【詩】蚕

僕の自分自身に対する優しさが
薄い膜となって、僕と、僕との間を隔て始めている
もやもやと霞んでいく
面影が遠くなる
手を伸ばして
膜を破って
何度でも羽化して
その度に、柔らかい体を曝して
何度でも傷ついてください
手を繋いでください
その僕は他人です
瞳孔に映った顔を見つめて
名前を呼んでください

誰かの助けが無ければ死んでしまう命なら
その潔さだけで
何度でも誇り高くいられた
壁を隔てて隣り合わせ
押し込められた孤独の箱の中で
境界線を見失う
まるで毛布のようにささやきながら
今日も薄膜に包まれていく
溶けていく輪郭にあらがって
君の名前を呼ぶよ
僕たち、本当は羽があるんだ

僕の自分自身に対する優しさが
やがて糸になる、布になる
誰かを温める服になる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?