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蚊に刺されたから

脳が処理を仕切れない量の音と光、そして、
人の気配が五感を必要以上に刺激をする一日が
終わりを告げた。

気温は35度くらいだったろうか。
動いている間はまだ良いが、
一度でも信号に足を止められるような事があると
汗が湧き水の様に噴き出して来て、
Tシャツの下の肌着が身体に貼り付く。
それを歩きながら指で摘んで剥がし、
鬱蒼とした場所へと向かった。

外国人観光客を相手にしているであろう
無人の宿泊施設の自動ドアに反射した自分の様は
まるで、耄碌そのものに見えた。

人気の多い光と音を際限なく放出する場所に居ると自分が如何に無粋な人間であったのか、
再確認させられた。
これが一日の始まりだったのだから、
長針と短針が重なるまでの時間はずっと
僕の中で不協和音が鳴り響く。

自分の原点を光の速さで見失ってしまい
現在は誰かに背中のネジを捻られて
他人の意のままに動かされ僕の心からは、
錆び付いた玩具の音と共に
不恰好な動きをしていた。

世間では当たり前の様な顔をしている
ちゃんちゃらおかしな当たり前に、
昔から素直に納得する事が容易ではない僕は、
一体どのくらいの言葉を
飲み込んできたのだろうか。
これまでに飲み込んできたモノを
全て吐き戻したとしたら
とても嫌な人間になってしまいそうだ。
それは、俯瞰的に見ても正しいモノを
飲み込んできたが、
勿論、僕が人間である以上は嫌ごとも
含まれているから。

吐瀉物として吐き出した時に
嫌ごとが1つだけだったとしても、
きっとその1つが100にも1000にも
見えてしまうに違いがない。

自分自身が一番そう見るに違いない。

体たらくな水槽に
綺麗な真水を流し込んでも、
死んだ魚は生き返りはしない様に
Epiphoneをどれだけ改造しても
Gibsonにはならない様に
何かをしたって自分は自分以外にはなれない。

ノストラダムスの大嘘付き。
明日の来ない今日は致死量の煙草を吸って
大笑いをしながら憎まれっ子を殴り続けよう。

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