OLTA Tech Vision ができるまで
OLTA (オルタ) の橋山です。
最近は、吉本の芸人をやっている弟とMagic The Gathering ARENAをやっています。Magic The Gatheringを語り出すとそれだけで記事が3本ぐらい書けてしまうのですが、それは別の機会に回したいと思います。
さて、去年より大事な仕事の1つとして取り組んでいた開発組織の目指す姿をOLTA Tech Visionとして本日公開します。
OLTA Tech Visionができるまでは本当に苦労の連続でしたが、作るまでの過程が何かの参考になれば、と思い記録に残すことにしました。
なお、OLTAの事業やプロダクトについて知りたい方は、OLTA Culture Deckもご参照ください。
なぜ Tech Vision を作る必要があったのか?
約1年半前まで遡りますが、当時、OLTAの開発組織は厳しい状態に瀕していました。エンジニア1人1人の能力は非常に高く、優秀な業務委託や副業メンバーにも手伝ってもらっていましたが、チームとしての一体感に欠け、個人技の組み合わせでなんとかプロダクトを開発・運用している状態でした。
エンジニアメンバーからも「OLTAはエンジニアにとって何が魅力なのか、自分でもよく分からないので、人に伝えることができない」という声が上がっており、採用活動にも影響が出ていました。
こうした状況を打開すべく、CEOの澤岻、採用担当の高家、当時技術顧問として関わって頂いていた現サイカCTO是澤さんを交えて議論を重ねた結果、OLTAの開発組織に所属することにワクワクするような何か、を言語化して打ち出す必要があるという結論に至りました。
Tech Vision作成の道のり1: ボトムアップの失敗
改めて、OLTAの開発組織が直面していた課題を整理してみます。
(1) チームとしての一体感を持てていない
(2) OLTAの開発組織としての魅力がメンバーも分かっていない
(3) 中長期的な技術や組織のあり方が見えない
これらの問題に向き合うために、エンジニア全員にヒアリングをしてみると、ビルドが遅い、手動運用が多い、タスクの優先順位が不明確、チーム間で情報の分断がある、など様々な課題があることが分かりました。
そこで、これらの問題をカテゴリごとに整理して中長期的に解決するアプローチを実践してみたのですが、結果的にはうまくいきませんでした。その最大の理由は、現状の課題をボトムアップで積み上げるアプローチには前提となる理想の状態が欠如しており、開発組織全体の拠り所とするにはあまりに脆弱だったためです。
この課題を解決するには、OLTAの開発組織全員が信じ切れるミッション(=目指すべきもの)を最初に決める必要がありました。しかし、組織の責任者である私がそれ相応の時間をかけて作り上げようという覚悟が当時は足りていませんでした。
Tech Vision作成の道のり2: 理想の状態を考える
ミッションを決める必要性が分かり、これについては自分で考え抜いて作る必要があると決意したものの、どこから手をつけて良いか悩みました。そこで、手がかりを探すべく、著名なCTO/VPoEの対談記事や、開発広報に力を入れている企業のTech Blogなどを読み漁ってみましたが、ミッションの作り方そのものに触れているものは中々見つかりませんでした。
そこでアプローチを変えて、自分が理想だと思う開発組織の要素を端から並べてみることにしました。Spotify Engineering Culture / Google re:Work / DMM Tech Vision / mercan をはじめとして様々な情報をインプットするうちに、いくつかのキーワードに分類することができました。
自分の過去の経験を踏まえて、開発組織に重要だと自分の言葉で説明できるものに絞っていった結果、OLTA Engineering Styleとしても掲げている「自律性」「俊敏性」「透明性」の3つに決めました。
Tech Vision作成の道のり3: ミッションの魅力と排他性
理想の状態はある程度言語化できたものの、ミッションと呼べる言葉は中々浮かんできませんでした。そこで当初の課題に立ち戻ると、エンジニアがOLTAを魅力的に感じ、OLTAにいる理由を一言で表すものがミッションであるべき考えました。
OLTAは大量のデータを分析する基盤が整っているわけでもなければ、大規模トラフィックやトランザクションを捌き切る分散システムがあるわけでもありません。エンジニアを惹きつける要素はどこにあるのだろうかと悩みながら、改めて一緒に働いているエンジニアの顔を思い浮かべてみると、自然と次のような言葉が出てきました。
「OLTAの事業は社会的意義が大きく、これをより伸ばすプロダクトが作りたい」
「解決すべき事業課題が難しいので、きちんと事業そのものを理解をして開発に取り組みたい」
実際に、OLTAのエンジニアは事業を伸ばすために必要なことに対して、貪欲に取り組んでいました。事業の成長を第一に考え、技術を手段としてあらゆる物事にチャレンジする好奇心を持っている人たちが集まる組織、それがOLTAの開発組織の魅力であると定義することができました。
「テクノロジーと好奇心で、事業を成長させる」
これは同時に「事業の成長に興味がない人、自分の領域外のことに好奇心を持てない人」はOLTAの開発組織には合わないと言えます。ある種の排他性を含むことが、ミッションに魅力(=独自性)を持たせる重要な要素であることにも気づきました。
Tech Vision作成の道のり4: ストーリーを繋ぐ
ミッションが決まったところで、どのように説得力を持って経営陣やチームメンバーに説明するか、という問題に直面しました。
その時に、考え方の参考となったのがミッションを考える上でも参考にしていたストーリーとしての競争戦略です。静止画である「ミッション」と「理想状態」は揃ったものの、動画であるストーリーに昇華させるためには、ミッションと理想状態を結びつけるための構成要素が必要でした。
ここで意識したのは、理想状態と現実のギャップです。事業が伸びている状態で理想状態を達成し続けるためには組織の規模、技術力、プロセスなどあらゆる側面で今よりも成長している必要があることを再認識しました。
そこで、成長というキーワードを中心に添えて、ミッションと理想状態を繋ぐストーリーを構築しました。チャレンジを重ねることで成長のループが生まれて、結果的に個人・組織が成長して理想状態に近づくと考えました。
また、開発組織の理想状態は、同時にミッションを達成する上で必要な成長を阻害しないために、組織全体で大切にする価値観(OLTA Engineering Style)として再定義しました。
こうして、ミッションと理想状態を成長のループという構成要素でストーリーを繋ぎ、OLTA Tech Visionを作りあげることができました。
OLTA Tech Visionをつくった結果
実際にOLTA Tech Visionを作る過程において、メンバーと議論を重ねたことで、今まで漠然としていた開発組織の強みや魅力をお互いに再認識でき、OLTA Engineernig Styleによって組織の雰囲気も大きく改善し、組織としての日々の意思決定や各メンバーの納得感にも良い影響を与えています。
例えば「自律性」の実践例としては、エンジニア一人一人が事業成長に関わるOKRを持つようにしています。その結果、エンジニアが自らCS業務に入り込んで一緒にフローを根本から考え直すことで、生産性や保守性が大幅に向上しました。また、プロダクトにどのような機能が求められているかわからない時は、実際にユーザーインタビューに参加したり、他社製品のデモに参加することで自らニーズを探りにいく、といった動きも活発です。
また「透明性」の実践例としては、審査モデルの開発やオペレーションそのものをプロダクトの一部と捉えて、エンジニアが情報交換ができるようにしました。その結果、元々Web開発に興味があった機械学習エンジニアが、自分の作ったモデルをWebエンジニアのサポートを受けながらWebプロダクトに組み込んだり、モデル開発に興味のあるエンジニアが機械学習エンジニアの指導の元で実データを使った分析合宿を実施したりする、という取り組みが行われるようになりました。
最後に
OLTAにジョインして最初の半年はメンバーをマネジメントする立場でありながら、どこか距離がある状態でした。振り返ると、開発組織全体が目指す方向性や価値観が定まっていなかったことで、日々の活動に違和感を感じてもそれを正すことができない、そんな中途半端な状態が心理的な距離感の原因だったのだと思います。
完成したTech Visionだけを見れば、当たり前のことを言っているように見えるかもしれません。しかし、その制作過程においてメンバー全員で会社のミッションや経営者の想い、本気で作りたい組織像、メンバーひとりひとりの考えを丁寧に言語化して議論を重ねたことで、チーム全員が信じることができる大きな拠り所となりました。
私が好きな言葉の1つに「人に使ってもらえるソフトウェア」があります。どんなにすごい技術と多くの工数を使って作ったソフトウェアでも、使ってもらえなければユーザーに何の価値も生み出しません。OLTAではTech Visionの元、一緒にユーザーに価値を提供し、その結果事業を成長させるサービス作り続けるための仲間を募集しています。
・フロントエンドエンジニア
・バックエンドエンジニア
この投稿の内容に興味を持ち、事業内容やプロダクト含めてもっと知りたい、という人は是非一度お話しましょう。
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