の陽の入り少し早まりて スコットランドの白夜恋しき
連休に娘手料理置いていった たったそれだけ何故にキュンキュン
夏雲を背負う山脈 母親を施設に入れし我を責めるか
草の根を四年の時が固めたか 権益求め群がる支持者
理髪屋の棚に積まれし旧刊誌 一月分を一気に読むか
烏賊不漁の全国ニュースに煽られ 特売品手にする主夫かも
肘を突き携帯寝かせ話しけり 受話器持つ手は痺れを知らず
朽ちるのを待つかの如き役場跡 驟雨は去りて蜩の雨
海風は心地よけれど胸塞ぐ 父の病状聞きし帰りに
言霊を呼び起こしたか都知事選 二番じゃダメなんですかとぞ問う
あの日から何を学んで忘れたか 再び巡るバブル崩壊
下船する無表情たる官僚の 作り笑顔ぞ疑いを抱く
猛禽の食うや食わずで空を駆る 肥満の我は恥じて歩かむ