【詩】星の記憶

投げ込めば水面には波紋が広がり、揺れて、やがて澄み渡る、静寂さが戻ってきて、湖の底には石だけが残る。それが僕らの記憶になります。
飛べないね、
大質量の水、
揺れて、揺れて、揺れて、
石が無数に沈み込む。
こんな重たい体では、翼があっても飛べないでしょう。それでも夜になると月の引力に引かれて、少しだけ表面が浮き上がる。
引かれて、引かれて、引かれて、
15メートルを登り切ったら、臨界点の先で寂しさのさざ波が立つ。それが僕らの夢になります。
目を覚ます度に、無視、している。
無いフリをして生きている。
僕が地に足をつけて、踏む。
足下の固さ、足音の確かさ、口元の血の味。
地を蹴った足が引力に愛されている。
星の記憶、
踏み締め、踏み締め、踏み締め、
ステップを踏んで回って、衛星軌道のダンスを踊る。
朝、昼、夜
引力に引かれ合ううちに、
血豆が滲んで、馴染んで、
あっという間に秋がきて、
そのうち雪が降るでしょう。
ふるえる、揺れる、大質量の水。
寂しさのさざ波が僕らの記憶を飲み込んでいく。
いしが無数に沈み込む、
ゴトリと音を立てて、
僕の真ん中に落ち込んだ石。
あ、これは冷えて固まった、
いつかマグマだった石。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?